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下着屋に行く

 

 翌日から学校に行くと言ってみたものの、自分に合ったブラジャーがないことに気付いた。

 俺は別にノーブラでもいいと母に言ったら、「絶対駄目よ。胸のカタチが崩れるし、男子の視線もあるから明日は学校休んで下着屋さんに行きなさい」と厳しく言われた。


 ブラを付けるのは最低限のエチケットだよな?

 

 そうなんだよなぁ未だに自覚はないけど俺って女の子なんだよなぁ、今まで通りの無頓着な男の生活じゃ駄目なのは分かる。

 そんな訳で今日は下着屋に行くことになったのだけど、一人で行くのかな?

 とは言っても母さんと一緒に行くのも恥ずかい。う〜ん やっぱ一人で買いに行くしかないのかなぁ?


 ピンポ〜〜〜〜ン ♪


 玄関の前で俺は迷っているとチャイムが鳴った。こんな朝早くから誰だろう? 俺はドアを開けるとそこには、いとこの女の子がいた。


「もしかして光輝君?」

「もしかしてじゃなく光輝だよ……」


 彼女は笑った口を手で隠して言った。全く分かっていてワザと言ったろ?


 この子の名は「れみる」 なんだかアニメみたいな名前だけど

 呼びやすいから俺は良いと思うぜ。


 年齢は俺と同い年の16歳の他校に通う女子高生。ポニーテールの活動的な性格で引っ込み思案な俺をぐいぐい引っ張る娘だ。


「光輝君可愛くなったね」

「……あんまりマジマジ見んな!」

「ちょっとあたしよりおっぱい大きくない? 美人なのにズルイ!」


 れみるの視線に耐えられるずに胸を両腕で隠して腰を後ろにひねった。それになんだよズルイってひがみかよ?


「あらっなによ胸隠してちょっと良く見せなさいよっ!」


 れみるは俺の胸に手を伸ばす。ちょっとやめろ! えっ? これって痴漢行為だけど、女の子同士なら胸を触っても合法なの?

 俺の抵抗虚しく胸を触られた。


「きゃっ!?」


 初めて胸を触られ ( しかも女性にだ! ) 思わず可愛らしい声をあげてしまった。

 くそっ不覚にもほどがある……。


「可愛い声出して光輝君もう乙女に目覚めたの?」

「…………」


 違う誤解だ!

 

 だが、その言葉は聞き捨てならん!


「あのなぁれみる、俺は体は女の子でも絶対男の心だからな!」

「その強がりいつまでもつかなぁ? 早くカミングアウトした方が精神的に楽だよ光輝ちゃん(・・・)

「ぐっ…………」


 分かっているよ一生戻らない乙女の体で生きていくなか、二つの選択肢を選ぶ日が来る。


 男の心を貫くか?


 または、妥協して心も女になるか?


 いや、俺は女体に屈しはしない。例え本能が上回っても心だけは、男の領域を侵されない。


「葛藤していても時間の問題だと思うけどね」

「ぐっ!」


 まるで俺の心を見透かすように、れみるが一言言った。今のつぶやきは効いたよ。まるで鋭い矢のようだ。

 

「とにかく下着屋に行くわよ」

「んっ ……俺下着屋に行くの初めてだし ……」


 俺がもじもじしてると、れみるが右手首を掴んだ。


「大丈夫! あたしがいるから」

「ははっ頼もしいなぁれみるは」

「まあねぇ今日はアンタのために学校休んで来たんだから後でパフェ奢りなさいよ!」

「はっはいっ!」


 れみるは人差し指を立てて言ってからスタスタと下着屋を目指して歩いて行った。

  一度決めたら直ぐ行動出来るれみるは羨ましいと思った。今の俺は勝気そうな美少女だから、れみるの性格を見習いたいな。


 俺達は百貨店の中にある下着屋に入った。店内は当然だけど刺激的なブラジャーがこれでもかと目に飛び込んでくる。

 男の時は用があって下着屋の横を素通りするんだが、目に飛び込むディスプレイ用のブラジャーを見ないようにしていた。

 

 だけどこうしてマジマジと下着を見れるのは女性だからだと思った。当たり前かって? だけど男がやったらプレゼント用と言い訳しても、周りから見れば変質者だな……ははっ……。

 

「決まった?」

「いや、なんと言うか下着なんか興味ないからなんでも良いです……」

「それでは駄目よ光輝ちゃん! 女の子なんだからオシャレに興味を持たなくちゃ!」

「う、うん 努力する ……」

「本当? 約束だよ。でもまあ、今日はあたしが決めてあげる。光輝ちゃんは気品があって清楚だから白が一番よ」

「し、白かぁまあ、無難な色だな」


 俺は白のレース柄のブラジャーとショーツを選んだ。清楚な色だけど、ちょっと刺激が強い気がする。

 後は買うだけなんだけど……。


「店員さ――――ん!」


 れみるは元気いっぱい手を上げて定員を呼んだ。

 嫌な予感がする。


「はいっお決まりでしょうか?」

「あのさぁこの()の胸のサイズを測ってくれない?」

「分かりました。ではこちらに」


 えっええ――――!?


