シンディー捜索3
一番疑ってる白王子と一緒になってシンディー捜索が始まったが、仮に白王子がシンディーなら彼女は絶対見つかりっこない。だって姿を変えた本人が側にいるから。
そんな俺の杞憂を知ってか知らずか笑顔な白王子がやけに乗り気だ。一方口を尖らせた凛花ちゃんは、俺が男と行動するのが不満らしい。ちょっと怖くて凛花ちゃんの顔見れないから視線をそらした。ふうっ勝気なツンデレキャラ早くも崩壊だ。
「皆さん洋館入りますか?」
白王子が入り口を指差し聞いてきた。
「いや、洋館は最後でいいわ。他あたりましょう」
「光っどこ探すの?」
「んっ……」
凛花ちゃんに名前呼び捨てされた。こりゃめっちゃ怒ってますわ。
「そうね、食堂と大浴場どっちがいい?」
「大浴場……」
「オー温泉がいいデスね」
んーー二人共大浴場希望か、まあ、白王子はワザとボケてるのか温泉じゃないけど、皆お風呂希望なんだね。本当スケベたな? ああ、今日は捜索だから入らないよ。
「仕方ないまずは大浴場行ってみましょう」
「オッケーレッツGO GOカモン!」
先頭に立って手招きする白王子。もうノリが日本旅行を楽しむ陽気なアメリカ人だよ。でもさ、これも俺をあざむくための演技かも知れないから注意が必要だよ。
とりあえず大浴場に着いてロビーに入ると、凛花ちゃんが勝手にトコトコ歩いてお馴染みの自動販売機の前で立ち止まった。
「なに飲む?」
「ちょっと凛花さんお風呂に入る前にいきなり瓶牛乳飲みますの?」
ちょっとぎこちないけど俺の演技中の台詞だ。うん、いずれ違和感なくなるさ。でもそれは男を捨てたことにもなる……。
ああ、そうさ、生徒会長新咲の独裁を阻止するには、それより上の立場のクイーンになるしかない。だから、次期クイーン競争に勝つために男を捨てる覚悟さ。
まあ、心まではまだ捨てる踏ん切りはついてないけど、それもいずれどうなるか分からない。
「飲んじゃ悪いの光?」
「……」
ふくろうみたいなまん丸お目々で反論する凛花ちゃん。まだプンプンして俺は怖くて天井を見た。
「オージャパニーズ自動販売機ネー!」
白王子が両手を上げて歓喜の声をあげた。ちょっとわざとらしいね。だって君学園内で生活してるんでしょ?
飲んでるよね瓶牛乳。
「仕方ないわね。とりあえず飲みましょう。あたしはそうね、フルーツ牛乳にするわ。お二人さんはなに?」
「悩む」
「オー決められませーーん」
「……」
早よ決めろ。どうせタダなんだから。そう、この自販機はお金を入れなくても、ボタンを押せば商品が出るんだ。実に楽しいね。
だから悩む必要はないと思うけど、二人は自販機の前で睨めっこしながら悩んでいる。早よ押せよ購入ボタン。
「僕は茶色い牛乳に決めマシタ」
「うん、白王子はコーヒー牛乳ね」
「私は光ちゃんと同じのでいい」
おっ凛花ちゃんの機嫌が戻った。俺はフルーツ牛乳を二つ購入した。タダだけど。
「んっんぐっんぐんぐ……」
まずは紙製のフタを取って(瓶牛乳これがワクワクするんだよ)一気飲みする。瓶牛乳飲む時って左手を腰に当てがちだから今日はあえてやらなかった。二人をチラ見すると腰に手を当てていた。おいっもしも、腰に手を当てたら死ぬルールだったら即ゲームオーバーだよ。
そんなくだらない妄想しながらフルーツ牛乳を飲み干すと、いよいよ大浴場に入ってシンディー捜索だ。脱衣所に行くと凛花ちゃんが俺の手を握り締めた。顔は笑顔なんで期待してんのかな?
「んっなによ凛花さん。言っとくけど今回はシンディー捜索だから裸にならないわよ」
「 」
「あ、…………うん」
絶句した凛花ちゃんの目が丸くなった。俺はたまらず首を横に向けた。
「ココにシンディーさんいるのデスか?」
「んっ?」
何故女風呂の脱衣所に男の白王子がいる?
「ちょっと白王子ここは女風呂よ。男は出て行くべきよ」
「オウソーリー」
「ちょっと待ちなさい」
出て行こうとする白王子を呼び止めた。凛花ちゃんはなんで?と言わんばかりに目を丸くした。痛っそんなに強く手を握らないの!
「あたし達から離れないで白王子様」
ふんっいったん俺達から一人離れてシンディーに変身して顔を出してアリバイ作りするつもりだろうが、そうはいかないよ。一緒にいれば性転換も不可能だろうね。
白王子を離さないことで絶対シンディーは見つからない。そう、俺は絶対シンディーと白王子が同一人物だと確信しているからだ。
ただ疑問に残ることがある。二人が同一人物なら何故正体を隠すのか? 特定のクイーン候補に王子が肩入れするのはルール違反だからか? でも、今のところ白王子は、俺が有利になるように持ちかけてこないから結局分からない。
「オー男と混浴希望ですかスケベガール?」
「うるさい黙れ!目を離したスキにお前がシンディーに変身する可能性があるから、その場を離れるなと言ったのよ」
「オーなるほど。なら僕は光さんの隣にいますから浴場内調べてみましょう」
「分かった」
白王子があっさり従ったのが気になるけど隣にいるなら誤魔化しようがないな。俺はそっと入り口のガラス戸を引くと中を覗いた。
「オー皆さんどうしました?」
んっ浴場にはタオルを巻いたシンディーが話しかけて来た。風呂あがりらしく髪が濡れていた。
「えっどうしてシンディーが?」
すぐ横を振り向くと白王子がいた。馬鹿なっ別人?
