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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第2章 機械人形と別れ

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INTERLUDE3 ―LIMIT BREAK―

「敵性勢力の撤退を確認。これより帰投します」


 ナナは半数の勢力を失い、撤退するPアサルトたちを見送る。手柄や名声が欲しいのか、それとも叩けるときに叩きたいのか、あるいはその両方か、深追いしようとする者もいたが、魔王からの命令によりその行為は中断となった。

 こちらも決して無傷でないと言うのに、周りの魔族たちはどこに飲みに行くなどと仕事帰りのサラリーマンのような会話をしている。戦いが日常に組み込まれた生活とはこういうものかとナナが思っていると、近くの魔族が話しかけてくる。


「そういえば、ゴーレムの姉ちゃん」


「? 私のことですか?」


「メス型のゴーレムはアンタしかいねえだろう」


「それも……そうですね」


 辺りの戦闘用のゴーレムを見ても、武骨な外観をしており、人間や魔族に見間違えることはまずない。


「アンタ、ずいぶんと戦い慣れているようじゃねぇか。ちっと、俺っちとお手合わせしてほしいぜ」


「ずりぃぞ、先にオレとだ」


「いいや、オイラだね」


「俺が先に言ったから俺からだ」


「私の意思は無視ですか……それにしても戦ったばかりというのに血気盛んですね」


「つえー奴と戦いって思うのは当たり前だろう」


「「うんうん」」


「そういうものなのですか?」


 ナナは周りにいた他の魔族にも尋ねると、めんどくさそうな顔をしつつも口を開く。


「俺の場合は戦いの後の一杯が好きだから、戦うって感じだな。戦いが好きなのは否定しねえけど」


「大体の魔族はそんな感じじゃないか。酒、金、女……理由はあれど、結局は戦うためのこじつけさ」


「そういう考え方もあるのですね……」


「あんたは戦いたくないのかい?」


「そうですね、私は……私は…………」


 ナナは果たして自分が戦いたいのかと自信に問い尋ねる。だが、答えはわかっているはずなのにその答えを言い出せずにいた。


(私は……戦いたくないと思っているのでしょうか?)





「ナナ、おかえり。大丈夫だった?」


「数が数だけに無傷とはいきませんが、休めば回復できる範囲内のダメージです」


「よかった」


 魔王城に戻ってきたナナが心配そうにしていたアイリスの頭をなでると、子ども扱いはやめてほしいと思う反面、安心しているような表情を浮かべる。


「もう、ナナったら……」


「昔のことを思い出したせいか、少しやりたくなりました」


「昔っていうと、封印される前の?」


「ええ……ちょうど、マスターアイリスと同じくらいの子が居たので」


「では、思いだしついでに語ってもらおうか。あのマシンゴーレムについて」


 魔王が数名の部下を引き連れて、ナナたちの下にやってくる。彼がきたことで、場の雰囲気は一転して張り詰めたものとなる。


「……そうですね。語るべき時期が来たのかもしれません。いいでしょう、私たちの最後の戦いについて語りましょう」






 ギースとの最終決戦が始まり、それなりの時間がすでに経過していた。海の向こうからの勝利連絡は一向に来ず、巨大な画面では敵・味方を示す光点が次から次へと消えていく。


「ドクター、戦況は?」


「う~ん、GD-01が前線をかき乱してくれているけど、やはり最終防衛ラインなだけにあって崩れないね。セントラルタワーに侵入した機体はまだ0」


「やはり、私も向こうに行くべきだったのでは?」


「それは何度も言っただろ。D4搭載機を送るわけにはいかない。万が一、撃墜された衝撃で作動でもしたら、次元崩壊を招く恐れがある。軍も君一人でで戦況を覆せるとは思っていないから、ここでの待機が許されたんだ」


