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生徒会選挙6

 

 朝のホームルームの時間で生徒会選挙の投票用紙が配られた。

 投票結果は明日の朝校門の前で発表される。

 自分は立候補してないけど、結果次第では学園の秩序が大きく変わると思うから内心ドキドキだ。


「自分がいいと思った候補者の欄に○を付けて間違えのないようにな」


 担任の土橋先生は説明しながら用紙を配り終えると皆決めた候補者の欄に○を付けていった。

 ウチのクラスは俺が一生懸命角田須先輩にしてくれとお願いしたから大丈夫だと思いたい。

 あとは一学年はうーん 半々かなぁ?流石に9割は無理でしょう。半分票獲得して二学年と三学年はの票で決まるかな?


 もう本当にあとは神に祈るしかないね。


 角田須先輩の欄に○を付けてからため息一つして横目で見ると、凛花ちゃんが○を付けていた。

 そう。今日は大切な日だから頑張って登校してくれたんだ。ん、出来れば明日からもずっと登校してほしいんだが。


「はいっ皆んな書き終えたかぁ?それじゃあ、後ろから回収して」


 ホームルームが終わると先生が、集められた用紙を束にして出て行った。こんなに緊張した投票もあっさり終わった。

 先生が出て行ったせいか教室が生徒達の声で騒がしくなった。皆笑顔でリラックスして会話していた。

 その中で俺と凛花ちゃんだけは不安な表情を浮かべていた。


 角田須先輩と新咲何某との一騎打ち。裏で悪どいことをして生徒会長の権力を狙う女の恐ろしさを、皆んな知らないから笑顔でいられるんだ。


「光ちゃん……」


 すがるような目で凛花ちゃんは俺の顔を見つめてきた。

 分かってる。もしも、最悪の結果になった場合、今度は俺が立ち上がるさ。


「心配しないで凛花ちゃんには俺がついているから」

「うんっありがとう」


 凛花ちゃんは眼尻にたまった涙を指で拭った。


 ◇ ◇ ◇


 放課後俺は凛花ちゃんを連れて部室に入った。

 中には副部長が本を読んでいた。


「副部長なに読んでいるんですか?」


 なにやら薄い本だ。まさか成人向け同人誌?


「ああコレは奈良サボテン愛好会記念本だよ」

「また渋い本読んでますねぇ副部長」

「まあね、ほらこの名人達が育てた品評会のサボテン達凄いよね」

「あ、はぁ」


 白黒の写真には皆30年モノのサボテンの写真が掲載されていたけど、俺には高度過ぎてついていけなかった。

 ただ、凛花ちゃんは興味深々に写真を見入っていた。


「副部長ウチは盆栽部なのに盆栽少ないですね?」


 俺が言う盆栽とは松とか紅葉の盆栽を示していた。


「うんまあね、いい盆栽は長い年月が経過したモノ。だけど、年月が経過したモノは高額で買えないから若い株しか買えない。でも若い株では品評会とかに出すことは出来ないから、結果的にサボテンとか肥大した根を育てるコーデックス系とかになっちゃうんだ」

「副部長熱いですね」

「えっストーブつけてないよ?」


 いや、ストーブじゃなくて先輩の植物に対する熱意。


「そうだ。せっかくだからお茶入れるよ」

「副部長俺達に気をつかわなくても」

「いいよいいよ。僕も君と話したいことがあるからさ」

「なんの話ですか?」

「もし新咲が生徒会長に当選した場合だよ」


 ぐっ一番危惧している問題だ。角田須先輩には悪いけど、とても嫌な予感がする。


「もし、新咲が生徒会長に就任した場合、真っ先に僕らに対して嫌がらせを行うはずだ」

「分かってます」


 ボトボトボトボト……


 副部長は急須に入れたほうじ茶を湯呑みに注いだ。イケメンなのに渋いですね。


「分かってる?角田須君が負けたら水着になるアッチッ!」


 副部長熱い湯呑み急に握るから。


「生徒会選挙のあとに行われる大イベントクイーン杯に出る覚悟はあるのかね?」

「……ちょっと副部長言い方ジジくさいですよ」


 シュバッシュンッ!


「ひっ!」


 副部長のお茶が生き物のように飛び出し、鋭利な刃物の型に変化して俺の喉元で止まった。


「いい加減本気になってくれ。もう時間がない。今すぐにでもレディのたしなみを学ぶべきだ」

「俺にレ、レディのたしなみを?それって男の心を捨てろってことですか?」

「ああそうだ。半端に男心は残してくれるなクイーン杯は甘くない」

「……わ、分かりましたからその水の刃物を解いて下さい」

「間違えるなコレはお茶だ」


 えー注意するのそっち?


「ふーん、ちょっと熱くなって済まなかった。しかし、今日から修行に入ってもらう」


 副部長の眼鏡のレンズが光った気がする。


「あの副部長。明日の結果を見てからじゃ駄目ですか?」

「駄目だ。最悪の事態を想定して動かないと駄目だ。よって光輝君に修行の課題を課す」

「んっな、その修行とは?」

「今から女言葉を使うこと」

「なっ!」


 無理無理っ急に「あたし」とか「だわ」とか「そうよ」とか恥ずかしくて使えっこない。

 だって皆んな俺が元男子って知ってるから、女言葉使ったら「やっぱりその毛があった」と噂されるに決まっている。


「やっぱり急に女性らしい言葉使うなんて無理ですよ」


 ヒュンッ!グルッ!


