親父の二人の部下
「あたしも行くからね」
放課後言い出しっぺの委員長がスーパーに買い出しに行くと言った。ちょっと断ったんだけど「イクイク」うるさくてね、根気負けした結果委員長がついて来た。
俺が渋った要因はずばりボディガード約束した親父だ。俺と同じ性転換能力者で見た目10歳くらいの金髪ロングのツルペタ美少女親父だ。
俺が生まれて物心つく頃には親父は美少女に変化していた。だから、男だった時の親父の面影は休日座ってテレビを見ていた広い背中の印象。顔は記憶がおぼろげでハッキリ覚えない。
だから昔から親父の印象はツルペタ幼女なんだ。
ハッキリ言って俺はよく性格が歪まなかったと思っている。特にロリコンにならなくてホッとしてるよ。
しかし、10年以上経っても親父の身体が成長しなくてツルペタボディだ。親父が言うには能力が二つあって一つは性転換能力。もう二つ目が不老不死能力なんかじゃないのかと仮説を立てていた。
その根拠には、美少女化した先祖は皆消息不明になり死因が分からないと言った。恐らく不老不死と分かった先祖は人知れず雲隠れして山奥とかでひっそりと仙人みたいに暮してるじゃないのかと言ってな。
親父の仮説が正しいなら親父は一生死ねないツルペタボディだ。ちょっと悲惨な人生じゃないですか?
だけど親父はあの通り明るいちょっと変わった性格なんだ。だから、委員長に親父を会わせたくなかったんだ。
そんな訳で凛花ちゃんと委員長と一緒に歩く俺の足取りは鈍い。
校門に向かうと職員専用駐車場にパトランプを付けた黒塗りのGT-Rが一台駐車されていた。
「ちょっと田中アレじゃない?」
「痛っちょっと委員長!」
委員長は俺の左肩をバンバン強く叩いてGT-Rに指差した。おばちゃんですか貴女は?
「ちょっと委員長あんまり指差すとなぁいや、えーと職務質問されますわよ……」
凛花ちゃんが睨んだので女言葉に途中変更した。やれやれ。
俺達に気づいたのか車の助手席のドアが開いた。
「久しぶりだな光輝」
紺色のスーツにライトブラウンのコートを着た親父が手を振って話しかけた。
「ちょっと可愛い♡ あのコートの娘だあれ?」
「……アレは俺の親父だ……」
「ちょっと意味分かんない」
だろうな委員長。俺は親父の秘密を事細かに教えてやった。すると委員長は俺と親父を見比べて変態家族とボソッと呟いた。
それは親父だけだろうが!
親父はニコニコしながらコートを引きずりなが来た。サイズ合わせろよ!
「なんだ光輝かわい子ちゃん二人も引き連れてんっ? 二股か?」
「違いっ……いや、ち、違いますわ。ただのお友達ですわっわひゃっ! ちょっと凛花ちゃんなにするの止めて!」
友達って言ったから凛花ちゃんが怒ってわき腹ツンツンした。でもさぁしたねーだろ? 親の前で同性の子に恋人ですって言う勇気はない。
すると聞いていた親父が俺と凛花ちゃんの前に立って笑った。
「もうやったのか?」
「ちょっと親父っ未成年の前でやらしいこと聞くなよ!」
「なにがやらしいんだ光輝? パパはなぁキスぐらいしたかと聞いてるんだ。まさかお前……」
ぐっ……口に手を当てて親父はほくそ笑んだ。ちくしょう。ひっかけやがる。
焦った俺は凛花ちゃんの顔をうかがうと、魂が抜けたような表情で固まっていた。
「アンタ最低ね」
委員長はゴキブリを見るような目で俺を引くように見つめた。
終わった。美少女になって優雅な俺のイメージが親父のせいで崩れ落ちた。
思えば少し調子に乗っていたんだ。
「そろそろいいか光輝?」
「はあっ親父のせいで落ち込っこ、こんでますのよ」
「だからその口調気持ち悪いから止めんか光輝」
親父ぃこれには訳があるんですよ。俺は親父と凛花ちゃんに板挟みにされながら、このピンチを乗り切ろうとした。
すると車の運転席と後部座のドアが開閉する音がした。
運転席には身長180センチ位でガタイのいい角刈りの男と、後部座からすらっと伸びた黒髪に前髪を切りそろえた二十代中盤くらいの美女がさっそうと立ち上がった。
服装は黒いスーツを着ていて手には黒い革製のグローブをはめていた。ハッキリ言ってかっこいいクールビューティーだよ。
「おおっ二人共こっちゃ来い!」
親父が忙しなく手招きすると二人の刑事はヤレヤレと両手をあげるジェスチャーした。二人の様子を見るに親父に引っかきまわされていると見える。
大変ですね分かります。
「課長っ今行きます」
「む……」
二人の刑事と目が合った。一人はクールビューティーでもう一人は寡黙で屈強な体格の漢。二人共カッコいいです。
「君が田中課長の娘さんだね?」
「はい」
以外に寡黙な漢の方から話しかけてきた。
「元息子だよ」
黙れ親父!
