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忘れていた物

 

「あらら〜若いっていいわね」

「ぐっ……」


 玄関で目が合って母さんの一言。

 親父にメイド姿見られてもな〜んとも思わない。だけど母さんに見られたのはなんか複雑な気持ち……。

 少しえっちなメイド姿が恥ずかしくてずっと横向いていた。ふうっレディのたしなみと言うよりは、羞恥心に打ち勝つ修行にしか見えなかった。


「光ちゃんって大たん……」

「ちょっ!」


 あたしの横にしゃがんむ凛花ちゃんに、ガッツリ開いた胸元をガン見された。


「見ちゃダメッ!」


 パンッ!


「ひゃあっ!」


 胸を腕で隠すし声をあげると、鬼メイド長からの鞭が容赦なく飛んでくる。酷い胸隠しただけなのに……。んー鬼が言うにはメイドたるもの何時もシャンとしなさいだそうだ。

 キビシー!


「光ちゃんメイドさんとこんなことしてんだ……」


 頬を赤く染めた凛花ちゃんが言った。ちょっと妙な誤解を招く言い方止めて。母さんの視線がビンビンに感じるから。


「光輝ちゃんそう言う遊び、あんまり賛成出来ないわねぇ」

「えっちょっと!いや、お母様これは、乙女の修行の一貫ですから気にしないでホホ……」

「光輝辛い時はいつでも言ってね」

「……」


 母さんはあたしのことを哀れむような目で見てから台所に向かった。違うんだよ母さん。はあ〜初っ端から心が折れる修行です。


「光輝彼女に部屋を案内してくれ」


 親父が唐突に言った。そうか、凛花ちゃんも家に住むなら部屋が必要か。


「凛花ちゃんが使う部屋はどこ?」


 ピシッ!


「きゃんっ!」

「言葉使い!」


 ひいっぶっきらぼうな聞き方が悪かったみたいでお尻に鞭ペチンされた。そしてお尻をさすっていると親父がとことこ回り込んで顔を覗きこんだ。


「光輝楽しそうだな?」


 むかっ!好きで体罰受けてんじゃない。んっなんなら親父に代わって欲しいよ。


「イタタ、これは遊びじゃないのよ親父様」

「…………」


 タタタタッ……


 あっ親父が逃げた。


「参ったなー凛花ちゃんが使う部屋聞いてないよ」


 困っていると後ろから凛花ちゃんが袖を引っ張った。


「私、光ちゃんの部屋で寝る」

「…………えっ!ちょっ!」


 凛花ちゃんは背を向けて階段を登って行った。ちょっと待ってどうして二階にあたしの部屋があると知ってる?

 誰が教えたか置いといて、とにかく凛花ちゃんが部屋に入るのを阻止しなきゃ!

 今は女だけど、男なら見られちゃ困るモノがあるんだ。あたしは急いで階段を登ったが時すでに遅し、凛花ちゃんが部屋に入るのが見えた。後ろから鬼メイド長の叫び声が聞こえたけど今はコッチが優先よ。


