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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第2章 機械人形と別れ

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EPISODE34 邪龍(後編)

「ステルス機はあと何機……!?」


 ナナが死角から襲い掛かるPステルスを撃ち落とし、眼前に迫ってきたゾンビ機体が振るう高周波ナイフを躱す。だが、壁際に追い込まれ、後に引けない状況に陥ってしまう。


「後ろを考えなくていい分、むしろ好都合……とでも考えましょう」


「命無き者よ、余興にしては楽しませてもらったぞ。だが、少々長すぎた。我がしもべたちよ、終劇の時は来た!」


「くっ……迎撃しきれない!」


 両腕のGガトリングで弾をばらまいても、即時再生し、その歩みを止めることは無い。しかも、Pステルスがその隙を虎視眈々と狙っている始末。もはやこれまでかと考えがよぎったとき――


「ナナ、リミッター解除!」


「!? G.E.E.S起動!」


 リミッター解除によって連射性能がさらに上がったガトリングは再生能力を上回る勢いで、ゾンビ機体たちの手足を削っていく。


「足止めしているうちにエナジーウィングで!」


 エーテルを吸収する羽がPステルスに伸びていき、その動きを封じ込める。けいれんを起こしているPステルスはかつての僚機であったゾンビ機体に踏みつぶされていく。余力を取り戻したナナがゾンビの真上を飛翔し、アイリスと合流する。


「ナナ、大丈夫?」


「マスターアイリス、なぜここに?」


「第一王女の願いとなれば無下に断るわけにもいかんであろう」


「マスターアイリスから……?」


「そうよ。落ちこぼれな私でも、ナナのそばに居るくらいはできる。だから――」


「ええ、一緒に戦いましょう」


 魔王がこちらに寄って来るゾンビ機体を一瞥し、魔法詠唱を始める。


「まずは雑魚を片付けるとしよう。れん獄の炎に焼かれよ!ヘルフレイム!!」


 ゾンビ機体の足元に巨大な魔法陣が広がり、炎の柱がそびえたつ。轟々と燃え盛る炎は、再生能力をはるかに上回る勢いで、ゾンビ機体を溶かしていく。炎が収まると、そこにはゾンビ機体が居たのかさえ、分からない焼けた大地が残っていた。


「愉快、愉快。この世を我が支配する命無き者の国にする一仕事の前に、まだ余興を続けようと言うのか。演者一人では飽きていたが、増えるのであれば、それはそれで楽しめるというもの」


「邪龍よ、代々受け継がれし魔王の名の下に、再度眠りについてもらう」


「討伐すると大口を叩いた魔族の末裔か。その者よりも遥かに弱い魔族がその名を騙るのは片腹痛いわ!!」


 ディアボロスの咆哮と共に、地面から人の死体がにょきにょきと生えて、地面に転がっている高周波ナイフを手に取り始める。


「同じことを!ヘルフレイム!」


 地獄の業火に包まれた死体が跡形もなく灰になるや否や、もう一度同じ数だけの死体が目の前に復活する。


「む!? これではキリがない」


「あのときの魔王も同じ反応したわ。そして、同じことを言わせてもらう。我が操りし死霊はこの星に住む者以上にあるぞ」


「ならば、貴方を倒せばいいだけのこと。エーテルキャノン!!」


 周囲をプラズマ化させながら進むビームがディアボロスに到達する寸前、死霊の盾に阻まれてしまう。


「無駄無駄無駄無駄!!この世に生者と死霊が存在する限り、我は無敵よ!」


「ならば、盾の内側……懐に飛び込むまで!」


 羽を広げ、ナナは飛翔していく。広大なスペースがあるとはいえ、所詮は地下の閉鎖空間。数十メートルの巨体を持つディアボロスが自由に動けないのに対し、小回りの利くナナはディアボロスの死角に入ろうする。

