告白
校舎正面玄関に入って俺は下駄箱を確認した。去年は誰かさんにイタズラされたから、かなり用心深くなっていた。
念入りに調べたけど、上履きには異常はなかった。
とりあえず安心した。だけど毎日新咲の嫌がらせに怯えるのは勘弁してほしいと思った。
「んっ?」
ふと気がつくと凛花ちゃんが不思議そうに見つめていた。おれが何故新咲にやがらせと言うか危害を加えられてるか彼女に相談はしていなかった。
それについては今度話さないといけない。
「大丈夫だから教室に行こうか?」
「部室には行かないの?それとサボテン」
「あっそうか!」
なにか忘れていたと思っていた。凛花ちゃんに言われ気がついた。それは連休中に持ち出したサボテンのことだ。部屋に置いたままだった。
うーん 、分かっていても初日にサボテン抱えて登校したくない。分かった。生徒が少ない日曜日に運ぼう。
とは言え、サボテンがないとやることがなくなる。基本は自分が担当する盆栽以外手入れしてはいけない。それは管理者の作品だから、他人が手入れしたら形も変わってしまうからなんだ。
だから今日はやることないので、お茶飲んで盆栽談議するだけで部室動は終わるだろう。
おしゃべりして先生に怒られないかって?大丈夫会話の内容が植物関係なら部活動とみなされる。他所からみれば、会議してると思われるしね。(実際は楽しいおしゃべり)
植物と言っても花やら樹木やらサボテン多肉などジャンルは多岐にわたる。でもどの話題も植物なら盛り上がる。そう、部員全員皆植物の話が好きなんだ。
さて、俺はかがんで上履きに履き替えていると、凛花ちゃんに肩を指でトントンされた。ちょっとやめてビクッとするから。
「今朝は体育館で全体朝礼があるからゆっくり出来ないね」
「そうだね凛花ちゃん。それじゃ部室に寄らずに教室に行こう」
「うん」
そんな訳で凛花ちゃんと一緒に教室に向かった。流石に廊下では手を繋がなかった。ちょっとは自重する子なんだと安心した。
廊下を歩くと早速生徒達が寄って来た。去年より人数は増えた気がする。10名くらいの男女が俺達を囲んだ。
「三学期もよろしくねー中島さん」
女子の一人が声をかけた。ちなみに中島とは俺のことだ。はよくある苗字だからイマイチ地味だ。(全国の中島さんごめんなさい)かと言って下の名前で呼ばれるのはモヤッとする。
じゃっどうすればいいのかと言うと、矢張り凛花ちゃんが言うように女の子っぽく改名するべきなのかなぁ。
「ありがとう、とにかく頑張るよ」
(色々な意味でな!)
「ところで隣にいる生徒はどんな関係?」
ちょっと噂好きそうな女子生徒が聞いた。俺はただの友達ってとっさに言ったら凛花ちゃんは背中の肉をひねった。
「痛った!」
もうっ凛花ちゃんすぐ気に入らないとつねってくる。でもまあ、そうやって自己主張してくるのは喜ばしいことだよ。
「いった?」
男子生徒が不思議そうに聞いた。
「いや、違う。そろそろ教室に行きたいんだ。道を開けてくれませんか?」
「あっすっすみませんっ!」
生徒達は素直に道を開けてくれた。色々しつこく付きまとわれるかと思ったけど助かった。
俺は凛花ちゃんの手を握ると引っ張り歩き出した。って正面に一人の男子生徒が立って微笑んでいた。
身長は〜どうでもいいか、一応170くらい。黒髪七三分けで顔はハンサムだ。見たところ悪い人ではなさそう。初めて会ったけど、どこかで見た顔なんだ。
誰だろう?
