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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第2章 機械人形と別れ

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EPISODE28 祈り

「パワークラッシュ!」


 直撃を受けまいと後方に飛び下がったナナだが、砕けた地面のつぶてが弾丸のように飛来する。


「なんの、Gシールド!」


「こいつは防ぎきれまい。アックスバスター!」


 ガンマの刺先から放った魔力のビームがナナのシールドへと向かう。極太の光線でもGシールドはいまだに健在である。だが、それをガンマはニヤリと笑い、追加の呪文とほんの少しばかりの魔力を注ぐ。


「――アンド、マナブレイク!」


「Gシールドが砕けた!? エーテルリアクター出力、緊急上昇。エネルギー転換装甲に!」


 赤く染まったナナがアックスバスターの攻撃を受け止める。アックスバスターの衝撃で巻き上げられた土埃の先から、スパイクを突き刺そうとするガンマの姿が現れ、Gブレードで応戦するが、数回はじいたところで剣が砕ける。


「破損!? 確かに力は強いですが、圧倒的というわけではないはず。先のGシールドと言い……何かがおかしい」


(マナブレイクを付与した俺の攻撃に数回耐えるってことは、なかなかの強度ってところか)


 威力が下がる代わりにバリアや障壁などの魔力構造物を破壊する効果を付与できるマナブレイクに一度でも耐えている彼女の剣を見て、高く評価している。もし、出会い方が違えば、仲間にスカウトしたいところだ。


「再度出力。Gブレード」


「バキバキ折れるガラスの剣で俺に敵うと思うな!」


「くっ……」


 重い一撃を受け流し、ひびの入った刀身をみる。もう一撃を加えられたら砕けるであろうそれを再度出力しなおし、ひびを無くす。


(守勢に回ればやられる……)


「オラオラ、どうした!それしかできないのか!」


「ここは距離を……」


 ガンマが大きく振りかざしたアックスを見切り、躱す。彼が再び振り上げるまでのほんのわずかな一瞬で後方に下がったナナを見て、ガンマは刺先をナナに向ける。


「これで終わりだ。アックスバスター!」


「Gシールド!」


「先と同じように破壊してやるぜえええ!!」


 ガンマの放ったアックスバスターを斜めに張ったGシールドで受け流していく。たとえ受け流しやすい角度で張ったとしても、マナブレイクを付与したアックスバスターを前に持ちこたえるのはほんのひと時だろう。だが、彼女にはほんのわずかな時間が必要だった。エーテルをためるだけのわずかな時間が。


「エーテルキャノン、発射!」


 Gシールドが砕けた瞬間、青白い光が発射される。アックスバスターとぶつかり合い、徐々に押し戻されていく様子を見て、ガンマに焦りの色が見える。マナブレイクはあくまでも構造物を破壊する効果を付与するもの。純粋な魔力対決となると、火力が下がる分不利になるのだ。


「マナブレイク、解除!押し戻してやる!」


 本来の威力に戻り、一気に押し返していくアックスバスター。それがナナに当たったのか、粉塵が舞い上がる。土埃が晴れると、そこには彼女の姿はなかった。


「ふん。消し飛んだか。首は取れなかったが、弱った吸血鬼の首とお姫さんを連れて行けば依頼た――」


「そういうのを捕らぬ狸の皮算用と言います」


「なに!?」


「Gバルカン!」


(こいつ、太陽を背に――!?)


