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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第1章 機械人形と出会い

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EPISODE19 困惑

「間に合わなかったご様子で。下手人を捕らえておいたので、許していただきたく」


 目だし帽をかぶった襲撃犯たちをナナの前に投げつける。気を失っているようだが、目立った外傷はなく、命に別状はなさそうだ。


「アヤメ、なぜ貴女がここに?」


「三幹部がこの国に襲撃するという情報を聞いて参上した次第でありまする。しかし、見事な破壊の数々……いったい、帝国はどれほどの兵器を……」


「その……破壊個所の大半は私です」


 ナナは恥ずかしそうに手を上げる。それを聞いて先まで泣いていたアイリスも、そういえば襲撃犯よりも派手に壊していたなと思い、思わず苦笑する。


「なんと、まことでござるか!?」


「はい、恥ずかしながら。マスター、この者たちの顔に見覚えはありませんか?」


「見覚えって言われても……ってええええ!?」


「はい、城内ですれ違った程度の面識しかありませんが騎士団の人間です」


「なんとぉ!? 拙者、帝国の人間とばかり」


 目だし帽を脱がせた襲撃犯たちの正体に一同が騒然とする。本来、味方側である騎士団が仕えるべき人間の命を狙う。もし、これが彼らの意思で行われたのであれば、これはクーデターとしかいうほかないだろう。


「でも、どうして……」


「マリリンは幻覚作用のある光を放つことができました。もしかすると、彼らは幻覚によって操られていたのかもしれません。例えば、この黒づくめの服を鎧、私たちを賊だと誤認させたとか」


「マリリンが人を操るという話は聞いたことがないでござるが、一度、調べてみる必要がありそうでござるな」


 アヤメがそう言っていると、ドタバタと数多くの足音が聞こえる。襲撃犯の増援かとアヤメとナナが見構えるが、姫様と心配そうに声をかけていることから、おそらく騒ぎを駆け付けた騎士団員だろう。敵でないことにアイリスは安堵の息を漏らす。


「拙者がここにいると色々とややこしそうになりそうでござるな。満月の夜に会いましょう。これにてご免!」


 どろんとアヤメの姿が消えると同時に騎士たちが工房内に入ってくる。荒れ果てた惨状に、唖然とした様子が見て取れる。そんなとき、ナナは手のひらに隠した英数字が書かれた小さなメモをこっそりとアイリスに見せる。


(ナナ、これは?)


(襲撃犯の衣服に挟まれていました。この座標に来いという意味かと)


(満月になるのは数日後よね)


(ええ、とにかく今は……)


 仲間であるはずの騎士の死体をみて言葉を失っている者や、捕らえられた人に何があったのか聞こうとしているこの騎士団にこのメモのことは見せないでおこうと、ナナは心に決める。いつ、彼らが裏切るのか分からないのだから。




 夜が明け、ピスコ国王はまたもや頭を抱えていた。城内に敵が侵入されただけでも大ごとな上に、敵に操られていたとはいえ騎士の反乱があったのだ。市民たちに余計な混乱を招かんと即座にかん口令を敷き、昨晩の出来事を城の外に漏らさないようにした。


 だが、いつまでも情報を封じることはできず、事態は早急に解決しなければならなかった。ピスコ国王は城内の騎士を一堂に集め、彼らに命じる。


「サー・ナナの尽力により、最悪の事態だけは回避できた。そして、首謀者であるマリリンは傷を負っているとのこと。これ以上の悲劇を起こさぬためにも、奴を捕まえ、いや、最悪は殺しても構わん!」


「「「イエス、ユア・マジェスティ!」」」


 騎士たちが国王の号令を受け、マリリンの捜索へと駆け出していく。威勢よく出兵した彼らを見届けたナナは、傍らにいるアイリスを王宮内に設けられた臨時の部屋に連れていく。


(今の私に与えられた任務はマスターの護衛。マリリンが洗脳する可能性がある以上、裏切ることが無い駒を守りに置いておくのは間違っていません。ですが……)


 仮に騎士たちがマリリンを見つけることができても、操られて「異常なし」とうその報告を受ければ意味をなさくなる。つまり、守りにも攻めにもマリリンの光から逃れる機械の目が必要になる。


(一番手っ取り早いのはブリュンヒルデにドローンだけでも飛ばしてもらい、マリリンを見つけ次第、私がその場に……いえ、それだとマスターの守りが一時的に薄くなる。ならば、一層のこと……しかし、それは……)


 あーだこーだと思考を巡らせているナナに対し、アイリスが声をかける。


「私がここにいるから、マリリンを探しに行けない。アヤメさんに会うのも難しい。そうよね、ナナ」


「……ええ、そうです」


「だったら、私も一緒に行けば……」


「一緒に行けば、マスターも洗脳される可能性があります。そうなれば――」


「大丈夫。私がなんとかするわ」


「どうやって?」とナナが問い尋ねると、アイリスは愛用の分析用ゴーグルを見せる。だが、万能に使える分析用ゴーグルとはいえ、洗脳を解くような機能をもっていないはずだと思い、ナナはアイリスの次の言葉を静かに待つ。


「もともとはただのゴーグルに、魔石を利用して分析機能を付与したのがこれよ。ならば、洗脳光線を遮断する機能を付与すれば――」


「機械の目と同じ。それにマリリンは3色の光を放っていたことから、特定の光の波長だけを遮断すれば」


「幻覚による洗脳ができない!方向性が見えたなら、さっそく工房に行くわよ。机やいすは吹っ飛んだけど、それ以外は無事だから道具を作るのに問題ないわ」


「あとは時間ですね。満月の夜までに間に合うかどうか」


「私は魔法は落ちこぼれだけど、道具作りには誰も負けないんだから。手を貸してくれるわよね、ナナ」


「イエス、ユア・マジェスティ」


 ナナとアイリスは王宮から抜け出し、今では廃墟のように床や壁に穴が開いている廊下を通り抜けて、工房にたどり着く。分析用ゴーグルが壊れたとき用なのか、同じようなデザインのゴーグルを2つ持ってきて、気合いを入れてそれらを改造していく。


(私が殺してしまったあの人のためにも、マリリンを捕まえないと)


 脳裏に浮かぶは大きく目を見開きながら、落ちていく男性の姿。もう二度とあのときのような思いを誰にも味わせたくないと、心に決めながらナナに道具や用意する魔石の運搬を指示していく。

 しばらくすると、指示をしなくてもナナが欲しい物を手渡し、急ピッチで作業をしていく二人は主従よりかは相棒とよべる程の仲であった。

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