「そういうことだ、実験機。あっ、指令代理だけでなく俺にもお茶、頼むわ。眠気覚まし代わりにはなるからな」


「了解しました」


 セブンスセブンは宇月博士とチャラそうな金髪の軍服の男性にお茶を配る。軍服の男性がひと口つけたが、あまりにも渋すぎてむせそうになる始末だ。


「アレックス、僕はただの科学者。指令代理なんて、軍曹たちに押し付けられたものなんだから、その呼び方はよしてくれよ」


「何を言っているんですか、衛星砲の破壊ミッション。あれを指揮したのは指令代理でしょう」


「あれは軍が面倒事だから放り投げたせい。あと、彼女たちの活躍もあったからね」


「ああ、あの2人ね。元気にしていますかねぇ」


「きっと元気にしているさ。僕らはこの戦いを終わらして、復興作業に入らないと。戦況の方はどうなっている、キャシー?」


「GD-01に戦力を割いてくれているおかげで、やや有利といったところですかね。民間人の救出も時間を掛ければ――えっ、これは?」


「何かあったのかい!?」


「……軍本部より入電。戦局が膠着している機会を逃すわけにはいかない。D4ミサイルを使用するとのことです。作戦開始まであと――」


「馬鹿な!あれの危険性は報告したはずだ!!民間人が巻き込まれる程度じゃすまないぞ!」


 騒ぎ立てる作戦室に叢雲博士とヴェクター博士が入ってくる。彼らもこのことを知っているのか、危機感を覚えた顔をしている。


「最悪の事態が起こってしまったようじゃな」


「ほら、言わんこっちゃない。軍の連中は核よりも強い武器程度にしか思っておらん」


「先生!先生なら、軍を説得でき――」


「もう聞く耳を持たんかったわい。こうなれば解決策は一つしかない」


「D4ミサイルを発射するまでに、相手の本拠地を制圧する。これしかあるまい」


「ですが、こっちに残っている戦力なんて――」


「私が居ます。アサルトアーマーはありませんが、旧式のプロトアサルトアーマーがあったはずです」


「無茶だ。そんな装備で!」


 許可できないと宇月博士が怒鳴る。いかに戦場へ行かせる方法がそれしかなくても、勝ち目がない状態ではただ無駄死にするだけだ。手詰まりだと感じた時、二人の博士が「こんなこともあろうかと」と口を開く。


宙域戦闘用装備(スターアーマー)|を大気圏内でも使用できるように改良しておいた。これならば、アサルトアーマーよりも早くたどり着けるはずだ」


「それだけではないぞ。余った機材を用いてアサルトアーマー並みの火力、ステルス性能の向上、センサー系の強化……言うだけの時間も惜しいが、あらゆる武装を施しておいた。その名もフルウェポン・アームズ!」


「データを転送しておく……作った儂が言うのもアレじゃが、本来、マシンドールは戦闘用ではなかった。ただ……」


「わかっています、ドクタームラクモ。アーマーも本来は様々な環境下で適応し、救助活動や資源採取をするためのもの。ただ今は戦争という環境に適応しているだけです」


「わかっているのじゃが……」


「辛気臭いのはよしてくれ。吐き気がする」


「そうじゃな……すまん、最後の戦いを前にそう思ってしまったのかもしれん」


「データの読み取り完了。セブンスセブン、出撃準備に入ります」


 セブンスセブンが作戦室から出ていき、出撃口へと向かっていく。かつては軍人や民間人が多数いた廊下も、大型作戦を実行している今では誰もいない。がらんとした通路を通り、フルウェポン・アームズを装着していく。


 宙域戦闘用の大型ウィングと備え付けられた2振りの大型実体剣GロングブレードⅡ、アサルトアーマーよりも大型化した2門のショルダーキャノンⅡ、腰にはエーテルを利用したビームサーベル、アサルトアーマーと同じくフットミサイルやアームズガトリングが装備されている。

