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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第2章 機械人形と別れ

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EPISODE33 邪龍(中編)

「日差しが入らない朝って、なんだか変な感じ」


 目が覚めたアイリスは大きく背を伸ばす。太陽が無い魔界では一日を通して暗く、じめっとした気候だ。カーミラが魔界を出たのも分かるような気もすると思いながら、身支度を済ます。


「ねえ、ナナ? 外、騒がしくない?」


「そうですね、また帝国のマシンドールが攻めてきたのかもしれません」


「昨日の今日で攻めてくるの……?」


「資源さえあれば、使い捨て出来る兵ですから」


「それでも無尽蔵っていかないはずだけど。とりあえず、陛下に今の状況を聞いてみましょう」


 ナナとアイリスが廊下に出ると、ドタバタと慌ただしく魔族が行きかっている。廊下の窓からは兵士が民間人を誘導している姿さえ見える。昨日はここまでの騒ぎになっていないことから、大部隊でも来たのかと不安に駆られながら、魔王の執務室へと向かう。


「貴殿らか。済まんが、国外への転移はもう少し待ってくれ……予備兵力はゲート前に集結。いつでも出撃できるようにしろ」


「それは構いませんが、何があったのですか」


「ああ。昨日と同じく大部隊が侵攻してきたが、どうやら不可視の攻撃を仕掛けてくる敵がいるらしい。おかげでこちらは混乱し、押され始めている」


「ナナ、何か知っている?」


「潜入偵察用装備、ステルスアーマーが該当します。特殊なステルス装甲による光学迷彩とハイパージャマーとの組み合わせにより、索敵に引っかからず、視認すら困難になります」


「厄介にもほどがあるな」


「過剰なまでのステルス性に特化したせいで武装が貧弱ですが。特性を知る私なら対処が可能です。出撃の許可を」


「よかろう。戦場まで転移させる」


「ナナ、リミッターの解除は?」


「今回は空中戦ではないので、その必要性はありません」


「わかった。気を付けてね」


「ええ。ナナ、出撃します」


 昨日と同じく転移の魔法陣がナナの足元に広がり、彼女を戦場へと送り出していく。



 転移先でナナは、混戦となっている戦場にたどり着く。空中から多数の砲撃をしてくるPアサルトの姿は昨日と同じだが、今日は地に伏している魔族の姿も多くみられる。そのほとんどが背中から刃物で切られたり、撃たれた傷跡がある。


「これだけの数が居れば音源での識別は不可能。ならば、熱源センサーとの併用で!」


 ナナが光学カメラの映像に熱源センサーの映像を合成させる。すると、光学センサーには何もない空間に人型の熱源がはっきりと映し出される。かつてのステルスアーマーとの画像をさらに合成し、銃を持つPステルスの姿がナナに映し出される。


「見えた!Gライフル!」


 Pアサルトに向けて魔法を放とうとした魔族の背後を狙うPステルスを撃破する。しかし、1機撃破したところで、ナナが視認できる範囲だけでも数えきれないステルス機がこの戦場を駆け巡っている。Gブレードに切り替え、振り向きざまに高周波ナイフを掲げたPステルスを斬りはらう。


「誰がその武装の試験運用をしたと思っているのです。不意を突けない不意打ちはただの下策!」


 余裕綽々といった様子で、戦場に隠れ潜むPステルス機を閃光が走り抜けるかのような速度で落としていく。それに負けじとPステルスが高周波ナイフでナナのGブレードを受け止める。


「不意を打つことを前提にしたことで耐久力が低い!」


 ポッキンと折れたナイフの刃が宙に舞い、攻撃を遮るものはなく、ナナの斬撃をあるがままに受け止めることになったPステルスは地に伏す。


「空を飛べない以上、見えない敵は必ず地上にいます。地上にいる魔族の人たちは空に!飛べない人は後方からの支援を」


「うるせえ、ゴーレム風情が俺たちに指図するな」


「俺たちの勝手にやらせてもらう。てめえに従っているわけじゃねぇからな!」


 口ごたえしながらも、自分たちが苦戦していたPステルスを撃ち落としていくナナの姿をみていることもあり、指示に従っていく。


「地上に味方が居ないなら、一気に薙ぎ払う!エーテルキャノン!!」


 エーテルキャノンの極太ビームに飲み込まれていくPステルスが爆裂の花を咲かせていく。粗方の敵を倒し、空中にいる敵の処理を支援しようかと思っていた時、ナナの視界にPステルスが神殿の中へと入っていく様子が見える。


「しまった。そちらが本命……大量のPアサルトもステルスも囮と足止めか!」


 神殿に侵入した敵を追い、ナナは単独で封印の地の神殿へと乗り込むのであった。



 神殿の内部にあった地下への階段を下っていくと鍾乳洞のような洞窟が広がっていた。枝分かれしている無数の通路はもはや天然の迷路となっている。


「エーテルの残留反応を確認。迷わず進んでいることから、過去に偵察機が居たのでしょうか。そして、今回の侵攻、封印の地、アイスヘルに封印されたものと言えば……急いだほうが良いですね」


