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馴染みの客

 

 一人を覗く頼もしい二人の刑事に守られ俺と凛花ちゃんと委員長の三人は、近場のスーパーに向かった。

 一人だけ浮かれて先行して歩いているのが親父だ。そんなに一人であるいちゃ人拐いにあうよ。なにせ美少女ロリ親父だからな。


「田中課長あんまりはしゃぐと車に引かれますよ」


 気になってたのが俺だけじゃないみたいで、見かねた恩塚警部が注意した。でもどこ吹く風か、親父は白線の上を歩いた。

 子供かよっ!(見た目は子供だけど……)


 なんか遊んでるとしか見えない親父は果たして職場でちゃんと仕事してんのかな?

 ちょっと心配になってきたな、もしかして親父って税金泥棒?


 でもなんか部下たちは温かい目で見守っていたから、役立たずでも仲間を癒すマスコット的な存在で必要かも知れないね。


「着いたぞスーパーアベサンだ」

「親父っ店名間違えてるぞ。スーパーアデサンだんっひゃっごめんなさい凛花ちゃん!」

「スーパーアデサン? 訛っとんな? んっ二人して戯れあって父さんも混ぜて欲しいぞ」


 百合百合な戯れに入ってくんなよ、幼女の皮を被った親父。


「そ、そうですわねお父様」

「なっなんだ光輝急にしおらしくなって気持ち悪い」

「……」


 これは修行だ。親父になにいわれても耐えろ俺。


「なあ、光輝、チョコ菓子買っていいか?」


 とてとて走って真っ先に店内に入った親父は振り向きざまに買い物カゴを手に取って聞いた。うっ今の仕草は不覚にもめちゃくちゃ可愛いかった。

 中身が親父だと思わなければだ。


「うーん、別によろしいですけど、お父様の奢りなら」

「なんだ気持ち悪いっもういいっつうに光輝!」

「……」


 そうはいかんのよ。可愛い鬼軍曹が俺の背中を睨んでいるし、おしとやかな女性の仕草を自然に出せるようにしないとさ。

 でもさ、それって本当の自分を殺す行為。そこまでしてやんないとクイーンにはなれないってことなんだな。

 きびちい……。


「凛花ちゃん食べたものありますかしら?」

「光ちゃん……」

「……」


 俺を指差すな。

 最近凛花ちゃんは欲望を隠さなくなってきた。それがいいことか分からないけどね。


「アンタのお父様の奢りならお菓子沢山カゴに入れてもいいよね?」


 委員長が無造作にお菓子を沢山放り込んどいて聞いた。いや、貴女すでに半分入れてますでしょ?


