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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第2章 機械人形と別れ

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EPISODE31 魔界

 翼を広げ、飛翔しながら距離を詰めていくナナが通常出力に調整したライフルを放つが、ブリザード・ドラゴンの氷の鎧をわずかに削るだけにすぎず、さらには瞬時に自己修復されてしまう。


「やはり、アイスゴーレムと同じ性質を持っていましたか。ですが!」


 絞っていた出力を開放し、マシンガンのごとく撃ち続ける。無論、ドラゴンも防戦一方ではなくクローや尻尾を振り回していく。だが、巨躯がゆえに人間サイズで高速に飛び回るナナに当たる気配がない。ナナの猛攻に氷の鎧が少しずつではあるが、一方的に削れていく様子にアイリスたちは言葉が中々でない。


「寒冷地のブリザード・ドラゴンが一方的とか……あ、ありえないのだわ」


「これがナナの……本当の実力……!?」


 ドラゴンが背びれの氷をミサイルのように飛ばしても、片手間に処理される程度で攻撃の手を緩めることは無い。たまらなくなったドラゴンが翼を広げて、氷の弾を吐きながら上空へと逃げようとする。


「そのまま逃げ去るのであれば見過ごしますが、その様子だとその気はないようですね」


 ライフルでは一向に埒が明かないと判断したナナがエーテルキャノンに切り替えて猛追する。氷の鎧を貫通するほどの威力。それがチャージ時間が大幅に短縮され、ライフル並みの連射性でドラゴンを追い詰めていく。

 その攻撃を防いで、反撃のチャンスを伺おうと思ったのか、ドラゴンの周りに冷気が集まっていく。纏っていた氷の鎧がさらに厚く、先鋭化していく。


「それが本気の姿と言ったところでしょうか。ならば、エーテルウィング!」


 質量を持たない赤い羽。それに触れたドラゴンは急に力が抜けたかのようにガクリと高度を落とし、バランスを崩す。それを見逃すわけもなく、ナナはエーテルキャノンをぶつけて、もろくなった接触箇所に当てていく。


 困惑しているような声をあげているドラゴンに対し、ナナは地上にいるアイリスたちにもわかりやすいように説明し始める。


「この羽はエーテルドライブの過剰運動によってエーテルの流れが可視化されたもの。そして、エーテルドライブとは大気中のエーテルをエネルギーに変換する装置。つまり、この羽に触れたエーテル、魔法で構成された物質は私のエネルギーとして変換されます」


「今のナナには魔法が全く通用しないということ!?」


「吸収量に限界があるかもしれませんが、端的に言えばそういうことです。もはやあなたに勝ち目はありません。このまま逃げれば追い打ちをかけるつもりはありませんが?」


「UGAAAAAAAAAA!!」


 頭部に氷の角を生やし、勢いよく突っ込んでくるドラゴン。再三の呼びかけに応じなかったドラゴンに対し、ナナはGブレードに切り替える。


「穏便に済ませたかったのですが、仕方ありません。これで終わらせます。Gブレード!」


 氷の角と赤く発光したGブレードがぶつかり合う。その衝撃波でアイリスたちの軽い身体が吹き飛ばされそうになる。ピシピシとひび割れたところから瞬時に自己再生される氷の角。ギリギリのところで保たれている均衡はすぐに崩れることとなる。


「リミットブレイク!!」


 限界を超え、巨大化した剣によって角ごと一刀両断にされたドラゴンは、アイスヘルの厳しい冷気にさらされ、地上に墜落した瞬間には氷のかけらとなって砕け散るのであった。



「自己再生する気配なし……ミッションコンプリート」


「あわわわ、ブリザード・ドラゴンをものの数分で倒すとかありえないのだわわわわ」


「ドラゴンって素材として優秀って聞いたことがあるから、使ってみたかったのよね~」


 ナナの戦闘力に動揺を隠せないカーミラ、方やそんなことよりも目の前のお宝の数々に目を奪われているアイリス。凍り付いて生前よりも脆くなっているとはいえ、牙を折ったりするのは苦労しているようだ。


 G.E.E.Sを解除したナナがアイリスの手伝いをしていると、何者かに呼びかけられる。後ろを振り向くと、そこにはヤギのような角を持つ骸骨が黒いローブを着ている。ローブの上からなので、頭部と同じく骨だけなのか、それとも人のような肉体があるのかは分からないが、体格からみるにガタイはよさそうだ。