 ガンマが跳躍しているナナの迎撃に入ろうとしたが、太陽のまぶしさに目がくらみ狙いをつけることができない。先ほどの折れることがわかっていたにも関わらず、魔力の剣で接近戦を挑んでいたのも、逆光になる場所を悟られないようにするためだとこのときになって初めて悟る。


「メタルボディ!」


「全身を鋼鉄に……ですが!戦い慣れています!」


 バルカンで少しずつ削れながらも耐えていくガンマ。着地したと同時にナナはGブレードに切り替える。それを見た急いでメタルボディを解き、アックスで迎撃する。


「この距離ならば!」


「マナブレイクを唱えている暇が……」


「呪文を唱えさせません!」


 素早い斬撃を繰り出して、防戦一方のガンマ。そして、迎撃に向かない大型のアックスでは小回りの利く剣に対応しきれず、少しずつだが致命傷ではないとはいえ、傷が増えていく。そして、ついには彼の胴体に深い一撃が加えられ、倒れることとなった。


「マスター、戦闘終わりました」


「えっ~と、死んだの?」


「いえ、まだ生きています」


「襲ってきた賞金稼ぎなんだからやられても文句は無いわ。放っておきましょう」


「でも……」


「マスターがしたいように。彼の戦術・戦略は理解したので、次はもう少し楽に勝てます」


「助けるで。救急箱はあったはず」


 アイリスが傷口を消毒し、包帯を巻いていると気絶していたガンマが目を覚ます。まかれた包帯を見て、怪訝そうな顔をする。


「てめえら、なんで俺を助ける?」


「悪い人じゃないんでしょう?」


「当たり前だ。他の奴は知らねぇが、俺たちはルールは守ったうえで、賞金首を狩っている。よそ様に迷惑かけて、賞金稼ぎが賞金首になるわけにはいかねぇからな」


「だったら助けないと……これでよし」


「ふん。だが、部下は殺した。てめえらがやっていることは無茶苦茶だぜ」


「ははは、そうかも」


「傷が治った俺が襲い掛かったらどうするつもりだ」


「そのときはそのときで考えます。今は助けたいと思ったから助ける。それが私の選んだ答えだから」


「……甘いやつらだ。そんな奴、アイスヘルで野垂れ死になるだけだな。俺たちが襲う価値もねぇ」


「つまり、私を襲わないってこと?」


「ああ、そうさ。賞金首に手当までされたのに襲ったら、恩知らずになっちまう」


「良い誤算ね。襲撃が減るに越したものは無いわ」


「それ目当てで治したわけじゃないんだけど……回復ポーション、置いておきます」


「町に急ぎましょう。もうすぐ日が暮れます」


「私的には夜の方が動きやすいんだけどねぇ。そのあたりの行動は貴方たちに任せるわ」


 ガンマを手当てした彼女たちが去っていく。手負いの彼が生き延びることができるかは凶悪な魔物が現れないかにかかっているだろう。だが、彼は生き延びねばならないと思っていた。いつかこの大きすぎる恩を返すために……




 夜にはなってしまったもの、宿泊予定の町にたどり着いた一行は宿屋でしばしの休息をとる。机の上には地図が広げており、行路には赤線が引かれている。


「町によるのはこれが最後です。ここで準備を整え、3日後にはアイスヘルに突入します」


「早ければ2日後だけどね」


「そううまくいかないでしょう。いくら私を狙う賞金稼ぎが一人減ったところで、他の賞金稼ぎが狙うわ。そのたびに助けていたらキリがないんだけど」


「昼間の彼くらいの腕の者だと本気を出さないといけませんし、数で来られても手加減はできません」


「ははは、そこはケースバイケースで……」


(逃げたわね)


(逃げましたね)


「と、とにかく。賞金稼ぎの人が来ないことを祈りましょう」


「……私、吸血鬼だから神になんて祈らないわよ」


「機械なのですが……」


「そういえば……」


 アイリスは見た目が人間と変わらないせいで、彼女たちの正体を失念していた。この場にいる人間は彼女一人だけという事実にようやく気付く。


(アイスヘルに行っても魔族だけだから、人間の数増えないわね……)


 ほんの少し前までは、人間が居て当たり前といった環境から随分と遠くまで行ったものだと思いながら、アイリスは何処にいるのかもわからない神に祈る。この無意味な戦いが早期に終わってほしいと思いながら。

来週は投稿遅れます

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