クイーンの特権
強気で言ってみたものの今、俺には状況を打開する策はなかった。
ついこないだまで憧れの存在だった女は醜くく見えた。その女がニヤリと笑った。
「あらぁ生意気」
新咲 麗奈は取り巻きを使って俺を羽交い締めにしたっ!
「くっ痛いっ!!」
「ふふ、非力ねぇアナタの取り柄は綺麗なだけかしら?」
男の時ならこんな奴らに無抵抗で負ける気はなかったけど、くっそ! 女体化してから随分と非力になってしまったんだ!
ちょっとは抵抗してその後に奇跡を期待してたけど、現実は漫画みたいに助けは来ないんだな。
俺は輩達に屋上に連れて行かれて、椅子に座わらせられて縄でくくり付けられ拘束された。
こんなのもう犯罪だよ。
「こんなことしてもいいのか新咲?」
「お待ち、誰に向かって言ってるの?」
俺は気丈にも睨んで言った。すると怒りの形相の新咲が手を上げた。
パァンッ!!
「キャンッ!!」
俺は新咲の平手打ちを頬に食らった。左のほっぺがヒリヒリする。最低だよ気に食わないのなら暴力より口を使ってほしいね。
「次期クイーンに向かって呼び捨てとは万死に値するわ!」
「はあっアンタが次期クイーン候補? ふっ」
「お前っお前お前お前お前っ今笑ったなぁキイイイイッ!」
新咲がヒステリックな金切り声をあげて地団駄を踏んだ。そうか今まで笑われたことがない人生歩んできたからなんだね。
俺は醜態をさらす新咲を見て、なんでこんな醜い女に告白したのか2日前の自分に問いたかった。
彼女の本性が知れて本当にどうでも良くなった。もっと素敵な彼女を探したいものだよ。
とは言っても新咲が無事に返してくれるのか不安だ。
「おいっ田中っ中村っ中歳っ中城っあと平ハっこの女ヤッて良いわよ」
「へい」「へい」 「へい」 「へい」
……田中と中村中歳中城四人の輩が一斉に返事をした。なんで中が付く苗字の輩を集めた?
「はい」
最後に平ハが返事した。お前こそ返事は「へい」だろうよ?
「へっへっコイツはべっぴんだぁ♡」
平八が両手をワキワキさせながら俺に近づく。全く名前も言葉使いも古風な男だ。
待てよまさかこの男も能力者?
「どうでもいいか ……」
ガインッ!!
「むほっ!?」
平八に金蹴りを食らわせてやった。
「おごおぉぉぉ …………」
股間を押さえてうずくまる平八。そりゃ痛いでしょ急所蹴りは? んっ俺は男だったから繰り出せた攻撃だ。
「こんのアマッ!」
「きゃっ!!」
逆上した輩四人に俺は体を掴まれた。痛いっ本当に非力だから抵抗出来ないってのも結構ヤバイ!
「もういい。お前達ヤッてしまいなさい」
「ぐっ こっこんなことしたら退学じゃ済まないよ?」
「ふふふ ……」
俺が言うと新咲は不敵な笑みを浮かべた。
「な、なにがおかしい?」
「クイーンの特権があれば校内でなんでもやっても許される」
「ぐっ特権だと ……」
「ふふっお分り?」
クイーンとは春に行われる美人コンテスト通称クイーン杯の優勝者の称号をクイーンと呼ぶ。クイーンになった者は絶対権力を持ち校内ならば、なにやっても許される特権が与えられる。 だから新咲が犯罪まがいのことを平気でする訳だ。
だけど待て、疑問に思うことがひとつ。
「クイーンの特権でなにやっても許されるとアンタが言うのはおかしい?」
「文句あるのかしら?」
「だってアンタはクイーンじゃないだろ?」
「 …………これ以上言うな」
ニタニタ笑ってい新咲から笑顔が消えた。
「私は次期クイーン候補よ。だから全ての悪事はクイーンになってからもみ消せる」
………… 狂ってる。そもそもこんなゲスな女がクイーン杯で優勝出来るのか?
ギリッ!!
んっ歯ぎしりの音が聞こえた。
「アンタの心の声聞こえているわよ ……」
あっしまった! 新咲の能力は人の心の声を聞くサトリだっ!
「お前達。この女をヤッた後屋上から突き落としなさい」
「へっ? 麗奈様っ本当に良いんですか?」
「構わないわ。どうせ私がクイーンになって罪をもみ消すから」
くっ 無茶苦茶だ。この女はまともな思考じゃないっ!
さっきからクイーンの特権にこだわっているけど、まるで自分が来年クイーンに決まっているかのような振る舞いだが、なれなかったらどうするつもりなんだ?
「聞いてるわよっこのクソアマ!」
「あっ!」
「もう良いわっアンタ達さっさとヤッてしまいなさい」
ドンッ!
「キャッ!?」
輩達が待ってましたとばかりに俺を突き飛ばし取り囲んだ
「へへっお言葉に甘えます」
「元男なんて関係ねぇ! 女になったのならだ」
「ぐへへっ気の強いツインテ超好み♡」
「おっぱい触っても良いよね?」
くっどいつもコイツも輩共は知性のないセリフを言って俺の体に手を伸ばしてくる。 ちょっ本当にマズイやられちゃうっ!
絶体絶命のピンチをむかえた時、奇跡が遅れてやって来た。
「寄って集って大の男が女の子一人をいじめて不粋だな?」
屋上入り口から男の声が聞こえた。入り口の壁に寄りかかる全身黒い帽子とスーツの出で立ちの男。
学生なのにはわからけど、 スーツって校則違反じゃ?
「おいおいっ本当に醜い連中だ」
続いて現れたのは赤いスーツを着た金髪ロン毛の色男。手には真っ赤な薔薇を手にしていた。
「だっ誰よ貴方達っ!?」
突然の只者じゃない乱入者に動揺した新咲が叫んだ。
「ふっ君が次期クイーン候補なら、俺達のことすでには知っていたとは思っていたけど?」
赤いスーツの色男がズボンのポケットに手を入れて、俺にウインクしながら言った。
言っとくけどイケメンだろうが心はトキめかない。俺は背中がモゾモゾした。
「あっ貴方達はまさか?」
「ふっやっとお気付きですか? そう俺は現クイーン様に仕える5王子の一人。薔薇の貴公子だぜ!」
赤王子は名乗ってから薔薇を口にくわえて、俺に向かって再度ウインクした。
「 ………… 」
もう駄目。助けてくれるのは有り難いが、赤王子アンタは一番苦手なタイプだよ。




