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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第1章 機械人形と出会い

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EPISODE14 決闘

「話は聞かせてもらったわ!」


「ちょっと待って、ブリュンヒルデさん!」


 バンと勢いよく会議室の扉を開けたブリュンヒルデ。たった一言二言しか聞いていないにもかかわらず、ピスコはややこしい事態になると悟り、死んだような目をする。


「誰かと思ったら落ちこぼれと物好きな騎士じゃないか。ここはお前たちの来る場所ではない。今なら見逃してやるから、出ていきなさい」


「その前にやることがあるの」


 ブリュンヒルデがずけずけとアルフレッドの目の前に立つ。女性としては長身のナナの身体と言えど、成人男性であるアルフレッドよりかは低い。見下すような視線を送るアルフレッドの顔を睨めつける。


「おお、怖い怖い。せっかくの美しい顔がだいな…」


「とりあえず……歯ぁ食いしばれぇ!!」


「ぶぎゃぁあ!?」


 顔に青い痣ができるほど、思いきり殴られたアルフレッドは机にたたきつけられる。謀反かと思われたのか周りの騎士たちが剣や杖を構える。


「サー・ナナ、これはどういうことですかな?」


「今のアタシはナナじゃないわ。ハーピィたちの女神、ブリュンヒルデ。色々と訳あって、セ……ナナの身体を借りているの」


「つまり、神降ろしの類であるとそう申すつもりか」


「そういうこと。アンタたちも聞きなさい。取引材料が足りないとかでもめるならわかるわ。だけどね、魔物だの人間だの国だの巣だの、そんなくだらないことでもめて、挙句の果てには侵攻するだのしないだのとブーブーと豚みたいに喚いているようだから、わざわざこっちまで来たってわけよ」


「我らを侮辱するつもりか!」


「ち、違います。ブリュンヒルデさんは先ほどここで議論をしていた決闘を受け入れ、早期の問題の解決を図りたいと申しております」


「決闘するまでもない。処刑だ、今すぐこいつらを処刑しろ!」


「それは許されんぞ」


「父上!なぜです。こいつらは明確な反逆行為を――」


「決闘の案はお前から提案したものだ。ならば、最後まで責任を持つべきだ。たとえ、それが不本意な結果になったとしてもな」


「神降ろしが真か嘘かはともかく、噂に聞く彼女のお手並みは見たいところですな」


「さよう。早期の交流を図れるなら、我が領土も恩恵にあずかれるというもの。異議はありません」


「うむ。よいな、アルフレッド」


「ぐっ……この屈辱、決闘で晴らさせてもらうぞ!ついてこい!」


(やれやれ。アルフレッドは素質は良いが、野心が過ぎるのが惜しい。この決闘で自分を見つめなおしてくれるといいのだが……)


 そんな親御心を知らず、アルフレッドは怒りながらブリュンヒルデを騎士団の訓練場へと連れていく。



 訓練中の騎士団員に命じ、野外の訓練場を開けさせる。ただ広い平野に一般人が立ち入らないように壁で囲まれたスペース内でブリュンヒルデとアルフレッドが対峙する。ナナの身体を借りているブリュンヒルデは空島の時と同様にフライトユニットを装備しているが、背中には突撃槍がマウントされ、腰には拳銃のホルスター、両手には長身の銃が装備されている。


「こちらから行かせてもらう。サモン・ゴーレム!」


 アルフレッドが魔法を唱えると土の中から、十メートル弱の石くれの人型のゴーレムが現れる。それも1体だけでなく数体同時だ。


「こっちは1人なのに、数で攻めるつもり?」


「そうだとも。戦いは数で勝敗が決まる。サモン・サンダーバード、サモン・ガーゴイル!」


 雷を纏った鳥と小さな悪魔の群れが上空に現れる。先ほどのゴーレムと合わせれば、20は超え、一個小隊と言って差し支えない数となっている。


「個人で持っていい数じゃないわよ。準備はできたみたいだし、攻めさせてもらいましょうか!」


 ブリュンヒルデが飛翔し、制空権を握ろうと目の前に迫ってくる雷鳥と悪魔たちに向かって樹弾を放っていく。2丁のライフルから放たれた銃弾は直撃した召喚獣だけでなく、後列にいた召喚獣でさえ貫いていく。


