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悶える中年

「ぐぐっ……ぐおっ、痛ーー」


 明くる日、ジェラールはベッドの上で悶え苦しんだ。


 それは何かしらの病魔に身体を蝕まれたからではない。


 もっと身近で、それでいて懐かしいもの。いわゆる筋肉痛という奴だ。


 昨日、あれほど筋肉を酷使したのでその対価とも言うべき筋肉痛に襲われているのだ。


 少しやり過ぎてしまったか?


 そんな事を思いながら、悲鳴を上げる筋肉に鞭を打って朝の支度を開始する。


 そそくさとテーブルへついて朝食を摂る。


 昨日動き回ったせいか、すごくお腹が空いていた。


 ジェラールはずらりと並べられた料理からふと視線をあげると、娘と目があった。


 彼の娘は今日も変わらずほっそりとしていて、小さく笑みを浮かべている。


 彼は思う。


 自分の娘ながらとても可愛らしい。まさに自慢の娘だと。


 しかし、そんな彼女ももうじき結婚をする。その時、自分は笑顔で彼女を見送ってやれるだろうか? 今から心配でならない。


 だが、それよりも前に心配するべき事が自分にはある。


 そうーー娘の晴れ舞台にこのような醜い姿で立つわけにはいかない。


 ジェラールは絶対に痩せてやると、さらに固く決心をする。







 それから約一週間が過ぎた。


「ぬぬぬぅ……?」


 受け入れがたい事実を針が指し示していた。


「87kg……」


 増えている。


 体重が、増えているのだ。


 体重を減らす為にあれほど必死に動き回ったのに、あろう事か体重が増えてしまっているのだ。


 何だか裏切られたような、そんな気分だった。


 あれほど辛い思いをして頑張ったのに、なぜ?


 あれほど大量の汗を流したのに、なぜ?


 現に今も筋肉は悲鳴をあげ続けているのに、なぜ?


 私の身体に何が起きたのだ?


 私の身体は変になってしまったのか?


 受け入れがたい現実と理解できない現象。謎が増え続ける中、ジェラールの胸には言い知れぬ不安がよぎった。










「ふむ……なんだか体調が悪い」


 例の言い訳ではないが、ジェラールは本当に体調が優れないようである。


 ジェラールは重だるい身体を引きずり、額に手を当てる。


「少し熱っぽいか……」


 身体の火照りと、若干の肌寒さを感じていた。


 どうやら風邪を引いてしまったらしい。


 これでは運動は無理だ。体調を崩したのは残念だが、しかしその反面少し嬉しくもあった。


 それは、望んだ結果が出ないのに、わざわざ辛い思いをするのは嫌だからだ。


 きちんと結果が出れば更なる意欲も湧くが、結果が出ずしかも体調を崩してしまったとなると、いったい自分が何をしているのかさっぱりである。


 まさに踏んだり蹴ったりだ。


 再びジェラールの生活から運動というものが遠ざかっていく。


 休養をとって体調が回復したのら、また動き出してくれればよいのだが……。


 雲行きは怪しくなる一方である。









※急にやる気を出して動き出すと、その反動で免疫が落ちて風邪引いちゃいますよね……。頑張れジェラール!














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