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生徒会選挙3

 

 今日は凛花ちゃんが頑張って登校すると言った。しばらく休むかなぁと心配していたけど大丈夫みたいだ。

 二人で校舎に入ると凛花ちゃんが俺の腕を部室の方に引っ張った。


「んっどうしたの?」

「サボちゃんが気になるから見てもいい?」

「あーいいよ」


 最近すっかりサボテンにハマっている凛花ちゃんは、毎朝確認するのが日課になってたみたい。

 その気持ちはよく分かる。サボテンは夜に成長するから朝起きて確認すると一回り大きくなっている。まるで人間に応えてるとおもって感動するんだ。


「ふぃぃー寒いなぁサボテン大丈夫かな?」


 冷んやり冷えた廊下を歩き俺は胸に両腕を回して身震いした。すると横で凛花ちゃんが冷めた目で見つめていた。


「んっどうした凛花ちゃん?」

「光ちゃんおっぱい大きいから寒くないよね?」

「あ……」


 思わず絶句。胸が大きいからって寒くないだろと言われるのは偏見だ。た、確かに胸周りはぽかぽかしているけど他は寒いぞ。

 ちょっとショックだったのが凛花ちゃんに言われたことだ。あ、でも凛花ちゃんはさ、俺の胸が羨ましくてそんな嫌味言ったのかな?

 だから確認のためチラリと凛花ちゃんの胸を見た。


 悪いけど自分と比べて凛花ちゃんの胸はあんまり膨らんでない。あっだけどむしろ控えめな方がいいと思うよ!


「光ちゃんは私の身体のどこ見ているの?」

「はっはいっなんでしょう?」


 目が合った。凛花ちゃんは大人しいと思ってたけど最近俺に対しては強気だ。女の子同士だけど将来俺達結婚したら凛花ちゃんはしっかり者の姉さん女房になるのかな?

 ああ、またいらん妄想だ。俺がそう思っても相手が了承しないと実現しないんだな。


「ごめん。おっぱいと言われ思わず凛花ちゃんのおっぱいと比べて見た……」

「…………」


 凛花ちゃんは目を丸くして立ち止まった。


「凛花ちゃんどうした?」

「光ちゃんのエッチ!」

「ひやんっ!」


 お仕置きとばかりにわき腹を突かれた。相変わらず他人に身体を触れられると刺激が何十倍にも返ってくる。突かれただけでこんなんだからそれ以上の行為は……。

 俺は唾を呑み込み首を振って卑猥な妄想を打ち消し凛花ちゃんの手を引っ張って歩きを再開した。


「凛花ちゃん入ろ」


 部室に着いたのでポケットから部室の鍵を取り出した。


「あれ?鍵が開いている」


 どうやら部員の誰かが先に鍵を開けて入っているみたいだ。部室の鍵は新入りのシンディー以外の部員各自に渡されているから、誰が開けても不思議ではないんだ。

 ただ、朝早くから部室に入るのは俺と凛花ちゃんだけだ。


 凛花ちゃんは不安そうに俺の背中に身を寄せた。あっ!控えめだけど背中に柔らかな胸の感触がする。


「と、とにかく入ってみよう」


 ここはレディファーストと凛花ちゃんを先に入れるところだけど今回ばかりは俺が先に入って安全を確かめなくてはいけない。

 まっ俺も女の子なんだけど心はまだ男だ。気にするな。


 戸を引いてそっと中を覗くとウチの福副部長青山海斗(あおやまかいと)がしゃがんでなにやら作業をしていた。冴えない眼鏡の副部長はこれでもクイーン様を警護する王子の一人青王子だ。

 水を操る能力でとっても頼もしいけど非戦闘時は優しい先輩だ。

 そんな副部長が朝早く一人でなにやら作業に没頭していた。


「副部長おはようございます」


 俺から声をかけると副部長は立ち上がってシャベルを持った手で額の汗を拭いた。今日は外は寒い。だけど部室はストーブで暖かく暑いくらいだ。


「来ると思ったよ」

「はあ、ところで副部長は今なにを?」

「ふふっごらんの通り仕入れたサボテンの苗の植え替えさ」


 副部長が言う通り床には結構な数のミニサボテンの剥き出しの苗と鉢と調合された土が置かれていた。


「このサボテンは?」

「ちょっと早いけど9月の文化祭用のサボテンさ、ちょっと気が早かったかな?」

「うーん。先輩気持ちは分かりますが夏型のサボテンの植え替えを冬にやるのはいただけませんよ」


 植物には春型、夏型、冬型と種類によって三つの成長期に分類される。で、サボテンは夏型で植え替えは春から秋までが望ましい。逆に休眠期の冬に植え替えするのは避けた方がいいと言われている。

 なんで副部長があえて植え替えたと言うのは多分、早く植え替えしたくてうずうずしたんだと思う。 


 サボテンを育てると分かるが、主に三つの欲望が芽生える。一つは欲しいサボテンの苗を買ってしまう物欲だ。これは止められない。この物欲の問題点は金銭面もあるけど、必ずコレクターに行き着く問題は置き場所が無くなること。サボテンの種類は園芸改良品種を含めると40000種にも及ぶと言われている。

