絶対登校させる
朝になっても凛花ちゃんはベッドから出ようとはしなかった。昨日先生になに言われたのか分からないけど、よっぽどショックを受けたみたいだ。
「凛花ちゃん起きて遅れるよ?」
「……今日学校休む」
「駄目っ今日休んだら余計学校に行けなくなるっ!」
俺は毛布をめくって凛花ちゃんの腕を掴んだ。
「やだっ!」
首を横に激しく振り抵抗する凛花ちゃん。だけどここで甘やかしてはいけないんだ。俺は力尽くで引っ張った。
「ん――凛花ちゃん駄目だ。俺が必ず登校させる」
「どうしてっ光ちゃんはそんなことする友達じゃない!」
「いいや。友達だからこそ登校させようとしてるんだ」
「……意地悪でじゃないの?」
凛花ちゃんの力が緩んだから一気に引っ張ってベッドから引きずり出すのに成功した。ふうっ俺もか弱い女の子の身体だから、精一杯の力しか出なかったんだぜ。
よろけた凛花ちゃんを受け止め尻餅をついた。
「いたた、大丈夫凛花ちゃん?」
「ん…………」
俺の胸に顔を寄せて落ち着く凛花ちゃんだ。ちょっとくすぐったいけど、俺のふかふかの胸で落ち着くならよしだ。
「ねっ学校行こう。凛花ちゃんは俺が守るから」
「……光ちゃんは大丈夫なの?」
凛花ちゃんは顔を上げ不安そうに聞いた。
「ああっ大丈夫俺のことはさ」
「ありがとう光ちゃん。私もう一回だけ勇気出してみる」
凛花ちゃんはそう言うと意を決して立ち上がった。俺は安堵の笑みをこぼしたら凛花ちゃんも応えるように笑った。
支度して制服に着替えたら、まだ時間があるから食堂に行くことになった。食事をしたら部屋に戻らず登校するんだ。
食堂に行くと茶碗を持ってご飯を盛った。ここの食堂はご飯と味噌汁はセルフサービスなんだ。凛花ちゃんはいつも少なめにご飯を盛るから『沢山食べないと力つかないよ』と言うと凛花ちゃんは『太るからやだ。それに光ちゃんは一杯食べても太らないからズルイ』と反論が返ってくる。
そうだな。いくら食べてもスラッとしているのも能力なのかな?
いやいや、それはないっしょ!
「さて、今朝も納豆食べますか、凛花ちゃんももちろん食べるよね?」
「うん、光ちゃんが食べるなら私も食べる……」
あー凛花ちゃん嫌なら無理に俺に合わせなくてもいいんだよ。あんまり俺に合わせると自主性がなくなっちゃわないか?
さて、今日の朝ご飯のおかずはと、うんっシシャモか。
おかずを受け取ると座る席を探した。席は特に決まっていない。
んっ一番左端の席に新入部員のシンディーが座っていた。彼女はまだまだ謎が多い金髪美少女だ。
凛花ちゃんは俺の服を引っ張っり前の席に座ろうと指差し誘うが、流石に同じ部員なんだから無視するのは悪いと思う。
「凛花ちゃんゴメン。シンディーと一緒に食事しよ」
「む――光ちゃんの浮気者……」
「え?」
凛花ちゃんは口を尖らせ不満げに言った。浮気者って友達同士でもそう思うのか?
そんなこと言われると、モテない男だったら勘違いするよ。
「シンディーさんおはよう」
「えっ!?」
はっとした驚きの表情を浮かべた彼女は顔を見上げた。えっシンディーさん俺達が入って来たの気づかなかったの?
「シンディーさんまだ眠いの?」
「あっ……おはっ、いや、ハロー」
あっ今言い直した。普段は日本語使ってるのかな?
