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狙われた候補

 

 朝の全校生徒集会が終わるとクラスの皆んなは気を遣って好奇の目で見られることはなかった。まあ、俺、いやあたしは別にいいんだけど新咲に退学命じらた凛花ちゃんが気になる。

 凛花ちゃんが座っているはずの隣の席が空いていたんだ。


 あの一件から凛花ちゃんは早退したんだ。心配だ。あたしも早退して凛花ちゃんの側にいてやらなくてはいけないと感じた。

 本当にそうだよ。なんで今ぼんやり授業を受けているんだ。


「先生っ!」


 歴史の授業中手を上げた。


「んっど、どうした田中君?」


 男性教諭の八木山橋(やぎやまばし)先生がチョークを止め振り向き、少しヨソヨソしい態度で聞いた。あたしが朝騒ぎを起こした張本人だから理解出来ます。


「体調がすぐれないので早退したいのですが?」

「ああっそれなら仕方ないな。早く帰って身体を休めなさい」

「ありがとうございます先生」


 立ち上がりお辞儀して教科書を鞄に入れて教室をあとにした。


 授業中で静かな廊下を歩いていると前方に男子学生たちがたむろしていた。数にして五人。しかも皆柄の悪い輩たちだ。

  チッ踵を返して反対側から出ようとすると、そっちにも数人の輩たちだうんこ座りしてあたしを睨んでいた。


「ひひ……」


 薄ら笑いを浮かべながらリーゼントやモヒカン頭の輩たちだジリジリと詰めよって来た。ちょっとどう考えてもウチの学校の生徒じゃないわね。


「ちょっとなによ!」

「へへっいい度胸だなぁ姉さんに逆らって?」

「くっ……」


 リーゼントが右肩を掴んだ。


「ちょっと止めてよっ!」

「おー怖っ!だけどよぉコイツ元男だったんだろう? なになよなよしてんだよ気持ちわりー」

「……」


 全くだと輩たちが笑った。まあ、男を捨てる宣言した時点で馬鹿にされる覚悟は出来ていたけど、お前たちには馬鹿にされたくないね。


「退けてくれますか……」

「おー? オメエ逃げられると思ってんのか?」

「……先生呼びますよ」

「はっ? 新咲様直属の部下のこのオレ向山(むかいやま)にセンコーが逆らえると思ってんのか?」

「くっ」


 輩が言う通り学園内で三番目に権力があるのが生徒会メンバー。それで先生はその下の方だ。まあ、輩共が生徒会に入れる頭の良さとは全く思わないけどね。


 さて困った。輩共に囲まれたあたしにこの危機を逃れる術はあるのかな? 特殊能力あれば一人で危機を乗り越えるけど、残念ながらない。あたしの能力は一回きりの性転換だから。


 でもマジでやばい。白昼堂々輩たちに乱暴されちゃう。


「へへっ元男っての信じられないくらい可愛いなオメエ」

「全くだうへへ」


 ニヤケ面の輩共が距離をとりあたしを囲んでいく。


「くっ待って!」

「おっとー逃げられると思うなよ田中」

「ちょっと触んないでっ!」


 モヒカンに右手首を掴まれ持ち上げられたっくうっ!


「おいっ西多賀(にしたが)っコイツは俺の女だぞっ!」

「馬鹿やろうっ早い者勝ちだっての!」

「チッ仲良く分けようや」


 冗談じゃないっ勝手なことを!

 んっでも男、ましてや体力自慢の輩相手じゃ非力なあたしでは抵抗出来ない!


 このまま乱暴されるのか?

 ああ、クイーンになると宣言したからには王子さまも誰も助けてはくれない。正義のヒロイン気取りだったけど結局、絶望的な結果しかないんだね……。


「待ちたまえ君たち。一人の女の子をよってたかって囲むなど男子のすることですか?」


 右背後から凛とした聞き覚えのある男子の声。


「誰だっ!」


 輩たちが振り返るとそこに白王子がいた。


「てめっ王子がなんで?」


 あたしもびっくりした。だって、クイーン候補に王子さまが手助けするのは禁止されてるから。それなのになんで?


「離したまえ彼女が嫌がっているだろ?」

「おんめっ王子がクイーン候補に手助けすんのはペナルティー受けんの知ってて言ってんのか?」

「確かに理解している。だが僕は非道な行いを受けている一生徒を救うために声をかけたのだ。そう。光君がクイーン候補だから手助けしてる訳じゃない」

「チッ屁理屈言いやがる。おいっ行くぞ!」


 クイーン様直属の王子相手は流石に部が悪いのか輩共は退散して行った。


「大丈夫かい?」

「あ、ありがとう。だ、大丈夫だよ」

「そうか、良かった」


 白王子が側にかけ寄りんっあたしの顎を指でクィッ持ち上げた。


 わわっこれって少女マンガで見たことあるシチェーション!


 やばいやばいっ!白王子の顔が徐々に近き互いの唇との距離はおよそ3センチ!


「怖かった?」

「…………いや」


 なにをあたしはトロンと王子の顔見てるんだ!

 でも何故かドキドキする♡


 そして唇同士が触れ……。


「チュッ」

「んっ……………………………………」


 しばらく離れなかった……。


「んっ……♡」

「このキスは僕が君を守る誓いのキスです。ん、チュッ」

「…………あ…………」


 更に白王子ははひざまづいてあたしの手の甲にキスした。


「ちょっと待てよ白王子っそんなことしたらルール違反よ!」

「大丈夫。僕は君を輩から守るだけ」

「……本当にいいのか?」

「オーケー心配ないねー!」


 あっいつもの白王子に戻った。


「あっそれよりありがとう助けて」


 お礼言うの忘れてた。本当白王子が助けに来なかったら大変な目に遭ってたよ。


「オーケーじゃ寮まで僕がエスコートするよ」

「えっでも……」

「問題ない。僕が5メートル離れて君の後ろを歩けばいいんだろ?」

「なんかストーカーみたい……」


 まあ、白王子が近くにいてくれたおかげで無事寮に帰ることが出来た。そのあと彼は明るく手を振って立ち去って行った。

 白王子ちょっとウザかったけど、少し見直した。


 あたしは寮を見あげ唇をハンカチで拭いてから中に入った。


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