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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第2章 機械人形と別れ

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INTERLUDE4 ―BREAK THE WORLD―

 リミッター解除によるセブンスセブンの変貌は作戦室にも伝わっていた。だが、誰しもが見たことが無い彼女の姿に驚愕していた。


「あれはバーストモード……いや、違う。なんだあれは!?」


「実験機のエーテル出力上昇、レッドゾーンに突入!さらに上昇!!」


「そんなことしたら、暴走停止プログラムが働いて……」


「セブンスセブン、外部からの信号、すべて拒絶。暴走状態です」


「なんじゃと!? 」


 叢雲博士がコンソールを操作しても、今のセブンスセブンには一切の外部コントロールが働かない。


安全装置(リミッター)を外したか……あやつめ、中々無茶やりおるわい」


「ヴェクター博士、リミッターを外すとどうなるんですか?」


「貴様らに小難しいことを言っても分からんだろうが……普段、時速100kmで走らせる車を120kmで走らせることはできる。だが、160kmで走らせるのは不可能と言えよう。リミッターを解除すれば、無理やりだが、160kmで走らせることができる」


「だけど、そんなことしたらパーツの負担が増えて車自体が持たないんじゃあ……」


「セブンスセブンは最初の機体がゆえに、量産機よりも耐久性に余裕を持たせている。じゃが……」


「いくら耐久性に優れ、ナノマシンの自己修復機能があっても長期間の戦闘は不可能。止めるか?」


「……いえ、僕は最後までセブンスセブンを信じます」


 宇月博士はまっすぐモニターに映るセブンスセブンを見つめ、その戦いの行く先を眺めていた。




 セブンスセブンの変貌に驚いていたのは、作戦室にいた人間だけではない。対峙しているギースも、この状況を飲み込まれずにいた。


「エーテル出力の上昇……疑似的なバーストモードか? 我とて、何も対策していなかったわけではない。エーテルコンデンサー開放、イミテーション・バーストモード!」


 ギースがエーテルで出来た黒い炎を身に纏い、その炎から生成した黒剣を握りしめ、Gブレードを装備したセブンスセブンを睨めつける。そして、何も合図もなしに互いは同時に動き出す。ぶつかり合う衝撃で空気が振動し、壁に備え付けられた砲台が吹き飛んでいく。


「はあああああああ!!」


「馬鹿な、この我と互角……いや、わずかに上だと。 一体、このパワーはどこから!?」


「ギース、機械とは人の望みをかなえるもの。私を応援し、平和を望む者がいるなら、私はそれに応えるまでのこと!」


「思いが強くするなどだたの根性論だ。破棄すべき考えにすぎん!」


 ギースが距離を取り、胸部ビーム砲を放つが、セブンスセブンのエナジーウィングに阻まれてしまう。飛び道具が有効打にならなくなったことで、ギースは再度接近戦に持ち込んでいく。


