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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第2章 機械人形と別れ

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EPISODE27 賞金稼ぎ

 賞金稼ぎを迎撃したとはいえ、夜はまだ長い。月に照らされながら、三人は今後の道のりをどうするか考えていた。


「アイスヘルまで最短ルートで進むとなると、アルパス山脈を越えるルートになるけど……」


「アイスヘルで消耗されるのがわかっているのに、竜種も生息する山越えルートは馬鹿の極みね。迂回ルートを選ぶのが正解よ」


「そうなると森を抜ける南ルートか荒野を進む北ルートになりますね」


「どっちのルートが良いの?」


「ガンザス荒野を突き抜けるルートよ。そっちにはレッサーデーモンなんかの中級魔族がいるけど、私たちなら問題なく対処できる。少なくともさっきみたいな弱小賞金稼ぎが待ち伏せなり昼間に襲撃なんか仕掛けてこないから、ストレスフリーなだけマシよ」


「ところで先ほどの襲撃犯はどうしますか?」


「ほっといて良いわよ。よって集っても私たちの敵じゃないのはわかったし。それに賞金稼ぎを倒しすぎると治安悪化につながるのよ」


 カーミラが言うには、以前にも襲撃があったらしく報復もかねて彼らのアジトの一つを潰したらしい。だが、賞金稼ぎが少なくなるということは凶悪犯を(生死問わず)捕まえる人手も少なくなるということで、その数年間は犯罪が多かったという。


「そういうわけで、火の粉は払うけどアジトは潰さないってなると、外にいるより魔界の方が楽だわって王様と話をしたってわけ」


「なんだか狩られる側なのに狩る側の心配してる気がする……」


「まったくその通りよ!全力全霊で襲い掛かるなら、こっちも全力で戦うのが筋ってものじゃない。こっちだけ手加減しろってのはねぇ……」


「吸血鬼って聞いて怖い人だと思っていたけど、良い人みたい」


「ふ~ん、私のこと、そういう風に言うひと初めて見たわ。ちょっと、味見させてもらおうかしら」


「えっ……きゃっ!?」


 急に近寄ってきたカーミラがアイリスの首筋に牙を突き立て、その血をすする。ナナが止める暇もないくらいに、カーミラの吸血行為はすぐに終わり、ぺっぺっと吐き出している。


「まずっ……」


「ちょっ!? 最初に出てきた言葉がそれ!?? 先に謝るとかないの?」


「だって不味いものは不味いもの。これを飲むくらいなら、トマトソースでも飲んだほうがマシだわ」


「私の血液、トマトソース以下なの!? ドロドロしているとかそういう感じ!?」


「なんというか……見た目に騙されて飲んだことを後悔するような味よ。バランスの良い食事と規則正しい生活を送りなさい。わかった?」


「わかったけど、なんで私、吸血鬼に身体のこと心配させられているんだろう……」


「あっ、そういえば、貴女の名前聞いていなかったわね」


「そういえば。私はアイリス・シャルトリューゼと言います。こちらが……」


「貴女のゴーレムでしょ。それくらい分かるわよ」


「いえ、私はゴーレムではなくマシン……」


「命の無い生命体はみ~んな、ゴーレムでしょう?」


「ですから、私は機か……」


「ゴーレムに命はないけど、命無いものが全部ゴーレムというには論理の飛躍があるような……」


「私の言った通りじゃない」


(駄目だ、この人。人の話を聞いていない……)


「……ゴーレムで良いです」


(あの頑固なナナが諦めた!? 吸血鬼おそるべし)


 心が折れたナナの様子を気にかける様子はない。一度決めたらそのまま突っ走るタチのようだ。アイリスは戦闘力という点においては心配するような面子でないにもも関わらず、どこか不安を感じざるを得なかった。



 そのころ、賞金稼ぎたちのアジトでは襲撃に失敗した男が粛清という名の暴力にさらされていた。顔は既に判別ができぬほどに膨れ上がり、身体中には無数の切り傷や痣ができている。2mは優に超えるオークのような獣人が胸倉をつかみ上げる。