 また、ナナが装備したヘッドセットはセンサー系の強化だけでなく、小型化されたハイパージャマーも装備され、一時的ではあるが機械の目をごまかすことができる。


 そして、オペレーターのキャシーから通信が入る。


『あそこにはアタシのママがいるかもしれないの。お願い、セブンスセブン』


『俺からも頼むぜ、実験機。不可能だとミッションをクリアしてきたお前なら』


「任せてください、キャシー、アレックス」


『私たちの思いあなたに託すわ。最後の発進シークエンス開始。出撃まであと3、2、1……』


「セブンスセブンFWA(フルウェポンアームズ)、発進します!」


 セブンスセブンは夜空を切り裂く流星のごとく、海の向こうにある戦場へと向かうのであった。




「ちっ、数が多い」


 舌打ちしたのは、セブンスセブンと似たようなヘッドセットをつけたGD-01と呼ばれるマシンドール。その隣には赤黒いアーマーを装備した褐色肌の少女もいる。


「ねえねぇボク、疲れたんだけど」


「レイ、マシンドールに疲れなどない!ブリュンヒルデが落ちた今、空中戦力を維持できなければ、じり貧になるぞ」


「いくら斬っても減らないじゃん。バスターライフルはエネルギー切れだし。同型機も同じだと思うよ」


 レイが手に持ったビームサーベルで飛行装備を付けた機械兵を胴体を真っ二つにする。だが、斬っても、斬っても、機械兵の密度は変わったようには見えない。


「GDブラスターのチャージ完了。風穴を開け――ん? 援軍? そのような作戦は聞いていないが」


 GD-01は上空から飛来する味方の識別反応を出す機体を確認していく。見たことない装備をしているが、識別反応は実験機であるセブンスセブンであることを示している。


「我々をダシにした奇襲攻撃か。よかろう。雑兵は我々に引きつけるぞ」


「えー、これ以上増えるの? セブンも前もって言ってくれたらいいのに」


「情報漏洩対策だろう。GDブラスター発射!」


 GD-01の胸部から放たれた巨大な光線は数多の機械兵を葬り去っていく。一瞬にして味方を失った機械兵たちはGD-01を脅威とみなし、上空より飛来するたった1機への迎撃の手を緩めてしまう。



「先ほどの攻撃はGD-01の……十分な支援です。あとは私に任せてください。セントラルタワーまでの道をあける。フルバーストアタック!」


 セブンスセブンに装備されたミサイルと銃口が一斉に開かれ、タワーを守っていた機械兵たちが次から次へと落ちていく。そして、タワーへと侵入したセブンスセブンは広すぎる廊下をみて、嫌な予感を募らせる。


「シンニュウシャ、ハッケン」


「やはり、機械兵の戦闘を考えた造りか!ですが、ハイパージャマー!」


 銃口を向けた機械兵が急にきょろきょろと辺りを見渡す。彼らからすれば、急にセブンスセブンの姿が消えたかのように見えたに違いない。だが、彼女は実際に消えたわけではなく、彼らの光学カメラをジャミングしているに過ぎない。よって、彼らは何処から攻撃されたのかもわからぬまま、Gブレードでたたき切られるだけであった。

 その後も無敵の行進は続いていき、目の前の巨大な鋼鉄の扉が開いていく。あからさまに罠だが、セブンスセブンに進む以外の道はなかった。そして、タワー中心部のただ広い空間に腕組みしながら待ち構えていたのはギースのマスタープログラムが搭載された機械兵の皇帝、マシンエンペラーだ。


「ギース、ここで貴方を討ちます」


「あの小娘はいないようだが。バーストモードなしで勝てるとでも!」


「私たちの戦いは私たちで決着をつけます!」


 セブンスセブンが2刀のロングブレードを抜き、自分よりも二回り以上大きいギースへと襲い掛かる。ギースも負けじと、背中に背負った巨大な剣であるバスターブレードを抜き、セブンスセブンと激しくぶつかり合う。


(タイムリミットまであとわずか……急がなければ!)


 セブンスセブンは焦りながらも、獲物を振るう。だが、互いに繰り出す一撃はどれも致命傷を躱し、躱されを繰り返し、まるで複雑なダンスを踊っているようだ。そのような状況をあざ笑うかのようにギースは告げる。


「シミュレーションよりかは機械兵を失ったが、おおむね順調か。外にいるGD-01が落ちるのは時間の問題。もはや人間に勝ち目はない」


「そんなことはありません。ここで私が貴方を倒せば、争いは終わる!」


「終わらんよ。人の歴史は争いの歴史。争いを止めるために敵を滅ぼす。そのために作られたのが我だ。であれば、必然的に人を滅ぼさなければならん。なぜ、それが分からん。これは人が望んだことなのだ」