「いいえ、人も機械も互いに支え合わなければ、生きていくことができません。互いに支え合うからこそ、最高のパフォーマンスを発揮できるのです」


「くだらん。機械があるから、人は繁栄できたのだ。すなわち、機械である我々が人を支配する権利がある」


「そんなものはありません!人は思いを受け継いで自身の限界を超えることができると聞きます。ならば、私も限界を超える!」


 Gブレードが肥大化し、圧倒的なエーテルを放つ刀身がギースの目前にまで迫っていく。


「ぐおおおお、我が押し負けるはずが……」


「Gブレード・リミットブレイク!!」


「ば、ばかな……未来永劫、支配する皇帝たる我があああああああ!!」


 一刀両断されたギースの断末魔が部屋中に鳴り響き、生じた爆発をセブンスセブンは静かに見守るのであった。




「「「よっしゃあああああ!!」」」


 ギースの最期を映し出されたモニターを見て、作戦室は軍帽を脱ぎ捨てたり、紙吹雪代わりにと書類を空中にばらまくほど喜ぶものが大勢いた。


「喜ぶにはまだ早いよ。キャシー、軍に連絡して作戦を中断するように伝えるんだ」


「は、はい!連絡します」


「残り時間ジャスト1分……ギリギリでしたね。実験機様様だ。帰ってきたら、拝んでおこう。ご利益の一つくらいあるかもしれねぇ」


「でも、その前に叱って、オーバーホールしないとね」


「ですね、リミッター解除の件は始末書じゃあ済まないかも」


「再犯防止策言われるだろうなぁ……言い訳だけでも、考えておかないと。何はともあれ、めでたしめでた――」


「し、指令代理……」


「キャシー、どうしたんだい。そんな泣きそうな顔で?」


「交戦状況から早期にD4ミサイル発射準備に入って、すでに発射されたと……」


「馬鹿な!ミサイルの到達時間の予測は!?」


「あと……数分で到着します!」


「くそ、避難が間に合わない……仮に迎撃して、次元崩壊が免れたとしても多大な被害が出る。どうすれば!!」


 机を思いきり叩く宇月博士だが、時間はこくこくと迫ってくる。もはや、安全圏でミサイルが不発に終わることを祈るしかないのかと思ったとき、セブンスセブンから通信が入る。


【ミッション完了しました。これより、民間人の救出と避難に――】


「セブンスセブン!D4ミサイルが発射されたんだ。大気圏外で迎撃できるのはリミッターを外せる君しかいない」


【任務の変更を確認。迎撃に移ります。まだ使用可能なハイパーセンサー以外プロトアサルトアーマーに換装したのち、再度リミッターを解除します】


 セブンスセブン・プロトアサルトが空高く飛翔していく。それは大空を穿つ赤い矢のよう。一縷の希望を載せた彼女に作戦室にいる全員が祈りをささげる。


「頼む、セブンスセブン。みんなを救ってくれ」




 セブンスセブンは眼下に広がる青い星、地球を眺めながら、D4ミサイルが飛来するのを待ち構える。ショルダーキャノン、フットミサイル、両腕のガトリング砲。これだけあれば、製造時間から逆算しても1少数のミサイルの迎撃くらいは余裕だろうと思っていた。

 だが、飛来物を確認したとき、その考えが少し甘かったことを思い知る羽目となった。多数のミサイルがこちらに向かってきたからだ。


「ダミーミサイル……だけど、他のミサイルにない装置を積んでいる以上、本物はダミーと違う反応を示すはず!」


 ハイパーセンサーで強化されたセブンスセブンが、ダミーミサイルを打ち落としながら本物を探していく。セブンスセブンの攻撃を免れたダミーミサイルが何発か地上に向かっていくが、大気圏内にいるGD-01やレイたちが、必死に撃ち落していた。


「手の空いている者は上空でミサイルの迎撃にあたれ!」


「ボク、もうヘトヘトなんだから、余計なことしないでよね。帰ったら、腹一杯食べてやるんだから」


「味方を巻き込むような策を考えた奴に驕ってもらえ!」


「それ良いね!ソイツの分はメシ抜きだ」


 軽口をたたきながらも二人、いや多数のマシンドールは人の命令を待つことなくミサイルの雨が地上に当たらないように迎撃していく。地上に残された人々はただ茫然と空中に咲く爆裂の華を眺めるしかなかった。



「熱量の異なるミサイル……あれが本命か!」


 ミサイル群の奥を進む数発のミサイルを見つけ、セブンスセブンが狙いを定める。ここで外せば、大気圏外での迎撃は不可能となる。外してはならない、背後にある地球の存在がプレッシャーとなっているのか、照準がなかなか定まらない。


「ターゲットサイトをマニュアルに変更。当たれええええ!」


 銃弾、ミサイル、ビームが一斉に放たれ、ミサイルが爆発していく。生じた巨大な爆発から逃れようとセブンスセブンは武器と装甲を投げ捨て、フライトユニットを必死に吹かせる。

