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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第2章 機械人形と別れ

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EPISODE26 吸血鬼

「ナナ、新しい右腕の調子はどう?」


「やはりジャンクパーツを使っている以上、少し動作が鈍いですね。ですが、これくらいなら、こちらで補正プログラムを書ければ以前と変わらない動作は可能でしょう」


「よかった。それにしてもフレームのシャフトがゆがんでいたせいで、組み立てられなくなったときはどうしようかと」


「サイノスたちに市場を探してもらわなかったら、代わりの部品が無くてまだ修理が終わっていなかったにゃ」


「姐さんのためなら、売人をおど……交渉するのもやぶさかじゃないぜ」


 サイノスたちがそう言うのを聞きながら、プログラムを組み終わったナナが右腕を閉じたり開いたりして動作を確認していく。無事な左腕から修復機能付きの人工皮膚を移植しているが、まだ定着しておらず長袖と手袋で機械の腕であることを隠している。


「あと忘れてはいけない防寒服。外部装甲の修理中に思いついた新機能。なんと裏地に魔石がちりばめられているにゃ」


「この魔石に魔力を流すとカイロみたいに暖かくなるっていう寸法よ」


「では魔力が切れたら……」


「ただのもこもこした服ね。私の場合は魔法が一切使えないせいで、魔力に余裕があるから大丈夫よ」


「それにしても吸血鬼の護衛って……自分で戻ればいいじゃねぇか」


「吸血鬼とはいえば太陽の光を浴びると灰になると聞きます。日中の護衛が欲しいのでは?」


「でもよ、賞金稼ぎの連中もそんなことはわかっているはずだぜ。攻撃を仕掛けるなら昼間ってな。それで返り討ちになっているんだから、その話が嘘なのかもな。頭の悪い俺様が言うのもあれだが」


(日中に出会ったから返り討ちになった? だとしたら私たちが会うべきなのは……)


「難しい話はここまで。久しぶりの大仕事、楽しかったにゃ。困ったことが会ったらいつでも猫工房に来るニャン」


「ありがとうございます、キッドさん、サイノスさん」


「姐さん、アイスヘルへの同行は俺だと荷が重いからいけませんが、応援してますぜ」


「その依頼は私たちが受けたもの。気にする必要はありません」


 キッドたちと別れの挨拶を済ました後、吸血鬼が住む廃城へと向かっていく。狂暴な魔物が数多く生息していると言われている山道では――


「Gガトリング!」


「Gブレード!」


「Gライフル!」


「情報通りとはいえ数が多いですが……エーテルキャノン!」


 そもそもこの国の覇者たるレオンと渡り当たったナナに下級悪魔であるガーゴイルやインプ、アイスヘルから流れ着いたアイスゴーレムたちがかなうはずもなく、バサバサとなぎ倒されていく。無敵の進軍をつづけたこともあり、日が暮れる前に廃城についてしまう。


「どうする? 中に入っちゃう?」


「万が一の戦闘を考えれば、日中に入るのがベストな選択肢だと思うのですが……」


「問題はサイノスさんの証言よね」


「そうです。彼は粗暴ではありますが嘘をつくタイプではありません」


「それなら、サイノスさんを信じて夜になってから入りましょう」


「ええ。それに私たちは戦闘しに来たのではないという明確な意思表示になるでしょう」


「トランプでもして待ってみる? こう見えて強いわよ」


「ふふ、善処します」


 日が暮れるまでババ抜きやじじ抜き、ポーカーなど色々と遊びに興じることとなった。そんなこんなで時間をつぶして、日が完全に落ちたのを確認してドアをゆっくりと開ける。

 誰もいない静まり返った冷たい広間を歩いていくと、崩れ落ちた石像の陰から一人の少女が物音を立てずに二人の前に立ちふさがる。月の光に照らし出された金髪の髪、漆黒のマントに真っ赤な赤い瞳、そして何より特徴的な鋭い牙。彼女が件の吸血鬼だとすぐにわかるが、少女のようなあどけなさと大人の女性が持つ妖艶さの両方を感じさせ、見るものを惹きつけて止まない。


「貴女たちが王様が送ってくれた護衛係かしら?」


「はい、そうです」


「それにしても、この私、カーミラに夜に会いに来るなんてとんだお人好しよね。こういうのって、昼に会いに来ようとか思わないの?」


「えっ~と、昼間にあった方がよかったんですか?」


「全然!むしろ、敵認定して奇襲!先手必勝!で殺しにかかるところよ。日の光に当たれば、村娘以下だもの」


「死にはしないのですか?」


「はあ? なんで死ぬのよ」


「私もニンニクが苦手とか流水に流されるとか、聖水をかけるとか心臓に木の杭を打ち込んだら良いとか聞いたことはあるけど……」


「単なる好き嫌いにそいつが金づち!聖水は魔族共通の弱点。木の杭くらいで吸血鬼が死ぬわけないでしょう!どんな教育されているのよ!」


「ご、ごめんなさい!」


「別に謝らなくても良いわよ。こんなお馬鹿さんを送り込んでくるなんてあの王様もヤキが回ったのかしらねぇ。ちょいと不安だから、手合わせしてもらえる? 死なせはしないわ」


「この国には血の気の多い人しかいないのですか!?」


「面倒事は殴って解決。魔族も獣人も強い者が正義よ」


(もしかして、キッドさんってアレでも知性的なタイプ?)


