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新学期

 

 4月初旬月曜日の朝鳥のさえずりで目を覚ました。時計を見ると朝6時だ。まだ時間があったから二度寝しようか考えたが、どうにも寝ることは出来なかった。

 何故か寝ようしても寝る気力が湧かない俺は、上体を起こし目頭を押さえた。


 1月の生徒会長選挙が終わってから2カ月が経ち、なに事もなく学園生活を過ごし新学期をむかえた。その間新咲が沈黙していたのが気になっていた。

 俺は皆んなのことが心配でどうにも落ち着かない。自分のことはなんとかなると思ってるからいいけど、隣で寝ている凛花ちゃんが特に心配なんだ。


 凛花ちゃんは本来喋れない障害持ちなんだけど、障害を克服する能力で喋っている。だけど、長々と喋ることが出来ない。それは仕方ないんだけど、その事実を新咲に知られてしまったことが不安の原因なんだ。

 今は不気味に沈黙しているけど新咲は必ず嫌がらせ行動にでる。その時期がいつか分からない。だけど近い気がする。


 んっふと気がつくと凛花ちゃんが俺の顔を見ていた。


「あっおはよう凛花」


 ツンデレキャラ演じてるから呼び捨てだ。


「おはよ光ちゃん……ん」

「んっ?」


 瞳を閉じた凛花ちゃんは口を小さく開いた。


「…………まだ早いわよ」


 健全な高校生はそんなことしない。俺はベッドの上で立ち上がり凛花ちゃんをまたいで洗面所に向かった。後ろから舌打ちする音が聞こえたけど、怖いから振り向かなかった。

 俺って案外ビビリだな。


 ◇ ◇ ◇


 月曜日の朝は体育館で全学年生徒一斉集会がある。でもその前に部室に凛花ちゃんを連れて寄ってみた。部室には副部長が一人で作業していた。


「おはようございます副部長」

「ああ、おはよう二人共元気かい?」

「はい。ところで朝からなにしてるんですか?」

「ちょっと早いけど秋の文化祭で販売するサボテンだよ」

「ああ、なるほど」


 以前部長と副部長が話していた業者から仕入れたミニサボテンだ。数にして50株。全部売れるとは思えないけど文化祭で売るには丁度いい数に思えた。


「売るのはこれだけですか?」

「いや、あと、松と紅葉の盆栽と大きめのサボテンと多肉植物も売るよ」

「そうですか。楽しみですね副部長」

「ああ、楽しみだと、言いたいとこだが、まずは君が次期クイーンになってもらわないと文化祭の出店はおろか、我が盆栽部の存続も危うい」


 副部長はそう言って眼鏡の中央部分を指で押さえた。やっぱりそうか、不安に思っていたのは自分だけじゃなかったんだ。

 横に並んだ凛花ちゃんが俺の右手を握った。


「そろそろ行こ光ちゃん」

「うん、分かってるわ凛花ちゃん。あ、副部長もほどほどにしないと遅刻しますよ」

「そうだね。これから僕は着替えなきゃ」


 学生服の副部長が言った。あ、なるほど青いスーツに着替えるんだ。副部長の正体は水を操る青王子だ。これから青王子になるってことは、朝の集会にクイーン様も出席するんだな。

 久々にクイーン様の顔が見れると思うと少しホッとした。


 ◇ ◇ ◇


 体育館に全学年生徒が集まり集会が始まった。いつものごとく校長先生の長いスピーチが始まり、先生方の話しで進行していった。ここまではいつもの全学年集会に見えたが、突如生徒達が騒めき始めた。

 俺もなにごとかと生徒達の視線の先を見るとその原因が分かった。体育館の入り口から制服姿に白いマントを羽織った現クイーン様が、五人の王子を引き連れて来た。水色の神秘的な長髪に白い肌に、優しくも美しい彼女の微笑みに男女問わず息を呑んだ。


 クイーン様は奥の特別席に座った。それから集会が再開すると壇上に新咲が上がった。そうか。今朝の嫌な予感がコレか。


「皆さまおはようございます。新学期から新生徒会長に就任することになった新咲麗美でございます」


 新咲の本性を知らない大半の生徒達が盛大な拍手でむかえた。当然俺は握手なんかするもんか。代わりに舌打ちしたよ。

 さて、新咲はどんな就任スピーチするのかな? 全く嫌な予感しかしないよ。


「就任そうそうでございますが早速校則の変更を発表いたします」


 なっいきなりかよ!