 距離をとって射撃攻撃してくる相手に対し、アルフレッドは追加の召喚獣を繰り出すが、制空権どころか攻撃をまともに当てることさえもできずにいた。


「なぜ、こちらの攻撃が通らん!」


「何年戦っていると思うわけ!戦いの年季が違うのよ。相手の射程を見極めれば、この通り」


 ピストルサイズの銃に切り替えたブリュンヒルデは速度を緩め、追い迫るサンダーバードの射程にわざと入った時、ようやく攻撃に移れると思ったのか攻撃態勢に入ろうとする。

 だが、そのわずかな制止時間を狙われ、振り返ることすらしない銃撃によって撃ちぬかれてしまい、制御を失われた雷撃は明後日の方向に放たれてしまう。

 もはや、制空権はブリュンヒルデが握ったと差支えの無い状況だ。


「あとは馬鹿な考えをさせないためにも完膚なきまでに叩きのめすだけね」


 これまでの戦闘でたった一人に数十倍の戦力をぶつけても無意味だと地上で青ざめているタカ派の貴族たちに分からせたブリュンヒルデは、射撃戦から背中にマウントされた突撃槍に装備を切り替えていく。


「この一撃で決めてあげるわ。Gシールドの代用によるフィールドを形成。最大速度による突撃……ストライク・ノヴァ!」


 青白いフィールドに包まれたブリュンヒルデが猛スピードで槍を地上のゴーレムに守られているアルフレッドに向かっていく。それを視認したアルフレッドがゴーレムを防壁にするが、豆腐のように突き破られていく。

 そして、アルフレッドの目の前に降り立つブリュンヒルデ。魔法を撃つどころか剣を抜く暇さえ与えていくれないだろうと言わんばかりのプレッシャーを彼に与える。ガタガタと震えだす彼を普段の彼がみれば、笑いものにしていただろう。


「ひいいいいいいい」


「セブンスセブンもアイリスも良くも悪くも良い子ちゃんだから素直に従うけど、アタシはね、はっきりものをいうタイプなの。だからもうひとつ言わせてもらうわ」


「な、なにを……?」


「魔法が使えないくらいで落ちこぼれ? だったら魔法が無かった頃の人間は全員落ちこぼれだっていうの!?」


「そ、それは……」


「ふざけるんじゃないわよ!魔法もアタシたちを産み出した科学も人の積み重ね、研鑽によるもの。アンタのやっていることは、過去の偉人をあざ笑っているようなもの。博士たちを侮辱するような奴はアタシが許さない」


 アルフレッドの胸倉をつかみ、激昂しているブリュンヒルデはさらに言葉を続ける。


「ここにいる連中も聞きなさい。空島を攻めようとした人間の顔は全員覚えているわ。これから先、食事中だろうと、トイレ中だろうと、就寝中だろうと監視してあげる。もし、空島を攻めようと思うなら、こうなるわ」


 空中戦の最中、密かに飛ばしておいた小型の攻撃用ドローンから光線が放たれ、滞空していたガーゴイルが撃ちぬかれる。遠くにいる議員からは一人でに爆発したと思ったに違いない。その光景を見た心当たりのある銀は身を震わせる。


「そちらから攻撃しない限り手を出すつもりはないし、人間同士の戦いに加担するつもりはないから。わかった、返事は……? 答えは1つだけよ」


「わ、わかった……だから離してくれ」


 アルフレッドを突き飛ばし、ブリュンヒルデは役目を終えたかのように訓練場を去っていく。そのあとをアイリスが追い、残されたのはざわめく議員たちと歯ぎしりするアルフレッドだけであった。


(覚えていろ……必ず復讐してやる。ブリュンヒルデ、ナナ、落ちこぼれ(アイリス))




 後日、アイリス、ナナ、ブリュンヒルデの三人がケーキや豪勢な食事が乗っている机を取り囲み、クラッカーを鳴らす。


「というわけで、本日から空島の外交官を務めることになりました。脱・穀潰しを記念して、パーッとやるわよ!」


「妥当よね。あれだけ喧嘩売ったら、それなりに身分の高いものを大使にしないと釣り合わないわ」


「そうなると、仲が良好であるマスターが選ばれるのは当然の帰結です」


「えへへ……正しく言うなら、人外担当なんだけどね。ゆくゆくは北にいる獣人や魔族の国の外交を任せるみたい」


「モグモグ……それならアタシ、獣人の知り合いがいるから紹介するわ」


「本当ですか!」


「外貨稼ぎの商売で獣人と触れ合う機会が多いの。理性的なアタシと違って血の気がある連中が多いから、セブンスセブンを一緒に連れていくことも条件よ」


(えっ? 理性? 本能の間違いじゃあ……)


 先日の一件以来、ブリュンヒルデを見る目が変わってしまったアイリス。ハーピィや獣人と仲良くなれたのも、もしかすると彼女の性格が彼らと近いためなのかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは楽しい決闘でした。 召喚者が攻撃して召喚者の調整を披露する機会が与えられれば幸いですが、教義は最初に撃ち、一度撃ち、敵からの反撃なしに強制降伏することだと思います。 ああ、アイデアを…
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