シンディーの疑惑
励まし会が始まって盆栽部の副部長に聞きたいことがあった。その内容は王子様の支援がぱったりなくなったことと。クイーン杯の審査方法の二つだ。後者に関しては特別に聞くのは卑怯だけど、せっかく副部長が五王子の一人青王子なんだから駄目元で聞くさ。
「副部長ちょっと話いいですか?」
「ん、ちょっと待って……」
副部長は桃野部長と盆栽談義を交わしていた。俺も会話に加わりたいけど、美少女になってからなんとなく会話に参加し辛くなっていた。それに、おしとやか口調じゃないと凛花ちゃんにお仕置きされるんだ。
事情知らなそうな部長の前で女言葉使いたくないな。
「光輝君話ってなんだい?」
一度会話したら盆栽の話で止まらない部長との会話を中断した副部長は、眼鏡のブリッジを人差し指で押さる仕草で聞いてきた。
ごめんね部長。副部長との会話奪って。
「今回の危機に王子様が助けに来てくれなかったのは、クイーン様の命令ですか?」
「ふうっ……何故僕に聞く?」
「いやだって……」
副部長は眼鏡のレンズから覗く鋭い視線が俺を睨み、サラミを掴んでワイルドに噛みちぎった。あら〜聞いちゃ駄目だった王子様?
「副部長すっとぼけないで下さい。青王子なんですから、事情くらいは知ってますでしょう?」
「ちょっとちょっと光輝君。話はソッチで話そうか?」
副部長が血相変えて立ち上がって俺の手を引っ張り、小さな声で言った。あれ? もしかして皆んなに副部長の正体教えてないのかな?
だったら聞かれたら不味いよね。
「王子様の支援が止まったのはクイーン様の指示ですよ。その意図は君がクイーンになる決意表明させるため、ご覧の通り君は決意してくれたよ。それとね、王子達はクイーン杯出場者に支援することは禁止されているから支援が止まった理由なんだ」
副部長は長々と説明して喉が乾いたのかコーラを飲み干した。
事情が分かってひとまずスッキリした。とは言っても一人でクイーンを目指すのは心細いぞ。チラリと左を見たら凛花ちゃんが会話に参加していた。君はいつでも俺について来るね。嬉しいけど常に監視されている訳だから気は抜けない。
「ではクイーン杯の審査内容を教えて下さらない?」
「駄目です」
ぐっ! 流石に即答だ。副部長は眼鏡の位置を直した。一番真面目そうな青王子に聞いたのが悪かった。今度口が軽そうな黄王子に聞いてみようかな。
「他の王子に聞いても無駄ですよ」
えっなんで分かるの?
心を読むサトリ能力かな? いや、それくらい副部長なら俺の考えお見通しだ。結局聞き出せずに席に戻った。
ならいい、次はシンディーに聞きたいことがある。
「シンディーちょっとよろしいですか?」
「ワオッ光輝大胆」
「……」
まだなにも言っとらんだろ? シンディーは大袈裟に両手を上げて言った。あのなぁアドリブなんだろうけど、皆んなから誤解を招く返事するな!
ああっ凛花ちゃんが俺を睨んでるよ。だから言わんこっちゃない早速疑われたよ。
「なんデスかぁーーレディ光輝?」
「ちょっと待てシンディー今なんて言って言った?うわぁっ!」
うっかり男口調だったので凛花ちゃんにわき腹突かれた。厳しいなぁ可愛い鬼教官。でもちょっと邪魔しないでね、大事なこと聞くから。
「レディ言うな、まあそれは置いといて、シンディーお前白王子だろ?」
「……ち、違いマース」
手をブンブン振ってシンディーが否定した。明らかに動揺してる分かりやすい女だ。ここは追求してはっきりさせよう。
春におこなわれるクイーン杯に勝つにはどうしても白王子の助けがいると思っている。王子の協力はルール違反だけど、もし、白王子とシンディーが同一人物だったら裏で協力させるつもりでいる。それに単純に言えば単なる好奇心だな。
「シンディーさん嘘はイケないわ、いや、いけなくてよ」
おしとやかに振る舞うのはまだ馴れてないし、難しいな。ふうっ身体が拒否反応してるのか、背中がじんましん出てゾクゾクする……。
「光輝さんシンディー嘘つかないヨ」
引きつった顔のシンディーが敬礼して答えた。
「……本当ですのシンディーさん?」
「…………」
急に黙るな!
「ちょっと聞いてますのシンディーさん?」
「………………シンディー本当よ」
肩をすくめて舌出すなシンディー!
表情や仕草でシンディーの考えが丸分かりだな。でも、本人の口から聞かないと白王子だと断言は出来ないな。
中々シッポを出さないから話題を変えてみるか。
「シンディーさんはどこに住んでますの?」
「………………」
「ちょっとシンディーさん?」
黙るな!
余程聞かれちゃ不味い場所に住んでのか?
「まさか学園内ですか?」
「……………………違うヨ」
……分かりやすいな。
やっぱり怪しいから励まし会が終わったら、シンディーを尾行してみるか。コソコソつけて周るのは嫌いだけどシンディーが本当のこと言わないから仕方ないよね?
尾行は決めたがいいがフと後ろを振り返ると凛花ちゃんが俺を監視していた。ああ、ちょっと邪魔だな鬼教官。
無理に引き剥がしてもついて来るので一緒に尾行することに決めた。




