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落ちこぼれ王女は封印されし機械人形と共に救国する  作者: ゼクスユイ
第1章 機械人形と出会い

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EPISODE12 空

 部屋に荷物を置いてもらったアイリスは白いもこもこのベッドに腰掛ける。適度な弾力性のあるベッドにこのまま倒れこんだから、すぐに睡魔に誘われるのではないかと思うほどだ。


「日はまだ高いし、このあたりを探検しましょう。空に浮かぶ島なんて誰も来たことないもの」


「良いですね。私も彼女がハーピィをどのように統治してきたのか気になります」


「図書館とかあれば良いわね。私は虫以外の食べ物が無いか気になるわ。でないと、三食虫料理になっちゃう」


「ハーピィの生態が鳥に近いなら、魚料理もあるのでは?」


「そうよね。それじゃあ、行ってみましょう!」


 ウキウキした様子でアイリスたちは宮殿を後にする。散歩がてらに島の外周をぐるりと一周してみたが、他の島に行くには自力で飛ぶ以外方法はないようだ。

 宮殿前の市場では巨大な大木をくりぬいた建物に、見たことの無い食べ物、もとい巨大な虫と果実が売られており、ハーピィたちがそれぞれの獲物やどうやって手に入れたか分からない紙幣と交換している。



「視界に入っている範囲では、物々交換をしているハーピィの方が多いです」


「でも、お金でも買えるみたい。虫は買わないけどね」


「見た感じではリンゴやブドウに似た果物も売られています。割高に見える値段ですが、これが相場なのでしょうか?」


「私も見たことが無い果実だから相場はわからないけど、どんなに高くても虫よりかはマシよ。お姉さん、これとこれ、1つずつください」


 果物をしゃくりとかじりながら、周りの店を見て回る。すると、何かの肉を吊り下げた精肉店が見つかる。虫ではないまともな食事にありつけるのではないかと思ったアイリスは買うことに決める。


「お肉ゲット!宮殿に戻ったら焼いてもらいましょう」


「ところで何の肉なのでしょうか? プレートには『ニク』としか書かれておりませんが」


「こんなにきれいなお肉よ。牛と豚とかじゃないの? お姉さん、これ、何の肉?」


「今日は確か……ああ、ゲロンガだったね」


「聞いたことがありません。マスターは?」


「私も。どこで捕れるんだろう」


「はははっー、そりゃあ、大森林の中さ。あんたら人間には過酷かもしれないが、うちらは空から森の奥まで飛べるんでねぇ。珍しい魔物や植物は取り放題ってわけよ。食い物や薬にもならないやつは人間に売りさばいてる」


「それでお金を手に入れているわけね。たまに流れているレアアイテムってもしかすると貴女たちが流したものかも」


「だとしたらお買い上げありがとうございますってな。まあ、うちは魔物を狩るのが専門だし、獣人も時折流すみてぇけどな」


「獣人というのは?」


「北部にいる人間とは異なる獣の姿をした人たちのことよ。身体能力が高いから、大森林の中の遺跡を発掘するトレジャーハンターがいるって聞いたわ。もしかすると巨大な魔石とかも……」


「トレジャーハンターといってもスカることが多いらしいし、大体がハンター業だけどな」


「物語で出てくる一攫千金は夢幻と」


「現実は甘くないわねぇ。長話してすみません」


「別にいいってことよ。こっちも久しぶりに人間と話せたからな」


 精肉店を後にし、他の店も見て回ることにする。衣服の店ではハーピィが着るような背中に羽用の穴が開いているきわどい服がずらりと並んでいる。これらの服を地上で着るわけにもいかず、アイリスは珍しく何も買わずにその店を去る。


「それにしても、本は売られてないわね。どの店も食べ物か衣服くらいしかないわ」


「ええ。もしかすると、書物にする習慣が無いのかもしれません。ブリュンヒルデが起きるまでは原始的な生活を送っていたようですから」


「だとすると、この島を発展させた彼女の手腕は凄いわね。私も見習わないと」


「いつか女王になりますからね」


「ないわよ。次の王はお兄様で決まり。でも、見習うところは見習わないとね」


「そうですね。では、少し早いですが宮殿にでも帰って夕しょ……」


 2人が帰ろうとしたとき、サイレンの音が鳴り響き、ハーピィたちが急ぎながら店や自宅の扉を閉めて、建物に閉じこもる。何があったのかと困惑している二人にブリュンヒルデが空から飛来する。


