願い事
学園の近くにある龍神神社は有名ではないけど、そこそこの参拝客が訪れていた。まあ、その方が落ちついて参拝出来るんだけど
嫌味なセレブが一緒で落ち着かない。
「あら、ずいぶん小さな神社ねぇ?」
わざとらしい嫌味なセレブの感想だ。まあ、たとえ俺が明治神宮に行った場合は、人が多過ぎると言ってコケ下ろすでしょう。
こんな女はほっといてさっさとお参りしよう。
「凛花ちゃん入ろ」
「うん」
俺は凛花ちゃんの手を握った。仲のいい友達同士だから普通だよね?うんっ良し行こう。
「ちょい待ちっ!」
んっ鳥居をくぐろうとしたら新咲に呼び止められた。なんか文句あんのかと俺は振り返った。
「あたくしが先なんだから」
「えっどうぞ……」
どっちが先に入るとか本当どうでもよかったから道を譲った。すると新咲は当然とばかりに鼻を鳴らしてから鳥居の真ん中をくぐった。
おいおい、アンタがどんだけ偉いか知らないけど、神社の道の真ん中は神様の通る道で、人間は端っこを歩かなくてはいけないんだよ。
全くバチが当たるぞ。いや、むしろ当たれ!
「あの女嫌い」
流石の針無先輩も、新咲の高飛車な態度に不快感をあらわにし言った。
おっ共通の話題が出たからこの際針無先輩と意気投合しますかね。
「ですよねーあの女ムカつきますよねぇ先輩」
「なによっ!あの女もムカつくけど、アンタもムカつくんだからっ!」
針無先輩を味方に取り込もうとしたらかえって凄い剣幕で怒られた。やっぱり一筋縄ではいかないかぁ。
俺は凛花ちゃんの元に戻って針無先輩と距離をおいた。
俺達は新咲と黒服達が参拝して戻って来るまで鳥居の前で待った。だってアイツらだけで大人数だから、帰って来るのを待った方がいいと判断してのことだ。
「あら、まだいたの?」
案の定参拝だけしてやり切った顔の新咲がおちょくりように声をかけて来た。
「ええ、邪魔するといけないのでここで待っていたのです」
副部長が眼鏡のレンズを曇らせながらくぐもった声で言った。先輩っ寒いからって冬の朝にマスクしたら曇りますよ。
「あらっなにこのもさい男……」
新咲は副部長の顔を見て言った。嘘偽りのない感想だとは思うけど、本当は彼格好いいんですよ。
と言うか新咲は青王子の正体知らないのか?
「ところで新咲さんはなにを祈ったのですか?」
ちょっと副部長っなにもこの女に聞かなくてもいいのに。
「来月から始まる生徒会長選挙に当選しますように神様に願い事しましたわ」
「そうですか……立候補したのですね?」
「当たり前ですわ。勝てる選挙出ない手はありませんわ」
新咲は勝ち誇るような目で俺を見つめ、微笑みながら立ち去って行った。
生徒会選挙俺には関係ないそう思った。なりたきゃ勝手にやってろと思った。だけど絶対新咲には票は入れてやらない。
「さっ副部長参拝しに行きましょう」
「……不味いことになったぞ」
「えっ副部長どうしたの?」
副部長はマスクごしの口に手を当てて、なにか考えごとをして立ち止まっていた。ただ相変わらずレンズが曇っていたので、表情は読めなかったな。
「生徒会長より強いのはクイーンだけだ」
「はいっ先輩なんてっ?」
幼稚園児が言うように呟く副部長。
俺は怪訝な顔して見ていると副部長は肩を軽く叩いて鳥居の真ん中をくぐった。
副部長っ眼鏡が曇って前が見えないのかなぁ。
「じゃあ、凛花ちゃん行こうか?」
「うんっ」
俺と凛花ちゃんは顔を見合わせて会釈をしてから手を繋いで鳥居をくぐった。
「ちょっとアタシはぁ?」
後ろから針無先輩が寂しそうに訴えたけど無視した。すると副部長の元に駆け寄って手を握った。
あっやっぱり男が好きなんだ。
「ねぇ手ぇ繋がない副部長っ」
「やだよっ!」
副部長は手を払いのけ、眉間にシワを寄せて拒絶した。ちょっと針無先輩がかわいそうだったけど、男同士手を繋いだら100%ソッチ系の人だよ。
まあ、コレがノンケの反応だよね。凛花ちゃんは女の子になった俺のこと好きみたいだけど、本当はどうなのかな?
その気になって告白して違いますとフラれるパターンもあるから、女の子の思わせぶりな態度は信じちゃいけません。
それから俺は凛花ちゃんの作法を見様見真似で参拝した。
無事お参り出来て気になることがあって凛花ちゃんに話しかけた。
「凛花ちゃんはなにを神様にお願いしたの?」
すると凛花ちゃんはキョトンとした顔で首を横にした。
「世界が平和でありますようにだよ?」
「……」
なんて欲のない心が澄みきった願い事なんだ。それに比べて俺の願い事と言ったら、彼女が欲しいだよ。自分のことしか考えてなくて恥ずかしくなってきた。
凛花ちゃんと話していると副部長が参拝を終えて戻って来た。相変わらず安いマスクしているせいで眼鏡が曇っていた。最近は眼鏡かけても曇らないマスク売ってるんだけどなー。
「副部長っなにを願い事しました?」
「……神社と言う場所は、本来なら個人の願い事をするべきではないと僕個人的には思うのですが」
「ははっ相変わらずお堅いなぁ副部長は」
「でも、願い事しましたよ」
「えっ?」
副部長は眼鏡を外して曇ったレンズをテッシュで拭いてからかけ直して、モゴモゴと言った。
お話しする時はマスク外そうよ。
「光輝君がクイーンになれますようにです」
またその話題ですか。
俺はクイーンに立候補なんてしませんよ。だって、クイーンに目指すには男の心を捨てないとクイーンにはなれないからだ。
今の俺には凛花ちゃんが側にいて充分幸せで、次期クイーンを目指す動機はなかった。
もうすぐ新展開。