「はぁっはぁっ凛花ちゃん勝手に部屋に入っちゃダメだよ」


 部屋に入ると凛花ちゃんがニコニコしながらあたしの顔を見ていた。


「どうしたの光ちゃんそんなに焦って?」

「……いや」


 凛花ちゃんはなにもしていなかった。当たり前だ。部屋に入ったばかりなんだから、なにも出来ないじゃないか。それをあたしは焦る姿を見せたから余計怪しく見えたよね……。


「光ちゃんそんなに焦ってなにか隠してるの?」

「…………い、や、別に……」


 尋問されて額に汗がタラタラ、そしていたたまれなくなったあたしは視線をそらした。凛花ちゃんは後ろに手を組んで焦るあたしを見て楽しんでる様子。

 可愛いけど鬼がここにもいたか……。


「ふ〜ん、光ちゃんこう言う女の(ひと)好きなんだ〜」

「うわっ!」


 凛花ちゃんは後ろに回した右手を差し出す。その手には黒髪ロングヘアの水着のお姉さんが寝そべった表紙のえっちな本。


「ごめんなさい。一時間前に光ちゃんの家に着いて部屋案内されたからケホッ、つい部屋物色しました」

「なんてこと、ダメだよ勝手に人の部屋漁っちゃ……」

「ごめんなさいつい気になって、でも男の子なんだから少しはえっちな本があっても全然おかしくないと思うの」

「んーそうかぁ理解してくれて助かったわ」


 凛花ちゃんはえっちなグラビア本を返してくれた。はあ〜危なかった。もっと過激な本買ってたらどうなってたことか。

 んっでも凛花ちゃん腰の後ろに左手を隠している。まだ、なんか見つけた? 

 いやいや、これ以上やばい物はないぞ。多分……。


「男の時ね光ちゃんにこんな趣味があったんですね」


 笑顔の凛花ちゃんが左手を差し出した。


「えっこれはっ!」


 手にしてたのは黒色レザー製のニーハイヒールブーツだった。


「このブーツが入った箱が机の下に置かれていたから気になって中身みちゃったのケホッ」

「駄目だよ凛花ちゃん勝手に開けちゃ」

「うんっ悪いと思ってる。だけどこのブーツはどうしたの?」

「んっ…………じ、自分で買ったんだ……よ」


 歯切れの悪い言い訳。

 このブーツは忘れもしない。あたしが性転換してから幼なじみの女の子れみるに買ってもらったブーツだ。ううん、一緒に買ったから嘘は言ってない。


「ふ〜ん、れみるってだれ?」

「えっなんでっ!?」


 ちょっと凛花ちゃん超能力者?


「靴箱にこんなカードが入っていたよ」


 凛花ちゃんが差し出したのはメッセージカードで自筆でこんなことが書かれていた。


(光輝くんとのショッピングデート楽しかったよ♡ 立派な乙女になったら買ってあげたブーツ履いてね♡ byれみるより♡)


「…………」


 ハートマーク三つも書くなよ。


 迂闊(うかつ)だった。れみるに買ってもらったあとすぐに中身を確認していればう〜ん。

 ああっ買った物開封しないでそのままにするあたしの癖がネックになるとはな〜。


「光ちゃんれみるって誰?」

「……ただの幼なじみ、ひゃあっ!」


 険悪な表情で口を尖らした凛花ちゃんに人差し指で胸ツンされた。あちゃあ、これは言い逃れ出来ないな〜全くの修羅場だ。


「昔から付き合いがある幼なじみの子だよ」

「つ、光ちゃんその子と付き合ってるの!」

「ちちっ違うよっ交流があるだけで恋人でもなんでもないよ」

「…………ホント?」

「うん……」

「許す」


 ふい〜誤解を解くことが出来た。んでも凛花ちゃんお目々ふくろうみたいにまん丸だよ。まだ驚いてるのかなぁ。

 はあ〜初っ端から疲れた。


「凛花ちゃんさぁ本当にあたしの部屋でいいの?」

「うんっだっていつも一緒に寝てるでしょ?」

「そうだね……。んじゃあ、とりあえず荷物置いて夕飯食べましょう」

「うんっ!」


 おっ可愛い返事。凛花ちゃん機嫌を取り戻したみたいだ。

 やれやれ下に行くか、あたしが振り返るとそこに鬼の形相のメイド長が鞭を握りながら睨んでいた。


「…………」

「はしたないペナルティー多々ありましたね。お尻を出しなさい。罰としてお尻ペンペンですわ」

「ひゃあ〜〜!」


 そのあと十発鞭でお尻叩かれた。うわ〜もうっお尻が限界だ。地獄だ地獄。でも終わり?

 いや、これからお茶目で可愛い親父のトラップが待ち構える夕飯だ。そうまだまだ試練は続く予感がするんだ……。

 あたしはお尻をさすりながら部屋をあとにした。


この小説で作者が一番イキイキする瞬間は

輩共のシーンです。色々名前にネタを仕込んでます。


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