「あのう、どなたですか?」
よけて通ればいいものの、俺はつい声をかけてしまった。
「僕を知らないなんて存在感ないからなぁはは……」
気のよさそうな男子生徒は、後頭部をこすりながら言って笑った。でも、自意識過剰気味だな。
面倒くさそうな人なので無視しよう。
「では、失礼します」
「ちょっちょっちょっと待った。ねっ話を聞いて」
スルーしたら男子生徒が慌てて先回りして俺を呼び止めた。なんなのこの男は朝っぱらからナンパする気?
「じっ事故っいやっ自己主張っいや違う!じ、自己紹介させて下さいっこの僕にっ!」
うわっこの人面倒くさい人だ。
「なんですか?告白なら断りますよ」
「ちょっちょっちょっとそれはないんじゃないかなぁ?」
「その口ぶりだとやっぱり告白ですか?」
「ちっ違いますよっただっ君のことホラ、気になっただけですよ」
この男は視線をそらして恥ずかしそうに言った。
告白じゃないと言いましたが、大体が気になってから好きになるんだよ。これは告白の前フリですね。
「遅刻しますので失礼します」
「あっなんで逃げるかなぁ」
俺は凛花ちゃんの手を引っ張って男の横を通った。すると男はまた慌てて回り込んで制止させた。
本当にしつこい。告白するなら早くして、その場で断って終わりだから。
「あのっいい加減にしてくれませんか?」
「あっごめんなさいっ僕は生徒会長の角田須直樹です。えっと勉強くらいしか取り柄はないけど、今年も生徒会長になって頑張りたい!」
「…………」
この人聞いてもないのに起立しながら肩書きと自己紹介したよ。
生徒会長だから告白成功出来ると思って声をかけたのかな?
あんまり俺をと言うか女を舐めんなよ。
「なんですかっはっきり言って下さい!」
俺はちょっと強く言うと生徒会長はひるんで後ずさりした。あんまりヒステリックにはなりたくないんだけどさ、このくらい強く言わないと相手は諦めないからね。
現生徒会長二年の角田須先輩はその口ぶりから今年も生徒会長を目指すつもりらしい。とは言え俺には関係ない。
「君のこと凄く好きになってしまったんだ。どうしてくれるんだ?」
知るかっなんでもかんでも人のせいにするなっ!
「待って下さい。僕が2回目生徒会長に当選したら君にっ、なんでもしますからっお願いします」
しつこいなぁまた当選するって一回なったんだから良くないか?
今年の生徒会選挙はあの新咲が立候補するから激戦だぞ。
んっ新咲もか……ああ、角田須が選挙に勝てば新咲の野望を阻止出来る。
話しは簡単だ。現生徒会長のやる気を出させて勝たせること。
俺は凛花ちゃんに、「あとで訳を話す」と断りを入れてから生徒会長の前に立って深呼吸した。
「生徒会長は俺と付き合いたいんだね?」
「本当かっ!?」
声がデカイ。それに早合点し過ぎだ。
「待って!俺と付き合うには条件がある」
痛っ!
目を丸くした凛花ちゃんが俺の二の腕をつねった。しかも、いつもより強くつねってスッポンみたいに離さない。
あー怒ってるねぇ凛花ちゃん。当然だ。訳はあとで話すから我慢してね。
それよりこのボンクラに暗示をかけてやる。
「じょっ条件とはなんですか?」
「条件は、今年の生徒会選挙で君が勝ってまた生徒会長になれたら付き合ってあげっ痛っ痛いっ!?」
今度はわき腹をつねられた。
だから、訳を話すって待って凛花ちゃん。
「分かりました。でも本当にそんな約束して大丈夫ですか中島さん?」
「意味が分かりません。生徒会長はなにをご心配に?」
「だって僕当選しちゃいますよ……」
大した自信だ。付き合うのはあとで考えるとして、なんとしてでもコイツに勝ってもらわなくてはいけないんだ。
ねっ凛花ちゃんもそう思うだろ?
俺は振り返ると凛花ちゃんは涙を浮かべ放心していた。
ごめん凛花ちゃんっ訳はあとで話すから!