「ベータ、夜間の襲撃に策があると言ったから、行かせてみれば大損じゃねぇか!どう落とし前をつけるつもりだ!」


「す、すみましぇん……」


「無能なてめぇを殺さないのは、殺したところで俺たちに何の得にもならないからだ。下っ端からやり直してこい!!」


 男を突き飛ばした後、団長は地図を広げて集まっている賞金稼ぎたちに命令を下していく。


「アイスヘルに行くという情報を手に入れた。あそこに入られたら、俺でも立ち入ることはできねぇ。増援は女、しかも少数精鋭で行くなら山越えはない。となれば残るは森か荒野か……てめぇらは森ルートを張っていろ。9割方そっちだろう。残る1割は……俺が出る」


「ガンマ団長自らが!?」


「おうよ。久しぶりに暴れてやるぜ(こいつらがいねぇ方が動きやすいしな)」


 賞金稼ぎは団長の指示に従い、誰も通ることの無い森ルートを見張ることとなる。そして、アイリスたちが通る荒野ルートにはガンマが自身の獲物、バトルアックスを手に取り、鼻息を荒くしながら進むのであった。




 夏らしく熱い太陽が照り付ける中、ガンザス荒野を突き進むアイリスたち。アイスヘル対策の防寒具も必要なかったのではと思うほどだ。そんな彼女たちの目の前の地面から、ヤギの頭と6本腕、腹部には縫い付けられたような跡がある人型の悪魔、レッサーデーモンがにょきりと現れる。口からはよだれを垂らしており、言葉が通じる様子はない。


「GYSYAAAAA!!」


「Gガトリング!」


 レッサーデーモンの腹部に向かって銃弾を放っていくと、6本腕でこじ開けられた腹部の穴に銃弾を吸い込んでいく。いくら攻撃しても、まるで効いている様子が無いことからナナは一度攻撃を中断する。

 お返しと言わんばかりに、6本の腕から次から次へと光弾を放っていくが、高速で移動するナナに当たる気配はない。


「あの吸い込み攻撃の有効範囲がわからない以上、不用意に近づくのは危険。正面からの攻撃が効かないのであれば――Gライフル!」


 背後に回り込んだナナがレッサーデーモンに銃弾を放ち、貫通する。ライフルに撃たれたレッサーデーモンだが、1発では死なず自己再生を始めていく。


「回復させる暇は与えません!W・Gライフル連射!」


 だが、そんな無慈悲にも飛んでくるエーテル製のライフル弾に身体中をハチの巣のようにさせられてしまい、致命傷を負ったのか再生する力も失い、地にひれ伏すのであった。


「正面からの飛び道具対策に、自己再生能力。1匹だけならまだしも、数で来られたら厄介ですね」


「それは無いわ。悪魔ってジコチューだもの。あっ、魔王様は例外よ」


「魔王ハデス。名前だけなら聞いたことはあるけど、どんな人なの?」


「俺でも手を出せない。いけ好かない骸骨だ!」


 アイリスの問いに答えたのは三人を待ち伏せていたガンマだ。ガンマが振りかざした斧をGブレードに換装したナナが食い止める。受け止めていたナナの足元が陥没するほどの衝撃が伝わる。


「くっ……重い」


「俺のディープインパクトを食い止める人間……いいや、ゴーレムがいるとはな!」


 強敵であるはずのナナにどこか嬉しそうな表情で、ガンマはナナを弾き飛ばして距離を開けさせる。


「俺の名は賞金稼ぎの頭領ガンマ。お前らの首を持って帰れば、子分に分け与えても使い切れないほどの金と名誉が得られる。そうなりゃあ、ハンターに怯えることもなく女を選び放題、やりたい放題ってわけだ。つーわけで、ここで死んでくれよなぁ!」


「色々と言っていますが、結局は性欲ですか!見た目からの判断ですが、オークらしいですね!」


「オークじゃねぇ!猪だ!あんなけだものと間違えるな!」


「わかりませんよ!」


 ナナの悪口(?)にキレたガンマが猛スピードで突進してくるのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私はこの奇妙な同盟が好きです。 人々がお金のために戦うとき、契約はこのようにねじれて乱用される可能性があります。 血の味のジョークも陽気でした。
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