「うわっ!」


 お茶の水が蛇となって俺の首を絞めた。流石水の能力者だ。


「今喋った言葉女性らしく言い直せ」

「……わ、分かりました。くっでもなんで俺が……」

「光輝っ!」

「ひっ!や、やります。言えばいいんでしょ副部長。ぐ、ん、ん、やっぱりあ、あたしには急に女性らしい言葉を使うなんて無理だわっ……」


 言った。初めて女を意識した言葉を使った。

 ああ、恥ずかしい。親しい仲間の前でも恥ずかしいって全校生徒の前じゃ絶対無理。

 恥ずかしくて凛花ちゃんの顔も見れない。どんな顔して俺のこと見ているか気になるけど。


 ツンツンと指で左肩を突かれた。


「んっなにかな凛花ちゃん?」


 言葉を選んでなるべく女言葉を使わないようにしたけど、副部長の鋭い視線が怖い。


「光ちゃんとっても色っぽかったよ」

「へっへはっ?」


 い、色っぽいって生まれて初めて言われた。

 顔は多分真っ赤でクラクラしてきた。ああ、明日の選挙結果次第で男の矜恃(きょうじ)を捨てることになる。


「くっく――う」


 俺は下を向いて唸った。そして腹をすえた。


「凛花ちゃん帰るわよ」

「あっうん」


 鋭い目つきでツインテールをなびかせ部室をあとにした。後ろから凛花ちゃんの足音が聞こえるが無視して歩いた。

 はあっごめんね凛花ちゃん。これも修行なの。


 ◇ ◇ ◇


 翌朝運命の生徒会選挙当選者発表日。結果は朝一校門に当選者の名が張り出される。

 俺と凛花ちゃんは手を握って校門に向かった。俺達が暮らしている寮が校舎の中だから、まず外に出て張り紙を確認しなくてはいけない。


「緊張するね凛花ちゃん」

「うん。でも大丈夫だよ」

「そうだね。角田須先輩が勝つよ」

「ううん」


 凛花ちゃんは何故か首を横に振った。だけどその目は不安ではなく、強い意志が宿る目だった。


「違うよ。光ちゃんが側にいるから私は大丈夫」

「凛花ちゃんありがとう」

「きゃっ光ちゃん?」


 俺は思わず凛花ちゃんに抱きついた。


「あらぁお熱いこと……」


 温かい気持ちに水をさす不愉快な女の声がした。

 前を見ると陰険な顔の新咲がニヤつく輩達を率いて待ち構えていた。


「退けてくれます?」

「ふっ、くれますですって?」


 新咲は笑った。そして見覚えのある松の盆栽を右手で持ち上げていた。まさか部室のっ!?いや、盆栽部以外で盆栽なんか育てるかよ!


「こんなモノ」

「おいっ待て!」


 ガシャンッ!!


「!!」


 新咲は盆栽を投げ捨てた。大切な盆栽がぐちゃぐちゃだ。

 周りの取り巻き達が薄ら笑いを浮かべているのが本当に腹が立つ。

 全くここは世紀末か?俺は寝ぼけているのかと目を擦ったが、どうやら現実だった。実に残念だよ。


「てってめぇっ新咲っ!」


 ついカッとなって副部長から命じられた女の修行を忘れた。

 だって許さない。大切な盆栽を粗末に扱って、木だって生き物なんだからな。


「そ、そんなことしていいと思っているのか新咲!」

「ふふっいいのよっ元クイーンからお(とが)めなければ次に偉いこの新咲麗奈なら許される。ふふ、その意味分かるよね?」

「な、なに、まさかっ」


 堂々と校則違反してもこの余裕の新咲を見て俺は最悪の事態を思い浮かべた。

 校門に目を移す。選挙結果を見ようと生徒達が集まっていた。くそっここからじゃよく見えないな。


「きゃあっ!」


 えっ俺の後ろにいた凛花ちゃんの悲鳴が聞こえた。

 振り向くと凛花ちゃんがモヒカン頭の男子生徒に腕を掴まれていた。

 なんてこった。俺達がクイーン様に保護されてからしばらく手を出してこなくなったのに。


「あら多目したいの?」


 新咲は多目と呼んだ輩の暴挙を止めるどころかあおるように聞いた。


「へへっ新咲の姉さん。したいです」

「別にいいけどトイレ使っちゃ駄目よ」

「分かりやした。それにしてもこの女地味だけど凄く可愛いぜ。へへっ俺グルメだから(女の方の)分かるんです」


  チッ多目は下衆な台詞を吐いて凛花ちゃんを羽交い締めにしている。


「い、嫌っ光ちゃん助けて!」

「り、凛花ちゃんっ!」


 助けたいけど非力な女の子になった俺では助けに行くのは困難だった。なんとかしないと思うし、選挙結果も気になるから頭が混乱して判断力が鈍ってきた。

 こんな時に限って王子様達が助けに来てくれないのはなんでなんだ?


 美少女になって学園の人気者になった俺は少しいや、全くもって浮かれていた。

 再び新咲の嫌がらせにあって助けが来なくてなにも出来ない自分を客観的に見て、ああ、俺は力がない……。


 ドサッ


 脱力して膝が落ちてしゃがんだ。

 それに前を見ようとしても、悔しさで涙が出て視界がぼやけていた。


「ふふっいい気味よ中島」


 ぼんやりしたシルエットの新咲は勝ち誇った顔で俺を見下ろしていた。


予定していた急展開に近づきました。

主人公はちょっとピンチになりますがよろしく。


この更新でペンネームを変更したいと思います。

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