「獣王から話は聞いていたが、番犬代わりに連れてきた竜を赤子の手をひねるかの如く倒すとは」


「まままままま、魔王様!?」


「我が同族の護衛、見事であった。礼を言うぞ」


 魔王が指パッチンすると、猛吹雪が嘘のようにピタリと止み、空には満面の星空が広がる。そして、ゴゴゴと地響きと共に地面から、石の門が生えてくる。


「これが魔界に続くゲート?」


「さっきまでの吹雪は……まさか?」


「我が結界だ。色々と面倒事があってな。それについては向こうで話すとしよう。入るがよい」


 アイリスたちがゲートに入っていくのを見て、魔王が再び指を鳴らすと吹雪が吹き荒れていく。そして、彼が魔界に戻るやいなやゲートは再び地下深くへと潜っていくのであった。




 魔王に案内され、薄暗い鍾乳洞のような空間を進んでいくアイリスたち。行き交う魔族は、肌が青かったり紫だったりと人とは異なり、ハーピィのように翼を持つ者もいる。少数ではあるが、言葉をしゃべるゴブリンたちも見受けられる。


「魔界って初めてきたけど、人の街と変わらないわね」


「そう? じめッとしているし、空気悪いし、油断すればすられるわよ。こんな風にね」


 カーミラが通りすがりの青肌の魔族の青年の手をつかむと、彼の手から猫の形をした財布が零れ落ちる。拾った財布を懐にしまいこんだあたり、彼女のものらしい。


「我が眼前で盗みを働くということは、覚悟のほどはできているということだな」


「ひい、魔王様の客人なら、金くらい持っていると思って、ついでき心で……許してください!」


「ふむ。ならば、汝に呪詛を与えよう」


 魔王が怪しげな呪文を唱えていくと、黒い靄が盗人を覆い隠していく。全身が黒い靄に包まれてから、しばらくたつと、靄が霧散し、盗人の姿が現れる。その腕には先ほどまでなかったびっしりと象形文字のようなものが刻まれている。


「汝がその手で他人のものを盗むたびに、激痛が走る。だが、汝がこれまで盗んだ数だけ人のために手を伸ばせばその呪詛は解かれるであろう」


「あ――」


「だが、我が客人の前でなければ、首の一つや二つが飛んでいたものだと思え!」


 魔王がにらめつけると、盗人がすたこらさっさとどこかへと逃げ出してしまう。


「見苦しいところを見せてしまったな」


「い、いえ。私たちのことはお気になさらずに」


「ところで、私たちはどこに案内されているのでしょうか?」


「我が城だ」


 ナナは眼前に見えるいかにも古典的なファンタジーに出てくるような魔王城をみる。ぶきみな薄暗さも相まって、世界征服を企んでいるラスボスがここに居ますよと言わんばかりな雰囲気まである。


「まあ、アレが集合住宅だの市場だのと言われてもそれはそれで困りますね……」


「それもそうね。役所だったとしても困るけど」


 あからさまな魔王城に住民登録していく魔族の様子をシミュレーションしたナナは苦笑する。自分で言ったアイリスもそんな様子を想像してしまったのかクスクスと笑うのであった。




 魔王城につくとメイド服を着た女悪魔たちが出迎える。角はあるが、魔王のようなスケルトンではなく青白い肌の女性だ。出るところは出ており、その美貌は男性を虜にしてしまうだろう。そんな彼女たちの顔には下心などまるでなく、主である魔王に心酔している様子が伺える。


「どこかの王宮とは違いますね」


「お兄様のことかしら。下心丸見えの女性と付き合っていたから、否定はしないけど」


「怒らないのですね」


「あんなことがあった後だと……ね」


「王子が何を考えてクーデターじみたことを為したのか、それがわかれば対処のしようも変わるのですが……」


 魔王に連れてこられた部屋は応接室ではないダイニングであった。テーブルの上には湯気が立ち上る料理の数々が整然と並べられている。


「長旅、ご苦労であった。同族を護り抜いた汝らの奮闘を称え、ささやかではあるが歓迎の席を設けた。存分に味わうがいい」


「お腹空いていたし……食べましょう、ナナ」


「ええ。それにしても、グロテスクな外観のものが多いですね。見てください、この毒々しい色の魚と野菜」


「大丈夫よ、きっと」


 アイリスがパクッとひと口。身は旬の白身魚に負けないほどの脂のノリ、そして、ピリ辛仕立てに味付けをしているのか、食欲を促進させ、いくらでも食べれそうだ。辛みの多い料理が多い中、ミントのような爽快感を与えてくれる謎野菜のサラダは口直しにはちょうどいい。濃厚なスープも温かく、アイスヘルの極寒の行進を忘れさせてくれる。