 エーテルの反応を追い、走っていく。いつ敵と出くわしても問題ないように、ナナの腕はGブレードに変形している。そして、数機のPステルスの奇襲に会いながらも、たどり着いた最深部。

 そこには、鎖にがんじがらめに巻き付けられた黒い龍と、その鎖を切断しようとしている多数のPステルス。既に何本かの鎖は断ち切られ、残りわずかな鎖が黒い龍の動きを封じ込めているが、ぴしぴしと音を立てている。


「鎖に衝撃を与えるわけにはいかない。叩き切るのみ!」


 Pステルスを斬りはらっていく。いくつかのPステルスが作業を中断し、銃口をナナに向けて、足止めしようと攻撃を放っていく。その銃弾を躱しながら、Pステルスを斬っても数が一向に減らない。焦りを感じるナナの耳に鎖が切れる音が聞こえる。


「WOOOOOOOOO!!」


 空気の震えを感じるほどの大音量の竜の雄たけび。まだかろうじてつなぎ留められていた鎖も切れ、邪龍ディアボロスの封印は完全に解かれてしまう。巻き付いている鎖を鞭のようにしならせ、周りにいたPステルスを蹂躙していく。


「無茶苦茶にもほどがある」


「長き眠りから目が覚めたと思ったら、命無き者がこんなにも我が物顔で歩くとはな」


「この声は……まさかあのドラゴンから!?」


「命無き者が生と死を司る我に歯向かうつもりか……?」


「ディアボロスの封印が解かれたなら、やるしかありません」


「体が温まるまでの余興。少し楽しませてもらおうぞ。命無き者に生を与え、命ある者に死を与える。反転せよ!リターン・オブ・デスティニー!!」


 ディアボロスから放たれた黒い波動が広がっていき、壊れたはずのPステルスが身体中に黒い水晶を生やしながら、再生していく。


「ナノマシンによる自己修復機能の強化ではなさそうですが……」


 Gガトリングで弾をばらまき、復活したPステルスを破壊していく。だが、破壊した箇所から黒い水晶が生え、再びゆっくりとPステルスが近づいてくる。


「まるでゾンビのような再生能力……それに!」


 死角外から狙ってきたPステルスを撃ち落としていく。ディアボロスが目覚めた際の暴行に、何機かのPステルスは難を逃れたらしく、生き残りがナナを敵として認識しているようだ。


「ステルス装備機体の奇襲への対応!やることが山のようにありますね!!」


 できれば放り投げたいと思うほどだが、そういうわけにはいかないナナはどこから手を付けるかと考えながら、彼らの攻撃をかわしつつ、反撃の機会をうかがっていく。




 そんなナナの様子を魔王たちはモニターで確認していた。ディアボロス自身は積極的に攻撃に参加していないにも関わらず、あまりにも防戦一方になっているナナを見て、アイリスは居ても立っても居られなかった。


「陛下、私も封印の地に送ってください」


「ならん。力無き者を連れても足手まといになるだけだ」


「私がいれば、ナナはリミッターを解除ができます。だから!」


「ならん。一人の頑張りでどうこうできるような相手ではない」


「ですが!」


「ならん!汝の国の事情はよく知らんが、貴様も国を背負う一国の王女。力も無く、身を護るすべもなく、命を奪い合う戦場に赴き、命を落とせば、残された民はどうなる!」


「でも、あそこには――」


「ただのゴーレムだ。その命に価値は無い」


 アイリスは知っている。ナナが冷静を保っているふりをして、熱い感情を持っていることを。


「いいえ、違う。間違っています!」


「何がだ?」


「あそこにいるのはナナ、私の国に住む『人』です」


「たった一人に己の命をかけるとでも言うのか?」


 アイリスは知っている。たった一人の吸血鬼を逃すために心血を注いだ王の名を。だから迷うことは無い。自信を持って言える。


「国民1人、救えなくて何が王ですか!王女ですか!そんなものはいらない!」


「ならば、問おう!汝が目指す王とは、国とは何か!答えよ!!」


 アイリスは知っている。城下町で声をかけてくれる市井の人たちの姿を。油断をすれば王女だろうが、ぼったくろうとする商人たちの姿も。そして、それらを維持するのにどれだけ大変だったかその一端だけでも身をもって知っている。


「みんなが笑って暮らせる、何気ない日常が続く国。その日常を脅かすなら、私は…………戦う。一人だと何もできない落ちこぼれだけど、ナナがいる。騎士団の人たちだっている。ううん、それだけじゃない。空島にいるブリュンヒルデさんやハーピィさんたちも協力してくれるかもしれない。私は、みんなと協力する『落ちこぼれの王』になるわ」


「落ちこぼれの王……民と協力しあわねば何もできぬ王か。面白い。平凡な王よりかは気に入った。ならば、ついてこい。落ちこぼれの王を目指す者、アイリス第一王女よ」


 2人の足元に魔法陣が描かれ、ナナが懸命に戦っている神殿の最奥部へと転移するのであった。

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