 その死角をカバーするかのようにゾンビが手に持ったPステルスの銃で応戦していく。


「その程度の火力でひるみませんよ!Gブレード・リミットブレイク!!」


 右手から伸ばした巨大な光の剣がディアボロスを両断しようとしたとき、寸でのところで死霊の盾が現れ、防いでくる。


「ツイン!!」


 空いている左手からも巨大な光の剣が放たれ、ディアボロスの首を切り落とす。ディアボロスの目から光が消えうせ、死んだことを告げる。


「やったわ!」


「いや、まだだ!」


「えっ?」


 切り落とされた頭部が宙に浮かびあがり、死霊を吸収しながら胴体にくっつく。


「愉快、愉快。あの時と同じく死んでしまうとはな」


「ならば、もう一度!Gブレード・リミットブレイク!」


 今度はディアボロスを頭部すら巻き込み、縦に両断するナナ。今度は死霊の盾を出さなかったが、あざ笑う声は消えず、死霊を吸収して再度復活する。


「言ったであろう。この世に死霊がいる限り、我は無敵だと!!」


「陛下、封印することは?」


「同じ魔法が通用するのであればな。しかし、あれだけの余裕、すでに何らかの策は講じていると見た」


「でしょうね!」


「何度切っても無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」


「死霊が無くなったら、再生しないんだろうけど……」


「だが不可能だ。それはすなわち、この星の歴史そのものと戦う様なもの」


「命ある限り復活する……それなら!」


 ディアボロスを切って再生している最中に、アイリスたちのもとにつく。


「陛下、ディアボロスと私たちを転移魔法で神殿の外に出すことは可能ですか?」


「可能ではあるが……何か策あるのか」


「マスターアイリス、Gブラスターの使用許可を」


「えっ、でも、あれは……」


 アイリスの脳裏に浮かぶのはアルカンシェルさえ防ぎ切った亀をガラス細工のように粉砕した1撃。そして、その正体がかつて世界を滅ぼしかけたD4兵器であることも知っている。

 頭の中ではこの状況を打破するのにそれしかないとわかっていたとしても、どうしても使用許可を出すのにためらいが生じる。


「マスターアイリス、私を信じてください」


「――わかったわ。ナナを信じる」


「話はまとまったようだな。イチかバチか、最後の賭けといこう」


「ほう。あのときの魔王は討伐を諦めたが、お主らはまだ諦めんか。愉快、愉快」


「転移後、瞬きするような一瞬だけでも動きを封じてください」


「承知した」


 ケラケラと笑うディアボロスを前に、魔王がこの場にいる3人とディアボロスを神殿の外へと転移させる。

 外はステルス機の脅威がなくなったことで、Pアサルトの掃討戦へと移行していた。そんなときに、急に現れた魔王と邪龍に魔族たちの視線が集まり、その隙を突いて、Pアサルトが撤退行動をとり始める。


「地獄の門番より放たれし魔の鎖よ、我が眼前の罪人を捕縛せよ、ケルベロス・チェーン!!」


「それで我を封じ込めるつもりか、ぬるいわ!!」


 ディアボロスより放たれた闇の波動により、黒い鎖がピシピシと音を立てていく。一瞬にも満たない刹那の時間稼ぎ、それだけの時間があれば、今のナナには十分であった。


「重力アンカー、固定完了。ターゲット、邪龍ディアボロス!Gブラスター、発射!!」


「ぬう。なんだ、あの光は……何かが不味い。死霊どもよ、我が盾となれ!!」


 Gブラスターが死霊の盾をあっさりと貫通し、ディアボロスの腹部へと直撃する。


「な、なに!? 死霊による再生が行われない……!?」


「D4兵器は対象を異次元へと送り込み、破壊する兵器。すなわち、切断面はこの次元と隔離されています。いかに再生能力が高くても、存在しないものを再生することは不可能」


「かくなる上は!」


 ディアボロスが自ら首をはねて、ひびの入っていく身体を捨てて飛び去ろうとしていく。


「無駄です。魔法もそうですが、転移は一瞬で行われるもの。貴方は再生能力が高いせいで、全身の破壊が遅いようですが、すでにD4は貴方の身体を蝕んでいる」


 ナナの宣言通り、ディアボロスの頭部がガラス細工が割れるかのようなひびが入っていく。砕け散るまで、もはや時間の問題であろう。


「ば、馬鹿な!このディアボロスが!!命無き者に敗れるなど!!」


「邪龍ディアボロス、次元のはざまへ還りなさい」


「おのれええええええええ!!」


 パラパラと散っていくディアボロス、そして、辺りには帝国のマシンドールはどこにも見当たらない。封印の地での戦いは魔王軍の完全勝利で幕を下ろすのであった。





 そんな彼女たちの戦いを遠くから眺める者たちがいた。


「ボルドー艦長。ディアボロスが……」


「わかっている。D4ミサイルの発射は中止だ」


 年配の艦長の指示にD4ミサイルの準備は中断され、帝国のステルス艦は後退を始める。


「しかし、あの光はいったい……」


「さてな。だが、本国の連中が用意したこのD4ミサイルとやらを使わなくてホッとしておるよ。これは儂の勘だが、撃てば取り返しのつかないことになるかもしれん」


「対三龍用の装備が? そんなことありませんよ。考えすぎです。三龍と亜人どもにとられた土地を早く取り返しましょうよ」


「儂は貴殿や本国の連中みたいに人類至上主義ではないからな」


「問題発言ですよ。聞かなかったことにしますけど」


「そう言ってくれると助かる、モンペラ君」


「長い付き合いですからね。おっと艦長、本国から飛行艦(エアーシップ)が出港したようですよ」


(地上艦の次は飛行艦か。やれやれ、老いぼれがついていけない速度で技術が発達しておる。それとも、元からその技術があったのか……)


 今は職務を全うすべきだと、頭に浮かんだ疑念を振り払い、副長からの報告を聞くのであった。

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