 アイリスは唯一戦闘を仕掛けてこなかった彼女を思い出す。性格に癖はあっても、感性が人に近いこともあり、猫工房にいる間は獣人の常識と彼女の非常識さに気づかなかったのだ。


「先手必勝!シャドーダイブ!」


「消えた!?」


 ナナが姿を消したカーミラの姿を追おうと光学カメラから即座に熱検知モードに切り替える。仮にステルス系の魔法で光を捻じ曲げて光学迷彩を施したとしても、熱源までは遮断できない。だが――


「熱源も電磁波にも影響なし……まずい!」


 完全にカーミラの姿を見失ったナナは警戒をしつつ、その場から距離を取り、左腕から銃弾をばらまいていく。隙を与えないように走っている彼女の背後からにょきりとカーミラが姿を現し、真っ黒な巨大な爪でナナにつかみ取ろうとする。


「後ろ!? 一体どこから?」


「教えるわけないでしょ!シャドークロー!」


 爪と剣がぶつかり合い、火花を起こす。不意打ちありの接近戦でパワー負けを感じたカーミラは距離をとりなおし、両手を大きく広げる。


「ブラッディレイン!」


「W・Gガトリング!」


 無数の赤い血の弾と青い光の銃弾がぶつかり合い、流れ弾が背後の壁を破壊していく。血の結晶でできた剣を召喚したカーミラがまたもやナナの目の前から消える。


「あらゆるセンサーから完全に消えたとしても、攻撃する一瞬だけは姿を現さないといけない。ならば、センサーフル稼働!」


 ほんのわずかな揺らぎも見逃さないように集中する。そして、ほんのわずかなエーテルの揺らぎを感知したナナはその先に居るであろうカーミラに剣をぶつける。二人の剣撃によって互いにはじけ飛んだ後、ナナはアイリスの下に駆け寄った後、獲物を構えなおす。


「王様が派遣するだけの腕はあるようね」


「では、認めると?」


「ん? そうね……立ち聞きしている連中は貴女たちの仲間じゃなさそうだし、そっちを片付けるってのは?」


「気づいていましたか」


「貴女もでしょう? じゃないと、攻撃に巻き込まれるかもしれないのに主の傍に駆け寄るなんて行動しないもの」


「では」


「殲滅戦といきましょ」


 壊れた壁からぞろぞろとバンダナを巻いた獣人や人間たちが出てくる。ぼろぼろの装備ではなく、身なりの良い装備をしているところから、山賊や盗賊の類ではなさそうだ。


「この人たちが賞金稼ぎ?」


「へへへ、そうだぜ。吸血鬼カーミラ、悪逆騎士ナナ、てめえらの首を持っていけば一生遊んで暮らせるだけの金が入るってわけだ」


「私の賞金はデマだと獣王自らが宣言したのでは?」


「そんなの関係ねぇ。出すところに出せばもらえるんだからよぉ」


「はあ、火の粉はらっているだけなのにこの言われよう……いくら住みやすい土地とはいえ、嫌になるわ。そもそも夜の私に敵うとでも?」


「今日の俺たちは大枚はたいて手に入れた金のロザリオがある。これでお前の攻撃は一切通用しないぜ」


「そうなのですか?」


「退魔用の魔導具ね。名のある僧が力を込めて作ったものなら、私の闇魔法を撃ち消すかもしれないけど、これだけの数を量産できるとは到底思えないわ」


 下卑た笑いをしている賞金稼ぎたちと白けた顔をしたカーミラ、それに相手をもはや憐れんでいるかのように見ているナナ。彼らがぶつかり合えばどうなるか、戦闘に関する知識が乏しいアイリスでさえ一目瞭然であった。


「まあ、万が一ってのもあるから、こうするんだけどね。ブラッドショット」


 握り拳ほどの血の塊を近くの柱の向けて放つ。すると、攻撃を受けて倒れてきた柱に気を取られている賞金稼ぎの隙を見て、天井にも攻撃を放ち、彼らの頭上にがれきを降らせる。さすがに大多数は逃げ延びたが、どんくさい者は重症を負ったようだ。


「そんな装備で大丈夫だと思っていたの!? はっきり言って、失礼だわ!」


「マスター、どうします? 彼女だけでも問題ないように思えますが」


「私たちのやるべきことは彼女の護衛よ。ナナ、一緒に戦ってあげて」


「了解しました。これより援護に入ります」


 ぷんすか怒りながら、近くのがれきを剛速球で投げるカーミラと闇魔法どころか魔法でさえないエーテルの弾を冷めた目で放っていくナナ。次から次へと撃たれては倒れていく仲間を見た賞金稼ぎたちはたじろぐ。


「なんだこいつらは……ぐああああああ」


「ええい、退却だ!」


 指示を出したリーダー格と思わしき男性を守るように部下たちが立ちふさがり、ナナとカーミラに光の玉を放っていく。だが、Gシールドであっさりと防がれた後、カーミラの渾身のストレートが胸を貫くのであった。あっという間にゲームセットである。

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