「本日君達の警備を担当する特殊能力者対策課田中課長の部下山本裕己と申します!」
「あっどうも、光輝ですよろしくお願いします」
律儀に敬礼してくれた。警察の階級とか詳しくないけど、これからは山本警部と呼べばいいのかな?
刑事ドラマとか大抵警部とか呼んでるからね。適当。
「次は私だな。私は山本と同期にして田中課長の部下。恩塚薫子よ。以後よろしく」
恩塚警部はウィンクしながら敬礼した。はあぁ華のあるやり手の女刑事の印象だ。実際そうなんだろう。親父なんかあと数年で追い越して出席するんだろうな。
チラリと彼女と親父を見比べた。
「なんだ光輝その目は?」
「いや、別に」
勘だけは鋭いみたいだな。
「さて、我々が警備するからには道中刺客が来ても安心だぞ」
うん。確かに部下二人は頼もしそうだ。ただ、親父は足引っ張るタイプだな。
「あのう済みませんちょっと質問いいですか?」
委員長が手をあげた。
「んっ我息子いや、娘のガールフレンドの一人かな?」
「違いますパパさん」
委員長即答っ!
「明らかに新咲が刺客を送る可能性があるのに事前逮捕出来ないんですか?」
「それは無理だな。ご存知の通り首都の中心部を封印おっとそれはトップシークレットだった……」
親父さらっと重要なこと吐いたな……。まあ、追求はしないさ、今は必要ない情報だ。
「中心部を囲むように建設された朱雀、青龍、白虎、玄武、四つの高校の生徒には一切手が出せない暗黙のルールがあるからだ」
「だからってそこまで守られる四校の役割ってなんだよ親父?」
さっきから凛花ちゃんのお仕置き受けているけど、好奇心優先してひたすら耐えながら質問を続けた。
「むぐっ今は言えん。そんなことよりお前はクイーンになることに集中しろなっ!」
「ぐっ国家機密かよ。分かったよ親父。新咲を逮捕出来ないなら刺客からは守ってくれるよな?」
「ああ、相手が竜神校の学生なら困りものだけど、外部の雇われ刺客なら叩きのめせるから安心しろ」
生徒だとやりにくそうだけど、それを聞いて安心したよ。
「じゃあそろそろスーパーで買い出し行きたいんだけど?」
「おうっパパにまかせろっ!」
「……親父くれぐれも刺客の人質になるなよ」
「なんだとっ!?」
奇妙な親子のやり取りを見ていた二人の刑事は無言でうんうんと首を縦に振った。
さて、刺客が襲って来る前提だけど、果たして邪が出るか鬼が出るかは分からない。まっどっちも嫌だけどね。
それとさっきから……。
「凛花ちゃんそろそろお仕置き止めようね?」




