草食系中年
「ふむ、美味しい!」
ジェラールはテーブルについて野菜を次々に口に運ぶ。
小気味の良い食感が彼の頭蓋骨を刺激して止まないのだ。
どれだけ食べても低カロリー。
食事の量を減らす事なく減量ができる。
いつでも満腹感を味わう事が出来る。
「野菜とはまさに魔法のような食材だな!」
元々、野菜が好きなジェラールは子供のように大口を開けて野菜を食べ続けた。
それから数日後、
「やった……やったぞ!」
82kgーー野菜生活の結果を体重計の針は自信満々に指し示していた。
人生の最高潮である87kgから、わずか数日でー5kg。
なかなかの結果と言えた。
だが、ジェラールはまだまだ満足しない。
彼のお腹にはまだたっぷりと柔らかなお肉が詰まっているのだ。
この忌まわしいお肉と決別するその日まで、ひたすらに野菜を食べ続けると彼は強く心に誓った。
さらに数日後、
「うむ……?」
体重計の針が指し示す数値を凝視して、ジェラールは小首を傾げていた。
ーー82.5kg
前回と変わっていない。むしろ若干、増えてしまっている。
ジェラールとしてはさらに2、3kgの減量に成功しているはずがまさかの結果である。
ジェラールの表情に焦りの色が浮かぶ。
「まっ……まぁ……こんな時もあるか……」
この時、ジェラールはそう口にして何となく自身を誤魔化すようにした。
それほど簡単に体重は落ちない。きっと身体の中で何らかの準備が行われているんだ。次、また数日後にでも測ってみれば望む結果になっている筈だと、そう自分に言い聞かせた。
ジェラールは今日もたくさんのお野菜を食べる。
満腹感を得て、手を止めるその瞬間まで。
すでに意外な落とし穴に全身すっぽりと落ちてしまっている事など気付きもせずに……。