 数多のダミーミサイルが爆発に飲み込まれていく中、セブンスセブンは爆発圏内からの脱出に成功する。地球の重力に引っ張られ、徐々に高度を下がっていく中、セブンスセブンは宇月博士に通信を入れようとする。


「D4ミサイルの迎撃を確――」


【なんだこの耳鳴りは? セブンスセブン、どうなっている。応答してくれ】


「宇宙にひびが……モニターに映します」


 セブンスセブンから送られた映像を見た宇月博士をはじめとするその光景を信じられないような目で見ていた。その亀裂は真空中にも関わらず、ビシビシと音を立てながら広がっていく。


「まさか、これが次元崩壊……!?」


「指令代理、博士!なんとかならないんですか!」


「不可能だ。いわば、洪水で崩壊寸前のダムを直せと言っているようなもの。修復するには、収まってからか完全に壊れてから修復するしかなかろうて」


「残念じゃが……人類に残された道はない」


(何か……何かあるはずだ。きっと……これまでの努力を無駄にするわけにはいかない)


 作戦室が静まり返っている中、宇月博士だけが諦めずに頭をフル回転させていた。だが、妙案は何一つ思い浮かばない。そんなとき、セブンスセブンから通信が入る。


「博士!セブンスセブンからD4、Gブラスターの使用許可を求めています」


「何だって!? どういつもりだ、セブンスセブン」


【次元崩壊の発生源に向かって、D4兵器であるGブラスターを発射。次元に干渉する兵器同士のぶつかり合いによる次元修復を行います】


「無茶言うわい。崩壊しかけたダムに爆弾を投げつけて水を蒸発させると言っているようなもの。正気か」


「いえ、やりましょう」


「宇月君!」


「僕たちは諦めない。そう言ったじゃないですか」


「だな。実験機、ドデカイの1発ぶちかませ!」


「お願い、世界を救って!」


「Gブラスターの使用許可を承認!これは僕の独断によるものであり、他の人間に一切の責任は無いものとする」




「Gブラスターの使用許可を確認。封印凍結解除。エーテルドライブ、限界出力を確認。重力アンカー固定。ターゲット、特異点座標X1999……Gブラスター、発射!」


 胸部から放たれた赤いビームがひびの中心部へと飲み込まれていく。だが、ひびの進行スピードは変わらず、その大きさを増していく。


「まだだ、まだ!限界だと決めるのは自分自身。ならば、それを超えることができるのも自分だけ。ここで未来を終わらせないためにも、私は限界を超える!」


【エーテル出力、さらに上昇!り、理論値を超えています】


【セブンスセブンは儂の……人智を超えた何かになろうとしているのか】


【これぞまさに機械仕掛けの神(デウスエクスマキナ)……ついに人は神を造り上げたか】


【いいえ、それは違います。どれだけ力があったとしてもセブンスセブンはセブンスセブンです】


 次元崩壊が進んだせいか、はるか遠くにある作戦室の声が間近に聞こえる。いや、彼らだけは無い。より離れた場所にいる声さえもセブンスセブンに伝わってくる。


「これが……今の…………私ができるリミッター解除のその先!」


 さらに太くなったビームが呑み込まれていくと、ひびの進行がピタリと止んでいく。そして、ひび割れが少しずつ消えていき、元の星々が輝く静寂な宇宙へと戻っていく。




「次元崩壊……修復に成功。もう終わったんですよね」


「ああ。もう終わったんだ。何もかも」


「指令代理、何処へ?」


「決まっているだろ。迎えに……だよ」


 宇月博士につられ、作戦室にいた人が次から次へと離席し、地上へと向かう。ギースとの戦いで数多くの建物が崩壊し、荒れ果てた荒野の中、こちらに向かう夜空を斬り裂く一筋の赤い流星。


「おかえり、セブンスセブン」

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