「ほほっ好きなだけ入れていいのですよ」


 俺は口元を手で隠して答えた。う〜ん。ゴージャスな扇子が欲しくなるな。


「こらっ光輝っお金払うのはパパだぞ!」

「あらっお父様ゴメンあそばせホホ……」

「……光輝。もっと自然に出来んのか……」


 ぐっ! 痛いとこ指摘しやがる流石刑事。確かに今は安っぽい三文芝居する舞台女優みたいでとても痛いぜ。

 でもいつか自然に出来たらいいな。


「おっ中華クラゲだ。買っておこう」

「親父好きだよなそれ」


 俺も好きだけど。コリコリした食感と甘辛酸味味がたまんないね。

 その他、親父はイカ系の乾物をポイポイカゴに入れた。全部酒のつまみじゃん。ほら、井戸端会議に勤しむ主婦達が訝しげな目で見てますよ。


「こんなに買い込んでどうすんだ親っうえっ! 親父様ぁ?」

「……」


 可愛い鬼軍曹の怒気を感じて不自然に言い直し聞いた。


「光輝達の飲み会に参加するためのお父さん用だ」

「酒はでねえぞ! ひゃあっ! ツッコミぐらい言わせて!」


 凛花ちゃんに脇をくすぐられた。ちょっとお仕置きのバリエーション変えてきたな。うんっマンネリはよろしくない。耐性がついちゃうからね。


「んじゃあ親あっ違う!」

「なにが違うんだ光輝?」

「ホホッお気になさらず、それよりお父様お会計お願いしますわ」

「別にいいけどお前もカゴ持たんか! カゴ三つ分も入れよって!」


 確かにカゴ三つで買い過ぎたか? いや、皆んなで食べるからこんなもんだろ。若干酒のつまみが入ってるが。

 しかもつまみが入ったカゴがやけに重いんだ。ちょっとおかしいと思って底を調べたら日本酒やビールが出てきた。


「親っいや、お父様このお酒は?」

「コレは大人用だ」

「……どこで飲むのですか?」

「どこって励まし会に決まってるだろ?」

「まさかお父様方も参加する気ですか?」

「当たり前だ。パパちゃんはそのために早上がりして来たんだ。嫌とは言わせんぞ光輝ぃ」


 親父はニヤリと笑った。

 見た目がクソガキだから憎たらしさ倍増だな。


「課長まさかこの酒学校で呑むつもりですか?」

「なんだ山本悪いか?」

「はい。問題ありです」

「あっコラッ酒返せ!」


 山本警部にお酒を取り上げられた親父は取り返そうとピョンピョン飛び跳ねるけど悲しいかな、背が小ちゃくて手が届かない。

 警察が学校で酒飲んだら大問題っての分からないのかねぇ


 酒を棚に戻された親父は一人うなだれていた。

 んっちょっと待って! いくら精神が大人でも身体は子供だろ! まさか親父今までこっそり酒呑んでたのか?

 いくらなんでも死ぬぞ親父。


 分かっていたが、買い物中親父に振り回されたけど無事に買い物を済ませて店を出た。

 山本警部がパトカーで送ってあげると言ったのでご好意に甘えた。だってほら、帰り道いつ刺客と遭遇するか分からないからね。

 でもさ、パトカーに乗せられると、悪いことしてないのに緊張するよねきっと。


「むっ皆んな止まって」


 クールビューティーな恩塚警部が俺達を制した。


「恩塚警部どうしました?」

「刺客よ」

「えっ駐車場に?」


 まさか人の出入りが激しい駐車場で刺客が待ち構えているとは予想外だった。

 恩塚警部が言う通り目の前に立つ二人の男。一人は黒いジャンバーを着た中肉中背のおっさん。何故かニヤついた笑みを浮かべていた。そしてその横に腕組みして立つ身長189センチはありそうな筋肉質でガタイのいいスキンヘッドの男だ。

 ただ妙なのはTシャツの上に緑色のエプロン。主婦が着けるタイプじゃなくて、工房の職人が着けるタイプだ。

 山本警部といい勝負な見た目で手強そう。


「おっと、ここから先は通さねぇぜ」


 中肉中背のおっさんが口を開いた。


「貴様刺客か?」


 恩塚警部は懐から拳銃を取り出した。ちょっとやばいんじゃないか?


「待て待て、いきなり銃口を向けるなんて怖え女だ。なあマスター?」


 んっマスター? おっさんはスキンヘッドの男にそう呼んだ。

 確かによく見ればムキムキボディにスキンヘッドにエプロンとくれば、ラノベファンタジーお決まりの気のいい武器屋のマスターそっくりだ。


「道を空けなさい。さもないと職務執行妨害で現行犯逮捕よ!」

「おいおい、俺様が穏便に済ませてあげようってのにあんまりじゃないですか刑事さん?」

「黙れっ貴様目的は?」

「ひゅーっおいおい、自己紹介する前に質問はないんじゃねえのかな? まあいいわ。俺の名はジョレーン。馴染みの店(マスターの店)の常連客だ」


 なるほど常連だからジョリーンね。ダジャレかっ!

 ジョリーンみたいに妙にカッコいい名前だな。まっ別に名前聞いてもいなかったけどね。


「そして俺様の隣が武器屋のマスターだ」

「ああ俺は単なる武器屋の親父だ」


 寡黙なマスターだ。とは言え本当に武器屋のマスターとは当ててしまった。だけど武器屋にしては手ぶらだぞ?