とにかく怪しい。良し。これを機に聞いて正体をさぐるぞ。
「相席してもよろしいですかシンディーさん?」
ふっ嫌とは言えまい。
「ソーリー」
「……」
断るのかいっ君は正直だな。だけど俺は構わず正面に座った。
「ノー」
シンディーは小さな声で否定して首を横に振った。マジで見た目と仕草は外人さんだけど、性転換した俺の見た目も金髪でまんま白人美少女なんだよな。
中身は日本人だけど、だからシンディーの見た目が外人でもそうとは限らない。俺と同じ性転換者かも知れないのだから。
「さて、遅刻するから早く食べよう凛花ちゃん」
「うん」
顔を見合わせ仲良くシシャモをシャリシャリと食べた。シンディーは嫌いらしく眉を潜めて見つめていた。
よく見るとシンディーは牛乳だけしかお盆に乗せてなかった。それならお盆に載せる意味はあったのかなぁと思う。
続いて納豆をかき混ぜたらシンディーは顔を背けた。
「ノーよくもそんなモノ食べれますね?」
「やっぱり納豆苦手だよね?ごめんね納豆の時に相席して」
「あなたクレイジーよ……」
シンディーはつい本音を漏らした。だけど俺は彼女をいじって楽しくて仕方なかった。
とは言え隣に座った凛花ちゃんの殺気が俺の肩に突き刺さった。凄まじい嫉妬心だ。このままでは刺されかねないので話題をそらしてみることにする。
「シンディーはなんで従業員用の食堂利用してる。俺達と同じで学園に住んでいるのか?」
「ソッソーリー」
ガタッ
「あっ逃げた!」
俺の質問がよほど都合が悪かったのかシンディーは席を立って足早に食堂から出て行った。
白王子の逃げ方と一緒だ。怪し過ぎるだろ?
「仕方ないなー凛花ちゃん行こか?」
俺も席を立って手を差し伸べて言った。小さな手が握り返した。
「信じていいの?」
「ああ、守るから」
返事はなかった代わりに握る手の力が強く感じた。
「行こっ!」
俺達は手を握りあい校舎の入り口に行くと生徒会選挙の候補者達が演説していた。その中に新咲の対抗馬の角田須先輩もいた。
角田須先輩は俺に気づくと演説をやめ、こっちに来てくれた。
「やあっ中島君にえーっと君は……」
角田須先輩は凛花ちゃんを指差ししばし考えているようす。名前覚えてないのはいいけど指差すな。
「凛花です」
本人が答えた。それが手っ取り早い。てか、先輩っ凛花ちゃんを困らすなよ。
「中島君。僕との約束覚えているよね?」
「分かってますよ。先輩が勝ったら付き合っ痛っ!?」
凛花ちゃんがわき腹のお肉をギュッとつねった。
「痛いっ痛いたらやめて凛花ちゃん!」
「むぅーそんなの私望まない」
「痛いっわわっ分かってるけど先輩を勝たせるためなんだ許してっ!」
「駄目っ!」
「きゃんっ!」
ついつい変な声を出してしまって道行く生徒達が振り向き寄って来た。こいつは僥倖。先輩の演説の集客の力になった。
ふい〜痛かったけど助かったよ凛花ちゃん。
「とりあえず先輩の実績と知名度と人気なら新咲に勝てる!」
「あらそうかしら?」
「!?」
背後から嫌味な声がした。振り返るとイケメンばかりを集めた取り巻きを従えた新咲が、ニヤついた顔で見つめていた。
見たくもない顔。コイツのせいで何度も被害を受けたことか、証拠もないし、あったとしても権力で揉み消さされる可能性あり。
だからなるべく関わりたくはなかった。でも、俺は新咲を睨んだ。
「あら、生意気な泥棒猫」
「なんだと?」
「泥棒猫と呼んでなにが悪いのかしら?だって貴女、学園の話題を私から奪ったし、今度は生徒会選挙の私から奪うつもりですわねっこのぬけぬけと泥棒猫がっ!」
綺麗な新咲の表情が醜く歪んだ。余りの気迫に俺は後ずさりしていた。凛花ちゃんは不安そうに俺の背中に身を隠した。まっ俺も女の子だから身を隠せるほど背中は広くないよ。
「なに言われようと俺は負けない」
そう反論して新咲を睨んだ。
「生意気っここに秩序がなかったら男達にレイプさせて殺してたわ……」
「くっ……」
未遂に終わったが、本当に裏でやってるから俺はゾッとした。
「ふふっ冗談よ。とにかく生徒会選挙は正々堂々戦いましょう」
本当か?
新咲はそう言って踵を返し長い黒髪が舞って校舎に入って行った。そのあとどうするのか観察していると、取り巻きが新品の上履きを懐から出して履き替えるお手伝いした。
毎日新品に履き替えてんのかあの女。金の無駄だし、毎日使い捨てじゃ環境によくないよ。
全く困った女だ。たからこそ、この選挙新咲には勝たせる訳にはいかないんだ。
主人公の見かけは金髪ツインテールのツンツンした感じの美少女なのに、お人好しで優しいところのギャップが魅力です。
生徒会選挙とクイーン杯の展開と盛り上げるべく書いていきます。