「ワオ、ちょうど良いところに居たわ」


「何があったのですか?」


「ワイバーンの群れがこっちに向かってきたの」


「もしかしてスタンピード!?」


「ワイバーンは竜族の端くれ。食物連鎖の頂点に近い種よ。よほどの脅威が現れない限り大繁殖なんてしないんだけど……」


「原因はあとで考えましょう。現時刻をもってブリュンヒルデ、貴女の指揮下に入ります」


「了解、セブンスセブン。アタシは避難誘導とその指揮するから、セブンスセブンは迎撃に当たって」


「すみませんが、ヴァルキリーアーマーをロストしています」


「まったく。そういうことは早く言いなさいな。アタシのシルエットアームズ貸してあげるから。フライトユニットは共通規格でしょ。武器はいる?」


「武装は問題ありません。飛べるだけで対応は可能かと」


「座標位置とパスコードを送るわ」


「了解。座標位置、確認。パスコード……承認完了。フライトユニット展開」


 ブリュンヒルデの白い羽がナナに移り、青い粒子をまき散らしながら夕暮れの空へと飛び去っていく。あっという間に豆粒のように小さくなり、その姿を視認できなくなったナナを心配そうに見つめるアイリス。


「心配する必要はないわよ」


「でも……」


「貴女の部屋にドローンからの映像を映しておくわ。コーラ片手にポップコーンを食べながら鑑賞でもしておきなさい」


「なんですか、それ!?」


「博士から聞いた昔の時代にあったものよ。今はどっちもないけどね!」


 ブリュンヒルデが連れてきたハーピィたちに指示を出して、どこかへと行ってしまう。一人残されたアイリスは自室へと戻り、現実と見間違うほどの鮮明な映像に驚きながらもそれを食い入るように見る。




 迎撃に出たハーピィたちの群れを抜け出し、ナナは一人最前線にたどり着く。遠くから見れば黒い雲のように見えるほどの数のワイバーン群れは炎のつぶてを一斉に放ち、ナナを焼き尽くさんとする。だが、ナナはそれらをひらりひらりとかわし急接近する。


「その程度の攻撃当たるとでも!Gブレード!」


 ワイバーンの喉元に青い光刃を突き刺していく。硬い鱗に覆われているせいか、一瞬だけ抵抗を感じるが、押し返すほどの力はない。あっけなく貫通したワイバーンから、刃を引き抜き、墜落していく様子を見ずに次のワイバーンを見据える。


「フライユニットの出力上昇。ウィングカッター!」


 青白く発光した羽をワイバーンに向けてすれ違いざまにぶつけ、その翼を切り落としていく。だが、ワイバーンも負けじとナナにその巨大な質量を武器に、急下降してぶつかってこようとする。

 フライトユニットを緊急パージし、その攻撃をかわしたナナは旋回しきれずにいるワイバーンの翼に向けて銃弾を放ち、撃ち落していく。


「アーマーがあれば、ハーピィたちが来るまでに粗方の掃討も可能ですが……ここは無理せず確実に仕留めに行きます」


 フライトユニットを遠隔操作させ、空中換装させたナナは再度高度を上昇させ、ワイバーンの群れへと突っ込んで行く。




 そんな変幻自在に空中を駆け巡るナナの動きをモニターでチェックしているアイリスはまじまじとその光景を見ていた。


(ナナの質量をものともしないフライトユニットの推力は凄い。だけど、推力重量比で比べるなら、わたしの『つばさくん』も負けていないと思う。だとしたらなんで、あんな自在に空中を飛び回れるの?)


