クイーン様に会いに行く
寮に戻ったら凛花ちゃんが荷物を片付けていた。
あたしに気がついた彼女は、急いで鞄に荷物を入れたから止めないと思った。
「ちょっと待って凛花ちゃん!」
「光ちゃん……私」
凛花ちゃんが部屋から出ようとしたから手首を掴んで止めた。
「離してっ!」
「逃げちゃ駄目でしょ凛花ちゃん!」
「嫌っどうせ私は退学なのよっだから出るのっ!」
凛花ちゃんは首を横に激しく振って叫んだ。
分かるよ。混乱してなにしていいのか分からないんだね。
「ちょっと落ちついて凛花ちゃん。今出ても帰る場所なんかあるの?」
「……」
凛花ちゃんが止まった。そして震えだしたかと思うと、握るあたしの手の甲に彼女の涙がポロポロ落ちた。
彼女はひざまずきあたしの握る手に頬を寄せた。
「帰る場所なんてない……」
「……フゥッあるでしょう凛花ちゃんの帰る場所が」
「えっ……?」
ハッとして顔をあげた。凛花ちゃんの頬の下に二本の涙川の跡が出来ていた。
あたしが側にいるだろ。絶対に見捨てない。
「うん。帰る場所はココと」
あたしは寮の床に指差して。
「んーそれと寮が駄目だったらあたしん家に住みなよ」
「えっでも悪いよ」
「駄目よ。住む場所ない女の子ほっとくことなんて出来ないよ」
まだ外は寒いから下手すると凍死しちゃうからね。ちなみに家には可愛いパパさんちょっと騒がしいけど、野宿よりマシだよ。
それにまだ凛花ちゃんが寮から追い出されるとは決まった訳じゃないしね。
「なによ光ちゃんだって同じ女の子なのに私を守るって……」
上目遣いで口を尖らせた凛花ちゃんが言った。おっ少し心に余裕が出てきたか?
「んー違うよ。あたしは凛花ちゃんとは違う」
「えっ?」
「あっ別に自慢とかじゃないよ。あたしには次期クイーンになって学園を守る強い意志があると言いたかったの」
「分かった。私も光ちゃんと一緒に頑張る」
「おっその粋だ!さて、今からクイーン様に会いに行こう」
「えっなんで?」
「なんでって、凛花ちゃんが寮に居られるようにと、あたしがクイーン杯に出場する意志を伝えるためよ」
あたしの説明に納得した凛花ちゃんを連れてこの洋館の三階にあるクイーン様の部屋に向かった。
◇ ◇ ◇
階段をあがり真ん中の部屋がクイーン様の部屋で丁度真下があたしたちの部屋だ。うーんちょっと変な声とか出せないね。(どんな声だよ!)
クイーン様の部屋の扉の両脇にメイドさんが立っていた。二人共綺麗なお姉さんだけど、警備を兼ねてるから強いと思う。
「あのっ済みません」
メイドさんに声をかけると、メイドさんは首を正面を向いたまま視線だけこっち向いた。その視線は鋭く無言だったのでちょっと怖かった。
「あのっあたし光です。クイーン候補の……」
するとメイドさんがドアを開けた。
「クイーン様がお待ちしております。どうぞお入り下さい」
「あっどうも」
遠慮気味に室内に入ると左奥になんか立派な木の机があって、そこに椅子に座ったクイーン様が微笑んでいた。それと、左右にクイーン様を守るように黒王子と赤王子と怖いメイド長が立っていた。
え、まさか、警備する王子様って一日中立ってるの? 大変だなぁ授業はどうすんだろ?
もうっ今はそんなこと考えてる場合じゃない。すぐに意志を伝えなきゃ。
「あのっクイーン様」
「分かってます。クイーン杯に出場する決意をなさいまして大変喜ばしいことです。それとそこの凛花さんの居場所はクイーン杯の結果まで保証しましょう」
「本当ですかっ!」
「ええ、私のはからえで凛花さんは今まで通り授業も受け、この寮に居られるように手配します」
は〜言ってみるもんだ。安心して緊張の糸がほぐれたあたしは絨毯の床にひざまずいた。
「ふふっ余程お疲れみたいですわね。でも、光輝さまがクイーン杯に優勝するにはどうしても足りない部分が見受けられます」
クイーン様が言った。んっあたしの足りない部分ってなんだろ?
「時間がありません。4月末にクイーン杯が開催されます。ですから今日から光輝さまはこのメイド長の元でレディのたしなみ修行を受けてもらいます」
「えっ!?」
メイド長は眼鏡のツルに触れて鋭い視線をあたしに向けた。いやちょっとキッツイなぁこの人怖いんですけど。
「初めまして光輝さん。わたくしはメイド長兼教育係の紅鷹。初めに言っておきます。この修行決して楽ではございません。覚悟はお有りですか?」
「んっく、か、覚悟なら今朝の集会の一件からとっくに」
「そうですか、ではさっそく修行といきましょう」
メイド長はクイーン様にお辞儀をしてから踵を返して退室した。あたしは戸惑っているとメイド長に睨まれた。
わ〜ん。怖いよ〜凛花ちゃん。
「すっ済みませんっ!」
「ちょっとお待ちっ!」
急いでかけ出すとメイド長に止まるように叱られ、棒状鞭で手の甲を叩かれた。痛っ!
「良いです? これからレディの振る舞いを叩き込みますから、少しでも良くない場合は鞭が飛ぶと覚悟しなさい」
「……は、い」
「では光輝さまの制服を用意しておりますので更衣室に行きますわよ」
「えっ制服っ?」
制服なら今着てるのじゃないのかな?
「説明不足でしたわね。光輝さまにはメイド服に着替えてもらいます。それで毎晩授業が終わったら、毎晩メイドとして乙女の修行を受けてもらいます」
「ええっあたしがメイドっ!?」
ピシッ!
「きゃん!」
お尻に鞭の一閃。どうやらむやみに叫んだから罰を受けたみたい。こりゃ厳しいな。でもさ、お尻に鞭って馬じゃないんだから……。
こうしてあたしのメイド(違う!)地獄の乙女修行が始まった。
夏場の体調の不調と治ってから他の小説書いていたせいで更新が止まってしまい済みませんでした。
同時進行中の小説とバランスとりながら書いていきたいのでよろしくお願いします。




