残った頼みの綱
俺が推していた二年の角田須先輩が落選して、新咲が当選する最悪の事態になった。今後恐らく権力を使った嫌がらせしてくるはず。
新咲の暴挙を止めるには俺がクイーンになるしかない。次期クイーンを決めるクイーン杯の開催時期は4月の新学期に入ってからと遅い。
いや、俺だけが焦りからかそう感じているに違いない。だって長年同じ月に開催し、なにも不満もなく行ってきたからな。
焦りの要因は性悪女が生徒会長になり、さらに上の権力クイーンの座を狙っているからだ。それだけは俺が止めなければいけない。
まあ、暗い話はヤメヤメ!
今夜は委員長の提案で急きょ決まった励まし会。盆栽部を中心としてお菓子やジュースを持ち寄り皆んなでワイワイやる。ただそれだけの楽しい集まりだ。
明日も祝日遅くまでやろうとはいかない。普通に登校日だからそんなに気合は入れられないか?
それでもお菓子類は用意しなくちゃいけないから、放課後近所のスーパーで買い出しに行こう。でも俺が行くとなると、新咲に狙わられているから(クイーン杯に出ると宣言したらなおさら)王子様の誰かに守ってもらえないと危険だ。
凛花ちゃんを守ると偉そうなこと言ったけど、まだ誰かに頼らずにはいられない弱い自分がもどかしい。
けど、クイーンになったとしてもより厳重な警備が必要になるよな?国のトップね総理大臣とか大統領が移動するときSPに囲まれているように。
なら、俺が求める力とはなんだ?
うーん 、いつでも五人の王子に指示できるのと、鶴の一声でルールを変えさせ罰を不問に出来る絶対的権力だよな?
結局は新咲が求める力と一緒だ。だけどな、違うのはその力を正しいことに使うかどうかだ。俺は皆んなのためにその力を手に入れる。
昼休み俺は委員長と相談した。
「買い出しなんだけど、俺が行くと王子様のガードが必要になるんだ」
「だったら王子様に頼んだら? なに王子白黒赤緑?」
あっ緑はいませんよ委員長。
「そうしたいのは山々なんだけどさあ、ひやっ!」
隣で会話を聞いていた凛花ちゃんが俺のわき腹をツンツンした。原因は俺が男口調だったから。可愛い鬼教官によると何気ない会話の中で、無意識に女性らしい言葉が発せられないと駄目らしい。
もう今日何回ツンツンの洗礼を受けたか……。
「最近王子様方と疎遠になりまして、俺あっ違うよ凛花ちゃん!」
「ちょっとアンタなに急に焦ってんのよ?」
「あっひやっ! ごめん! んっなんでもないですわっ話に戻りましょう。クイーン様はあたしがクイーンを目指すきっかけを与えるためにあえて王子様達に関わるなと指示したとおもうのよ」
言ってからすぐ後ろを振り向いて凛花ちゃんの顔をうかがった。彼女は満面の笑みを浮かべていた。
はあっよかった。今のは合格らしいです。
「ふ〜ん。なら、宣言したから頼めば王子様協力してくれるんじゃないの?」
「ああ、それも思いましたが、ちょっと難しいわね」
「……やっぱアンタさあその口調。カマっけあったの?」
「……」
今ツッコミを入れますか?委員長は会話の内容を急に変更するから疲れるよ。大体クイーンを目指すには女の品格うんぬん理解してます?
「あははっ冗談よ悪かったわね」
「……」
時間ないんだから変な冗談は止めてくれ。
「難しいってなによ?」
「クイーン杯の決まりで王子様は特定の参加者に肩入れすることはルール違反になりますの」
「ふ〜ん。詰んだわねアンタ?」
「……」
委員長は無意識にキッツイこと言うな。
そうだよクイーン杯参加決めた以上クイーン様にも王子様の協力も出来なくなった。コレは痛い。
「ああ、困ったわね。これでは外出もままならない」
「ふ〜ん。あたしだけで買い出しに行ってもいいけど新咲の嫌がらせ受ける可能性があるわね?」
ないとは言いきれない。
ああ、困った。これじゃあ励まし会も開催出来ないね。
「あっそうだ! アンタのパパ警察だったよね?」
「んっ?そうでしたわね親父は、ひゃあんっ!」
鬼教官の容赦ない一撃ツンを受けた。
「パパさん呼んで警備してもらいましょう?」
「ん、出来るかなぁ?親、お、お父様は忙しいですからねぇ、分かりましたわ。駄目元でも電話してお願いしますわ」
「ふふっ田中のパパさんって特殊能力対策本部の課長なんでしょ?かっこいいパパさん会ってみたいわね」
「……」
俺の親父の名は鉄次郎。ごっつい名前だが先祖代々受け継ぐ能力遺伝でツルツル幼女ボディになった親父の姿が脳裏に浮かんだ。
委員長は俺と同じ性転換能力で女体化幼女の姿になった親父を知らない。引き出しにしまって置きたかった家庭の事情だけど、背に腹は変えられない。親父に頼もう。
俺はスマホを取り出し教室の片隅で隠れるように親父に電話した。そう、携帯の持ち込みは原則的に禁止だから。とは言ってもほとんどの生徒は持ち込んで使用しているけどね。
ただ、俺の場合は新咲に見つかったらなにされるかたまったもんじゃないんだよ。
電話に出てほしい反面出て欲しくないもどかしさがあった。こう言う時は大抵嫌な方が優先して起きる。
『おう光輝久しぶりだなぁどうした?』
すぐに親父が電話に出た。今日に限って出んなよと思った。
「いや実はこうこう……こうで」
『よかろう。夕方仕事終わったら行くわ』
「……」
即答すんなよなあ、ヒマなのか親父?
『どうした急に黙って息子よいや、今は女の子だったな。ガハハハハハッ』
「……んっじゃあ待ってるよ親父、わあっ!! ひやっごめん凛花ちゃん!んっんん、待ってるわお父様」
『……うわっ気持ち悪いな光輝。なにか悪いものでも食ったか?』
「……いや、それには訳があって」
『じゃあまたあとで父さんに連絡いれろじゃな。プツッ……』
「ちょっと待て親父っおいっ!」
チッ誤解が解けぬまま親父は一方的に電話を切りやがった。
ああ、最悪だ。今頃母さんに連絡してほくそ笑んでることだろう。
振り返ると口を尖らせ眉のシワを寄せた顔の凛花ちゃんがプンプンだった。そのあと俺は悲鳴をあげるに違いない。
そんな訳で放課後の買い出しの警備はロリ親父に決まった。
さて、親父のことだ。励まし会に参加するだろう。新入部員のシンディーも参加するし、今日の夜はカオスになるな。
次回ツルペタパパとシンディーとの共演です。