 今まさに自分がぶち当たっている壁を乗り越えようと、ナナの一挙手一投足、フライトユニットの細かな動きをじっくりと観察する。魔石の出力だけの問題ではない、他に見落としている原因があると直感的に感じたからだ。

 しまいにはナナの動きをマネするまでに至り、傍から見れば怪しげな踊りをしているようにしか見えない。


(そうよ。重心移動と羽の動き。動きの向きを変えるのにスラスターの向きを変えようとしたけど、そうじゃない。自転車だって曲がるときは重心移動するもの。こんな簡単なことに気が付けなかったなんて!ありがとう、ナナ!)


 今まで暗雲が立ち込めていた『つばさくん』の開発に一筋の光明が見えたアイリスは画面内で最後の一匹を倒したナナを眺めていた。




「宴だぁ~!」


「アタイの酒、全部もってけドロボウ!」


 あれだけのワイバーンを相手に一人の死者を出さずに戦闘を終えたハーピィたちは、宮殿の広場でワイワイとどんちゃん騒ぎを起こしていた。すでにべろべろに酔っぱらっている者もいる始末だ。


「そりゃあもう、大きな口をあけられたから『ああ、ここで死ぬんだな』って思ったら、目の前のワイバーンがうめき声をあげて落ちるからビックリよ」


「ちぎっては投げ、ちぎっては投げの大活躍ってな。えっ~と、確か名は……」


「ナナです。あとちぎってもいませんし、投げてもいません」


「細かいこと気にするなって。ほら、飲め飲め」


 酔っぱらいのハーピィ二人に絡まれているナナをしり目にワインの水割りをちびちびと飲みつつ、ゲロンガの肉を頬張っていた。鶏肉のようなパサパサ感はなく、どちらかというと牛肉に近い触感だ。目隠しして食べさせられたら、どっちが牛か迷うかもしれないと思うほどに。


「ウチの肉食ってるか」


「あっ、精肉店のお姉さん!」


「肉食え、肉。虫も悪くねぇが、あんたの貧相な身体には肉だ」


「そんなに貧相かな……ところで、お姉さんの手に持っているのはなんですか?」


「ああ、これかい? ついさっき仕留めたゲロンガだよ」


 精肉店の店員がもっていた袋から、一つ目のタコのような魔物を取り出す。触手1本1本がごつく、ブツ切りにすれば確かに極厚のステーキ肉のような形になるだろう。あまりにも気持ち悪い外見に見なければよかったとアイリスは少し後悔した。


 精肉店の店員と入れ違いに今度はブリュンヒルデがやってくる。ナナが帰投した際には、すすけていた羽も今やピカピカに磨かれている。この宴の最中、一度も姿を見せてなかったことから、きれいになるまで手入れしていたのだろう。


「ちょっと人気のないところまで行くわよ」


「えっ、ちょっと……!?」


 アイリスの意に介さず、その手を引っ張って宮殿の屋根の上まで登っていく。ブリュンヒルデが空を眺めるのにつられて、アイリスが天を仰ぐと満面の星空が広がっていた。


「空っていいわ。飛んでいるだけで嫌なこと忘れるもの」


「私もいつかそんな風に空を飛べたらなぁ……」


「飛べるわよ。アタシたちがいた時代だと人はこの空どころか宇宙や月、さらにはその先まで行ったいったのよ」


「ええ!月ってあの!?」


 アイリスが夜空に浮かぶ大きな黄色い満月を指さす。魔法で空を飛べるとはいえ、雲の上ましてや月まで行くことはできないからだ。はるか上空に浮かぶ月を見て、アイリスはキラキラとした目で見つめる。


「と言ってもアタシは宇宙に上がったことないんだけどね。セブンスセブンは作戦上の任務で一回だけあったみたいよ」


「ええ!そんな話聞いてません!」


「やっぱり。セブンスセブンって昔から自分のことを話したがらないのよね。今日は私が知っている限りのセブンスセブンのこといっぱい話すわ」


「はい。お願いします」


 ブリュンヒルデがナナについて語りだしていく。それを聴きながら、夜空に浮かぶ星々を見つめる。


(私も空を飛んで、そして、いつか月のある宇宙(そら)まで――)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 生き残ったテクノロジーから学んだことを感謝します。 何ができるかを夢見るのは良いことかもしれませんが、それがすでに行われていて、同じことができることを知っている方が良いと思います
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