 その中で気になる品種だけ買っていってもあっと言う間に置き場所が無くなる。愛好家の悩みのタネだ。


 それと欲望二つ目が苗の植え替えだ。

 興味ない人から見れば掃除とか人が嫌がる作業に見えるかも知れないが、植物の植え替え作業は意外に楽しい。

 もう慣れてくると市販のサボテン土を使わずに自分で土を調合して水捌けのよい土を使う。この調合作業もまた楽しい。


 最後に三つ目は水やりしたい欲望。

 体内に水を貯めるサボテンには頻繁に水やりしたら腐るので夏なら週に一回。冬なら春まで断水させるほど水やりは重要。

 滅多にやらない水を与えるとサボテンは翌日一回り成長することが多い。だから水をあげたい衝動にかられる。


 それで先輩は植え替えたい欲望から冬に植え替え作業を行なってしまったのだ。


「先輩結局苗を購入したのですか?」

「うん。実生(みしょう)(種から育てる意味)かカキ子(本体から吹き出た子サボテンを取り出した苗のこと)で増やして文化祭に出品しようかと思ったけど時間がないから苗を取り寄せた」

「そうですね。カキ子はともかく実生で販売出来る苗に育てるのは5年はかかると言いますもんね」


 ウチのお爺さんが確かにサボテンは成長が遅いと言っていたのを思い出した。とにかくサボテンの成長はゆっくりだからひたすら待つ必要がある。

 花を咲かすのにも時間がかかるし、交配させて新しい品種を作り出すにも何十年と時間を要する。園芸特にサボテンは時間がかかるから愛好家が年配が多い。

 そんな理由で我が盆栽部は他所から見ればしぶーい部活動なのだ。


 そんな渋い盆栽部に俺を含めて美少女部員がいることになる。今後も俺目当てで女の子部員が増えるかも知れない。

 ま、現実は美少女より下心見え見えな男子部員が増えそうだけどな。


「種なら兜とか高額人気種を出品したかったんだけど時間がないから断念した」


 兜とはまん丸で針の無い一番人気と言っても過言ではないサボテンだ。ただ、この品種は非常に高価で普通の園芸店ではお目にかかれない。だから兜を手頃な値段で出品したら売れるはずだった。

 しかし……。


「ですよね」


 専門店で売られている高額種のサボテンの種は業者から数百円単位で購入出来ることを意外と知られていない。

 そこそこの人気種でも10粒で150円とか一粒350円とかあるが、苗に比べたら驚くほど安く手に入る。

 まあ、種が安いからとは言っても親株にまで成長させるには時間がかかるから、そうそう手が出せるものではないのは確かだ。


 ただ、失敗もあるけど大抵発芽するから面白い。今回は時間がないから副部長が諦めた訳だ。


「ははっそこは妥協して安い普通種を出品することにして今から植え替えして文化祭までに成長させたいと思ったんだ」

「なるほど確かに文化祭ですもんね。金儲けは考えない方がいいですね」

「うーん。そうなんだけどさぁ文化祭で部費を稼ぐ必要があるから苗で稼げなくなるとね……」


 副部長は土で汚れた手で頭を掻いてチラリと俺達を見た。


「んっなんですか先輩?」

「悪いけど君達の写真撮っていいかな?」

「写真?」


 また、唐突に写真って写真部じゃあるまいに。


「美少女になった光輝君は今じゃ学園中で人気だろ?」

「そ、そうかも知れませんね……」


 人気者なのは把握している。だけど、自分の口からは言えない。新咲みたいに言う自慢げに言うのは嫌いだから。

 副部長は俺のブロマイドを作って男子達に売りたいんだろう。ちょっと嫌だけど部費の足しになるなら協力してもいい。


 しかし、副部長の一言が引っかかる。


「先輩っなんで君達と言いました?」


 そう。凛花ちゃんも含まれる。


「あ、いやその……」


 頭を掻いて歯切れの悪い返事。


「はっきり言って下さい先輩」

「あっ分かった分かった。あのさっ君といつも側にいる凛花君も男子ね間から噂になって今やファンクラブが出来るほど密かな人気さ」

「なっ……」


 頭が真っ白になった。

 凛花ちゃんは結構美少女だ。今まで注目を浴びなかったねは控えめな大人しい性格だからだ。

 それが俺のせいで注目を浴びてしまったんだ。


 ハッとして側にいる凛花ちゃんを見ると凛花ちゃんは顔を下に向けていた。


「凛花ちゃんは絶対駄目だ!その代わり俺の写真を撮影してもいいです先輩」

「そうですか、凛花君は残念だけど光輝君で十分だね。なら、放課後撮影しようか?」

「へっ今日ですか?」

「うん。忙しい中悪いね」

「べ、別に構いませっはわわっ!?」


 急に凛花ちゃんが俺のわき腹を突いてきた!止めてビクンとするでしょ♡


「なにするの凛花ちゃん?」

「光ちゃんはそんなエッチな撮影する人じゃない……」


 顔を上げた凛花ちゃんは口をどがらせ顔が真っ赤だった。やきもち焼く凛花ちゃんも可愛い……。


「だ、大丈夫だって脱がないからねっ?」


 俺は凛花ちゃんをあやしつつ助けを求めるように副部長に目配せした。


「あのその、言いにくいんだけど水着撮影いいかな?」

「ええっ――それはちょっとふあっ♡」


 凛花ちゃんにまたわき腹ツンツンされた。怒るのは分かるけど止めて癖になるから……。

 こうして朝が終わり教室に向かった。忘れていたけどやることがあったんだ。

 生徒会選挙で角田須先輩を勝たせるために一学年の生徒達に宣伝すること。


 俺は宣伝するのは昼休みと決めた。


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