いや、そんなっ俺は前を向くとシンディーが不思議そうに見ていた。ええっやっぱり別人?
「おいっ白王子どうなってる?」
「……」
俺が振り向くと凛花ちゃんもつられて同じ向きに首が動く。
「彼女がいるでしょ僕はシンディーではないのデス」
「くっ馬鹿な」
読みが外れた?
また前を向くとシンディーがいる。凛花ちゃんも連動して前を向く。そしてシンディーを見る俺に嫉妬したのか手を握る力がキツくなった。
「それでは僕は用があるので失礼するよ」
ハッとして俺と凛花ちゃんは白王子を見ると彼は手をあげて出て行ってしまった。逃げた?
いや、疑惑のシンディーは目の前にいるから潔白は証明された。俺達は前を振り向くとシンディーが笑顔で手を振っていた。
やはり別人だったのか……。
「悪いわねシンディーお邪魔したわ」
「出るの?」
「うん」
肩を落とした俺は凛花ちゃんの手を引っ張って大浴場を後にした。結局白王子の正体はシンディーではなかった。まあ、それを知ってどうなるかって正直分からなかった。ただ、新咲が生徒会の権力を握り最悪な状況になって、少しでも希望を見出したいと思ってシンディーの秘密を探った。
何度も思うけど、結果は別人だった。帰り道食堂の前を通るとまだ明るい。時間はスマホで確認すると23時。こんな時間まで営業してるなんて感心だ。
「ちょっと入ってみる?」
励まし会でおやつを食べた後でもしょせんおやつだから小腹が空いたんだ。食堂も無料だから入ろうと思った。
凛花ちゃんもペコペコみたいで首を縦に振ったから中に入ると食堂奥のテーブルに黒王子が座って背を向けていた。
「帰ってたんだ。ねえ凛花さん気になるから同席してみる?」
「……」
凛花ちゃんの目がふくろうになった。男が絡むとすぐ嫉妬するみたいだね。以後気をつけよう。
「あのね凛花さん。現クイーン様も帰ってるかもしれなから付き添いの彼に聞いてみるのよ」
「分かった」
「じゃっ行きましょう」
納得した凛花ちゃんを連れて黒王子の元に向かった。黒いスーツに帽子をかぶった彼の後ろ姿はまるで殺し屋に見えた。まるでスキのない。彼の能力は時を操る能力で五人の王子の中で恐らく最強と言える。
なにせ時を止めることが出来るし、物質に触れると劣化退化させることが出来る。あと、噂ではタイムスリップも可能らしい。あらゆる時を操る黒王子は本当最強だと思う。正にチートだ。
ただ彼はその能力を私利私欲に使わないのが幸いだと思う。
「同席よろしくて?」
緊張しながら平静を装い俺は、黒王子の前の席に手をかけた。
「……」
無言な黒王子は帽子を深く被ってるので感情が見えない。ただ黒王子の威圧感で俺の頬に冷や汗が伝って落ちた。
「あんころ餅食うか……」
「えっ?」
唐突に言った黒王子の以外な一言に俺は聞き返した。
「あんころモッチ旨いぞ。お前達も食うか……?」
「はあ…………」
よく見るとテーブルには皿に盛られたあんころ餅が置かれていた。えっこの食堂なんでも出すの?
ただ、寡黙な黒王子があんころ餅言うから、思わず吹き出しそうになって我慢した。
「あ、あのう、黒王子様はあんころ餅が大好きなのですか?」
「………………」
あんころ餅で何故黙る!
「あのう、黒王子様……?」
「ああ、確かに俺は甘いモノは好きだが、力を使った日は特に甘いモノが欲しくなる。そう言うことだ」
「はあ、黒王子様もお忙しいんですね」
力を使ったのか納得。確かに俺も運動した後は甘いモノ食べたくなるよな。なんだかんだで今日はシンディー捜索で疲れて本当お腹ペコペコだよ。
「凛花ちゃんなんか食べるか?」
「……じゃあ、私はモチモチモッチにする」
「……今なんて?」
そんなユルキャラみたいなふざけたネーミングのスイーツはない。
「ふっモチモチモッチか……俺も好きだぜ」
「だね」
笑って何故か凛花ちゃんと意気投合した黒王子はメニュー表を見せた。黒王子はメニューに指差すと確かにモチモチモッチと書かれていた。
嘘だろ……凛花ちゃんが適当に言ったと思ってたモチモチモッチは実在した!
「…………じゃあ、あたしも」
結局俺も謎のスイーツモチモチモッチを注文することにした。ああ本当今日は色々あって疲れたよ。だから甘いモノ食べて疲れを癒そう。
次回からクイーン杯に向けて話が進展する予定です。