「変更の内容は校則違反した生徒とは私くし生徒会長の権限で即刻退学処分出来るように改正いたしました」


 まるで独裁者が考えた校則改正に生徒達は騒めき始めた。


「貴様ら静まらんか、まだ偉大なる新生徒会長新咲様のスピーチの途中であるぞ」

「…………」

 新咲の横に立つ背の高い男がアゴを上げて高圧的に言った。その威圧感に生徒達は黙った。

 そいつは高校生の癖に口髭を生やしオールバッグの男。コイツは三年副会長に就任した二階堂茂雄(にかいどうしげお)。新咲生徒会長就任後急に現れた学生か分からない怪しい輩だ。


「さあ、新咲様スピーチの続きを」

「ふふっ上出来よ二階堂……。これより校則違反した生徒の名を呼ぶので、呼ばれた生徒は前に来るように。まずは二年太田裕二、三年遠藤直樹以上二名前に来なさい」


 突然の違反者名の発表に再び生徒達がざわついた。普通ならこんな全生徒の前で違反者を呼び出す訳がない。だけどそれが新咲なら納得いく。とにかくウチの高校はクイーン様についで生徒会長が校則を決める権限が持てる。

 滅茶苦茶だけど長年そう言う取り決めだ。ただ、そうは言っても問題が起こらなかったのは、歴代生徒会長がまともだったからに過ぎない。


 問題はここから、今期寄りによって独裁的な新咲が生徒会長に就任したことなんだ。もう、これからなにがおこるのか分かりきっていた。しかし、凛花ちゃんの名前が呼ばれなかったのがちょっとホッとした。


 二人の男子生徒が呼び出された。二人共動揺してる様子だ。


「違反した内容を述べる。二名の生徒は校則違反にも関わらず黙ってバイトしていた事実が発覚しました。よって即刻退学処分といたします」

「ちょっと待ってくれよ!確かに校則違反したのは事実だけどいきなり退学って厳しすぎませんか?」


 太田の講義に遠藤もうなずいた。だけど二人を見下すように見下ろしていた新咲は意地悪な表情を浮かべていた。


「生徒会長の権限は絶対よ」


 そう言って新咲は一度クイーン様に視線を向けると、なにも言ってこないと判断したのか口元を歪めた。


「おいっ連れて行け!」

「へいっ!」

「ちょっとひっ! まっ待ってやだっ新学期早々退学なんて!」

「ク、クイーン様助けて!」

「いいからコイ!」


 新咲はアゴを振って輩に命令すると違反した二人は羽交い締めにされ外に連れ出されて行った。堂々と行われた独裁と暴力なのに先生達はなにも出来なかった様子。

 とは言っても先生方は、うつむいたり拳を震わせたりしてなんとか感情をおさえているのが痛いほど分かった。とにかくこの学園の特殊な秩序。一番偉いのがクイーンで二番が生徒会長、三番が副会長、四番が理事長(ここからがおかしい?)五番が学園長、六番目が校長、七番目が教頭、八番目でやっと教師と滅茶苦茶だ。

 どうなってんだこの学園の序列は……。


 この竜神高校と白虎、朱雀、玄武高校の四校が異常なだけ。理由は分からないよ俺は、だけど新咲の独裁には黙っていられない衝動にかられた。


 新咲は違反者が連れて行かれるのを確認するとマイクを握って俺の方に顔を向けた。ちょっと今視線が合った?


「さて、もう一件違反者の名前を呼ぶのを忘れていました」


 チッ嫌な予感がする。


「違反者二年村越凛花前へ」

「なっ!!」


 生徒達が騒つく、それもそうだ。凛花ちゃんは俺のせいでちょっとした学園の有名人になっていたからなんだ。なんせ俺だけじゃなく凛花ちゃんのファンクラブまで存在するからな。

 まあ、凛花ちゃんは俺のモノだけどね。


 そんなことで予想してたけど、最後に呼び出して凛花ちゃんを生徒の前でさらし者にするなんて許せない新咲何某!

 丁度後ろに並んでいた凛花ちゃんの身体が震えていた。


「村越凛花さん聞こえてますか? 早く前に来なさい」


 高圧的な新咲の声が響くが生徒達は黙るしかなかった。


「…………」

「行くな凛花ちゃん」

「光ちゃん……」


 俺は凛花ちゃんの手首を握った。


「ひっく……駄目、行かなきゃ……ごめん光ちゃん」


 凛花ちゃんは俺の手を振り解いて列を離れた。


「り、凛花ちゃん行ったらもう……」


 二度と一緒に学園生活送れなくなるよ……。


 クイーン様は動かない。誰も助けてくれないこの危機に俺はなにをすべきか必死に頭を巡らせていた。


急展開です。

主人公がどう新咲に立ち向かうか期待して下さい。

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