「貴様ら能力者か?」

「ははっ勘がいいな嬢さん。だが、半分正解だ。俺様には能力は一切備わってねぇ」


 あっ言っちゃっていいんだ。


「これ以上抵抗するなら撃つ」

「おおっこれだから一見さんは怖いねぇすでに俺様の馴染みの店に入店してるとも知らずになぁ?」

「な、なに? 馬鹿なここは単なる駐車場だぞ!」

「くく、駐車場ねぇネタバレだが、マスターがいるフィールド全て武器屋になるんだよ。そして俺様は常連」


 ジョレーン胸張って偉そうに言うな。偉いのはマスターだろ?


「さて、マスターいつものっ!」


 出た常連客が一見さんの前でマウントとれる決めセリフ。多分言ってる時、脳内のドーパミン物質がこう、パーあっと出てんだろうな。


「ちょっと待ってろ」

「貴様っ動くなと言ったろ?」


 恩塚警部がマスターに銃口を向ける。


「武器くらい持たせてくれ」


 そう言ってマスターは風ではためくスーパーののぼりを手にした。

 んっそんなモノ引っこ抜いて盗む気か?


「裏メニューだ。試してみろ」

「おおっ俺にだけいいのかマスター?」


 マスターはのぼりをジョレーンに手渡した。風が吹いているのに気のせいか、マスターが触ってからのぼりがはためかなくなった。


「ひひっこりゃ凄えわ」


 単なるのぼりを手にしジョレーンは見上げ、次の瞬間恩塚警部めがけ振り下ろした。


「恩塚よけろっ!」

「!?」


 刑事の勘か山本警部の怒号がとび間一発恩塚警部はかわした。


 スパンッ!


 すると振り下ろされたのぼりが駐車場に置いてあったカラーコーンを真っ二つに切断した。


「なっ馬鹿な!」


 驚愕する恩塚警部。


「俺の能力は触った物質を鋼鉄の強度にする」


 触っただけで硬くする能力か。だからのぼりが固まって見えたんだ。それに鋼鉄なみの強度に変化したから、のぼりがちょっとした凶器いや、それ以上の武器。バスターソードと化した。


「へへっ上手くよけたなぁ刑事さん? だが、次はかわせるかな?」

「くっ」


 ジョレーンが凶器と化したのぼりを振り下ろす。危険な武器とは言え使うのは素人だから難なく避けた。


 ガキッ!


「チッ!」


 のぼりがアスファルト地面に突き刺さって抜けなくなったみたい。やっぱりジョレーンは大したことない。警戒すべきはマスターか。


「くそっ抜けねっああっもういいっマスター裏メニュー」

「そうはさせるかっ山本っロープ!」

「了解っ恩塚っ受け取れ!」


 いつ持ってたのか山本警部は特殊繊維で出来たロープを恩塚警部に投げ渡した。


「チッそんなロープで俺様を縛るつもりか?」

「そうさ、お前を今から縛るためさっはあっ!」

「がっ!?」


 恩塚警部はジョレーンの足を蹴り上げ浮かせた瞬間早技で身体をロープで縛った。縛られたジョレーンは反り返って亀みたいに縮まった。

 親父のいかがわしい本で見たことある亀甲縛りだ。


「て、てめっ外しやがれっ!」

「黙れ犯罪者っ喰らうがいい私の奥義を」

「ひっ止めっぐあっ!」


 恩塚警部はジョレーンを蹴り飛ばし宙に浮かせジャンプした。


「てりゃあああっ喰らえ恩塚亀甲(おんつかきっこう)上段兜蹴りぃぃぃぃいいっ!!」


 バッコン!!


「ぐあああっ!!」


 ドサッ


 かかと落としを腹に受けたジョレーンは悲鳴をあげたあと気絶した。


「フンッたわいもない」


 長い黒髪をかきあげ澄ました顔でジョレーンを確保した。うわぁ恩塚警部カッコいいなぁ、それに強い女性は美しい。


「よしっあとは頼むぞ山本」

「まかせろ恩塚」


 パンッ


 恩塚警部は山本警部とハイタッチして退場した。うーん 決まってる。


 俺もいつか力が強いとはちょっと違うけど、心が強い女性になりたいと誓った。


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