「どれも出来立てでおいしいわね」


「ええ、まるで私たちが来るタイミングがわかっていたみたいです」


「我には未来を見通す能力がある。多用はできんのが玉に瑕だがな」


「未来予知……多数の演算装置と高度なシミュレーションをすれば、それに近いことはできますが、人の身でそれを行うとなると……」


「それができるのが魔法よ。魔法が使えない私が言うのもなんだけど」


「魔法があっても日光が弱点なのは変わりないけどね。魔法も万能じゃないわよ」


「さよう。魔法も技術もそれぞれの良し悪しはある。だが、いつまでも悪しき場所から目を背けては進歩することもできん。そこの吸血鬼は日の下でも魔法を使おうとして――」


「いくら魔王様と言っても、プライバシーの侵害よ!」


「これは失礼した。さて、ここに来てもらったのは何も歓迎するためだけではない。汝らに頼み――」


「失礼します!」


 魔王が話を進めようとしたとき、軍を着たリザードマンが現れる。その様子に魔王は、またかとため息をつき、やや不機嫌そうな顔をしながら彼の報告を静かに聞く。


「帝国のマシンゴーレムが封印の地に現れたのこと。数は1個中隊ほど」


「今回は数が多いな。こちらも同程度の戦力は必要だろう。3、4番隊を回せ」


「はっ!」


 敬礼をした後、リザードマンが飛び出していく。大多数の魔族が廊下をドタバタと走る音が聞こえるほどに、慌ただしくなっていく。


「帝国のマシンゴーレムというのは?」


「ああ。説明するより、見せたほうが早いだろう」


 魔王が宙にモニターを映し出す。吹雪の中、画面を埋め尽くさんとする帝国の一つ目の機体。それを見たアイリスとナナは目を大きく見開き、信じられないものを見たかのような顔をする。


「これって遺跡の……」


「ありえない。これは……」


「なに、知っているの?」


「装備は違うけど、あれはナナと初めて出会った遺跡のマシンドールよ」


「Pタイプのマシンドール。プロトタイプゆえに生産された数はわずか数機。装備品のアサルトアーマーはともかく、中隊を組めるほどの数が発掘されることはありません」


「帝国が生産したとは言うわけだな。不可能では無かろう」


「そうかもしれませんが、すでにGアサルトを運用しているのを目撃しています。規格が異なるアサルトアーマーを装備しているところを見ると、Pタイプにもある程度の改造を加えられているのでしょうが、そうするよりかはGタイプを生産したほうが戦力的にも良いはず」


「つじつまが合わんな。何をしたいのだ、帝国は?」


(しかし、あのマシンドールの動き、どこかで……)


 ナナはどこか引っかかりを覚え、魔王に進言する。


「私も出ます。人出は多いほうが良いと思われます」


「よかろう。交戦場所まで転移するとしよう」


「ありがとうございます。マスターアイリス、リミッター解除の許可を」


「わかったわ。リミッター解除!」


 ナナの足元に魔法陣が広がり、リミッターを解除したナナが姿を消す。転移先でナナが目にしたのは魔族とマシンドールが互いに争う戦場だ。ただ、無機質に話すマシンドールはアサルトリペアの1号機や2号機と違い、人格プログラムを組み込んでいないように見える。


「ターゲット、Pアサルトを確認。敵性マシンドールの掃討に移ります」


 無機質な機械音と共に、フットミサイルやショルダーミサイルがナナに襲い掛かる。それらを惹きつけて急旋回することで、ミサイル同士がぶつかり合い爆発していく。ミサイル攻撃は通用しないと思ったのかPアサルトはガトリングによる面制圧へと切り替えていく。


「モノアイ、数による面制圧……確かめる必要はある。Gブレード!」


 致命傷だけを避けながら、Pアサルトの群れに急接近し、その刃を振るう。接近戦に持ち込まれているにもかかわらず、射撃攻撃を続ける彼らに嫌な予感がにじみよってくる。


「接近戦の弱さ!そして――」


 不意を突いたロケットパンチに対応しきれずフライトユニットの翼が折れて墜落していくPアサルトを見ていく。背後に回り込んだ敵機の攻撃を急上昇でかわし、眼前の敵にその攻撃が当たる。


「柔軟性の無さ。味方を巻き込むことを厭わないこの戦闘プログラムはギースの機械兵と同じ!」


 Pアサルトに囲まれた魔族を助けるため、光刃を振るう!


「あれは私たちが破壊したはず。ならば、なぜ!」


 Pアサルトを次から次へと爆炎の華へと変えていくナナ。だが、その問いに答える者は誰もいない……

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― 新着の感想 ―
[良い点] これらの新しい王国と魔王は魅力的です。 私は彼らが人々と彼らのゲストを気遣う方法が好きです、それのために残酷であるだけではありません。
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