 俺は悩むスキも与えられず、店員に試着室に連れて行かれた。


「申し訳ありませんが、胸をめくってもらいますか?」

「…………」


 やばい。今ノーブラだから凄く恥ずかしい。

 だけど仕方なく俺は服をめくって胸をさらした。あーハズい。


「では胸のトップとアンダーサイズを測りますね」


 トップとアンダー? 胸のサイズって二つも測るのか? 今まで男として生きてきたから無縁の言葉だった。

 こうして店員のお姉さんは気にすることもなく、淡々とメジャーを使って俺の胸のサイズを測った。


「トップが92でアンダーが80ですからA80のブラがオスメです」

「…………」


 てっきりバストトップ92と言うからカップサイズがEかと言われるかと思ったけど、現実は違うんだね。

 そんな単純なものじゃなかった。全くアルファベットのカップ数にこだわる男の妄想は浅はかだった。


「んじゃあこのサイズのブラとショーツ一式同じ物四つちょうだい。光輝くん白だけじゃ足んない?」

「い、いや、その……し、白で良いよ」


 ちょっと待ってくれよれみるっ、なにも知らない定員さんの前で本名で呼ぶのは! ほらぁ定員さん不思議そうな目で俺を見ているよお。


 言っとくけど決してニューハーフじゃないんだからねっ! 俺は心の中で言い訳した。


 こうして白い上下の下着とピンク色の下着 ( れみるが勝手に決めた! ) を買った。


「はあぁ〜〜」


 俺にとっては大仕事を終えて、どっと疲れが襲ってしゃがみ込んでしまった。


「光輝くん疲れたの?」

「んっまあね …………」


  俺は首を上げると、


「パンツ見えてるよ」

「ワッ! ちょっちょっと!」


 慌てて立ち上がった。


「あたしはまだ大丈夫だけど上の階のレストランでパフェ食べない?」

「ああ、そうだな。じゃあ、俺が奢るよ」

「あっ大丈夫。アンタのお嬢さん(お父さん)からカード預かってるんだ」


 えみりはクレジットカードを指に挟んでチラチラと見せた。


「ああ、だからアレだけの下着を買えたんだ」


 俺は納得してれみると洋風レストランに入って苺パフェを二つ頼んだ。ちなみにれみるは一つ頼んで二人で食べようと提案したが、俺はカップルじゃねーよと却下した。


「ねぇさっきさぁ」


 れみるはストローから口を離すと、唐突に話を切り出した。


「んっ?」

「あたしが店員さんの前で光輝ってよんだら、アンタ顔が赤くなったよね?」

「!?」


 流石感が鋭い女の子だな。見てないようでいて、見てらっしゃる。


「こんな可憐な女の子なのに男の名前って違和感ハンパないよね光輝?」

「…………」


 あえて最後名前を呼ぶか?


「早いとこ女の子の名前に改名した方が良いと思うよ」

「…………ちょっと待ってくれ。まだ心まで男を捨てたくないんだよ!」

「ふうっ 前にも言ったけど、時間の問題だと思うなぁ〜あたしは早いトコ男を捨てた方が気が楽だと思うよ」

「くうっ …………」


 女体化の嫌が応にも突きつける心の問題。


 せ、せめて一ヶ月いや、半年は男の誇りは捨てたくない。


「そうそう。光輝くん(・・・・)明日登校再開するの?」

「んっそ、そのつもりだよ?」

「じゃああたしが記念にとびきりセクシーなブーツ買ってあげるよ!」


 れみるはカードを見せて得意げに言った。それ、親父のカードだけど…………。


「ブーツって校則違反だよ」


「なによそのくらいっ高校デビューは何事もインパクトが大事。ホラ早くパフェ食べて! ブーツ屋に行くわよっ!」


「わっ分かったよ。今食べるから!」


 俺は急いでパフェを完食して会計を済ませ店を出て、ブーツ屋に行って黒革製の太ももまで届くロングブーツを親父のカードで購入した。

 ごめん親父。ブーツ高額だわ……。


 帰り際に、れみるに絶対ブーツを履いてと出来れば日傘を差して、優雅に登校しなさいって言われたけど却下だ。


 今は冬だしな。


 まあ、ブーツは履かないけど明日は女子高生デビューの人だ。なんだか今からドキドキしてきた。


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