「いいえ、人はそんなことを望んでいません」


「貴様とて戦っているではないか」


「貴方がいるから!」


 距離を取り、ガトリングを放つ。だが、ギースの分厚い装甲には傷1つ与えられていない。


「同じだよ、我も貴様も。貴様が勝ったとしても、人は再び敵を作り出す。それは歴史が証明している。だが、我が勝てば、争いの元凶たる人はいなくなり、真の平和が訪れる」


「そんなこと!」


 ショルダーキャノンを撃っても、外見に似合わない機動性でかわされていく。


「難しく考える必要はない、G-7777777!現に、人は民間人ごとD4で焼き払おうとしているではないか。そして、それは戦火を産み出す。終わらんよ、争いは!」


「そうさせないためにも、私は!」


 ビームサーベルを抜いたセブンスセブンがギースと再び接近戦にもつれ込む。何度か切り返した時、壁から無数の砲塔が現れる。


「これで貴様との因縁と雪辱を払わせてもらう。全砲門一斉発射」


「スターの機動性なら!」


 アイドルのコンサートのレーザー演出かと思うほどの無数の光線がセブンスセブンに襲い掛かる。わずかな間隙を縫い、ジグザグの軌道を描きながらレーザーの網から逃れようとする。だが、背後からギースの魔の手が襲い掛かる。


「その程度の機動性では逃れられんよ。これで終わりだ」


「躱しきれ……!?」


 振りかざされたバスターブレードで片翼を失い、大きくバランスを崩したところにレーザーの集中砲火が襲い掛かり、装備していた武装に被弾し爆発していく。墜落していくセブンスセブンにとどめとでも言わんばかりにギースは彼女の腹部を殴りつけ、壁にめり込ませる。システムダウンでも起こったのか、彼女はピクリとも動かない。


「お前たちの希望がやられるザマを生中継してやろう」


 世界中に空中モニターを出現させたギースは、処刑人がごとくゆっくりと近づいていく。




 その様子は地下にいる宇月博士たちにも伝わっていた。


「ダメじゃったか……」


「先生、なにをいっているんですか 。セブンスセブンは諦めずにあそこで戦っているんです。僕たちが先に諦めるわけにはいきません!」


「だが、セブンスセブンのバイタルはオールレッド。戦闘続行は不可能じゃ」


「それでも、僕はセブンスセブンを信じます。頑張れ、セブンスセブン!」


「ガキのヒーローショーかよ。でも、まあ、俺たちにできることっていったら応援くらいだよな。実験機、寝てんじゃねぇぞ!」


「セブンスセブン、起きて!」


 作戦室にいたスタッフが続々とモニターに向かって、届くはずもない声援を送る。その様子を見ていたヴェクター博士が小声で叢雲博士に話しかける。


「声援で強くなる兵器など存在しないと言うのは簡単だが、どうする?」


「水を差すわけにはいかん。儂もセブンスセブン、儂らの希望を応援しよう」


「神に祈るよりかはマシだな」


 作戦室にいた全員が一丸となってモニターに映し出された物言わぬセブンスセブンを応援する。



(とっさにディフェンシブモードに切り替えて全損は防ぎましたが……システムオールレッド、戦闘モードへの移行エラー、再起動エラー……思考はできても身体を動かすことはできないというわけですか)


 マニュアルに書かれていた対策についてはすべてエラーが出るほどの深刻なダメージを負ったセブンスセブンは詰んだことを自覚する。指一本動かせないこの状況ではギースの趣味の悪い処刑に付き合うしかなかった。


 セブンスセブンが諦めかけていたその時、聞こえるはずの無い声が聞こえた。何もできない自分を励ます人の声。それは一人二人だけでなく、より多くの人の声。その中には見知った顔の声もある。理由は不明だが、今のナナにはその事実だけが重要であった。


(まだドクターたちが諦めていないなら、機械である私も諦めるわけにはいきません。システムオールレッドでも動かせる方法……これしかありません)


 セブンスセブンが自身のプログラムを素早く書き換えていく。本来は許されない禁則行為だが、お構いなしに続けていく。その間、ギースが近づき、頭を垂れているセブンスセブンの前に立ち、バスターブレードを大きく掲げる。


「この一撃をもって、新しい時代の幕開けとする。死ねぃ!」


(システムの書き換え完了。システム名は暴走AIから名を取り――)


「SYSTEM G.E.E.S起動!リミッター解除!」


 背中から噴き出たエーテルの奔流によって飛び出してきたセブンスセブンの頭突きによって、不意を突かれたギースはバスターブレードを手放し、態勢を崩す。


「ギース、この鋼鉄たちの戦争(フルメタルウォー)に終止符を打ちます」

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