新入部員シンディー
「まずは、落ち着こう、ねっ?」
プンスカ怒っている凛花ちゃんをなだめた。真冬だと言うのに額の汗が止まらない。落ちつかないのは自分の方だ。
生徒会選挙で角田須先輩が勝ったら付き合うと約束したのがそもそもの原因だったが、そのあとさらにシンディーが登場して、風呂場の出会いの話とほっぺにキスが決定的になった。
風呂場での謎の美少女との出会いの話を凛花ちゃんに黙っていたのが不味かった。いや、だってまさかあの時の少女が目の前に現れるなんて予想出来なかったからね。
最後にトドメを刺したシンディーは、後ろに手を組んでニコニコしながら俺と凛花ちゃんの痴話喧嘩を観察していた。
全く見てるなら助けてくれよ。君が原因なんだから。
しかし、激しく嫉妬する凛花ちゃんって本当に俺のこと?
いやいや、モテない男特有の(今は女だが心は男)淡い恋心は捨てろ。どうせ相手はいい人程度にしか思ってなかったというオチに違いない。
ああ、俺ってこんなスーパー美少女になったってのに、いつまでも負け犬陰キャラ思考なんだよ。
果たして心まで変われるのか俺?
「おおっ君かシンディーさんは?」
「イエス」
ようやく気付いた桃野部長が両手を広げて歓迎した。というかあんな派手な外国人が入ってきたんだ気付けよ。
「皆んなちょっと集まってくれ」
部長が手招きして皆んなを集めた。新入部員の紹介らしいがちょっと遅いよ。
「紹介する。今日から我が盆栽部に入部することになったシンディーさんだ」
「ハローワタシイギリスからやて来たよ。シンディーです。よろしくしますデス」
「…………」
シンディーは明るく手を振って自己紹介した。なんかキャラ作ってないか白王子……。
何故白王子と疑うのは、風呂場で逃げた時すぐ側に白王子がいたことだ。偶然にしては余りに不自然。俺が思うに彼女は白王子となんらかの共通点がある。
絶対に怪しい。大体なんで可憐な外国人の少女がこの地味な盆栽部に入部希望した?
答えは簡単。俺が目的だろう。そして、もし正体が白王子なら嫌がらせ目的で入部したのだろう。現に彼女のせいで凛花ちゃんとの仲が悪化した。もし白王子なら今も心の中でほくそ笑んでいるに違いない。
「ワタシはこれからなにをすればオッケーデスか?」
「んっそれならえーと……」
部長が迷いながら俺の方を見た。オイッこっち見んな!
「悪いけど中島君。シンディーさんに盆栽の基礎を教えてくれないか?」
「…………」
ほら、俺に押し付ける。確かに俺は下っ端だけど、今は押し付けないでくれ。背中から凛花ちゃんの怒りの視線が突き刺さる。
頼まれたのは断れないので俺はシンディーに水やりとか土とかの基礎知識を教えることにした。
◇ ◇ ◇
やることないんで詳しくシンディーに教えることにした。
「ちょっと来てシンディーさん」
すると凛花ちゃんも怖い顔して寄って来た。本当ムキになってますわ、まあ、凛花ちゃんにも教えてなかったからね。
「冬のサボテンや多肉植物は休眠期だから、春になるまで断水するのが基本。ただし、常時暖房を入れている室内のサボテンは起きているから、月一回は水をあげて」
「イエスッ分かりましたデス!」
「…………」
口調がまんま白王子。少しはバレないように工夫しろよ。まあ、まだ、確証は得てないけどね。
「痛っ!!」
横で聞いていた凛花ちゃんがほっぺをつねった。
「痛っなにするの凛花ちゃん?」
「私にはこんなに詳しく教えてくれなかった……」
「ちょっと待ってよ凛花ちゃん。そんなことないよ」
「……本当光ちゃんって……」
「んっキャンッ!」
凛花ちゃんに胸をつねられた。ちょっとそこは駄目でしょう。はああっ初めての経験でビックリしたよ。
しゃがんで教えていた俺は思わず尻もちをついて放心しついた。
「……光ちゃん。見えてるよ」
「えっ?」
凛花ちゃんは俺に指差して言った。よく見ると百合は下を向いていた。
「あっ」
股が開いて白い生地が丸見えになっていた。
「ばっバカ!み、見るなコラ!」
俺は恥ずかしくなってスカートを両手で隠した。すると凛花ちゃんが側によって耳元でささやいた。
「今の仕草とっても女の子ぽかったよ、ふふ……」
凛花ちゃんは悪戯っぽく笑った。
ショックだったのは、無意識にした仕草が女の子そのモノだったこと。認めたくないけど俺は徐々に精神までもが女体化している。
俺は心まで女体化はしたくない。それは最後の男の誇りだから、強い男でいたいんだ。
副部長は学園を守るためにクイーンになれと言っていた。クイーンになって学園を守るってのは男らしいのだけど、その正反対に男を完全に捨てより女らしくなることを意味する。
今のところ学園の危機は来ていないので俺はクイーンを目指すことはないだろう。ああ、そうなってほしいと願った。
主人公の外見は金髪ツインテールの気の強そうな美少女なのに、性格はラブコメの冴えない主人公そのものです。私はそこがいいと思っているので、その方向性に話を進めたい。




