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共同生活に必要なこと

 

「ん………………」


 休日の誰もいない部室の中で女の子同士が唇を重ねた。

 普段大人しい凛花ちゃんがまさか、積極的にキスをしてくるとは思うはずもなく、不意打ちでキスされてしまったんだ。


 初めて女の子とのキスに俺は、なんだか申し訳ない思いで一杯だった。だって身体は女の子でもまだ、心の90パーセントはまだ男なんだぜ。

 凛花ちゃんの唇はやけに柔らかい。となると、俺の唇も柔らかいのかなぁ凛花ちゃんどう思う?


 ん……それにしてもキスが長い。このまま続けていたら一線を超えてしまう可能性がある。

 これは非常に危険な状態、確かにお楽しみの展開になるのは男心としてはちょっと早いお年玉なんだけど、まだそんな関係になるのは俺は望んでいない。


 コレ以上の行為をしてしまったら友達ではいられないし、同じ部屋で生活するのは困難だ。

 そう、これから凛花ちゃんと健全な学園生活を卒業まで通すには健全でなくちゃいけない。だから俺は、


「んっぱっ……駄目だよ凛花ちゃん」


 合わさった少女の唇が離れる。と言うか、俺が一方的に唇を離したのだけど、くっ!両肩を掴む凛花ちゃんの両手に力が入った。

 そして引き寄せられる俺の身体。


 ぎゅむっ!


 離れた俺の身体を凛花ちゃんが引き戻して抱きしめた。

 小ぶりな凛花ちゃんの胸が俺の胸に触れた。

 ドキドキする。そう、俺も彼女の心臓の動きが小刻みに震えていた。


「なんで止めるの光ちゃん?」

「なんでってやっぱりいけないよ」

「どうしてそんなつれないこと言うの?」


 痛っ!凛花ちゃんの指が俺の二の腕に食い込む。

 凛花ちゃんはグイグイ攻めてくるねぇ嬉しいけど困惑だ。


「ねぇ凛花ちゃんは俺のこと好きなの?」


 冴えない男時代では絶対に出なかった言葉だ。だけど今の俺は求めるより、男女に求められる存在だと自覚していた。

 だから聞いた。この事態を上手く切り抜けないと、凛花ちゃんとの仲が破局する。


 そう、俺の選択肢一つの間違いで友達でいられることも得られなくなるんだ。だから俺は慎重にその答えを考えたんだ。


「大好きだよ当たり前じゃないの光ちゃん?」

「てっちょっ!凛花ちゃん大胆っまだ俺達友達始めたばかりでしょう?」

「好き」

「あ、う〜ん」


 今まで言われたことのない「大好き」って言葉に俺は言葉が詰まった。なんとも言えない気まずい雰囲気に目をそらそうにも凛花ちゃんはそれすらも許してくれなかった。


「ちゃんと私の目を見て!」


 両頬を掴まれ正面を向かされた。

 逃げられない。サボテンを抱えて身動きが取れない俺は凛花ちゃんと見つめ合うしかなかった。


「仕方ないなぁこのくらいで許したげる」

「えっ?」


 アッサリ諦めてくれてちょっと拍子抜け(ひょうしぬ)した。


「なんでかな?」


 ぶり返すつもりはないけど俺は理由を聞いた。


「だって悔しかったんだ。光ちゃんのファーストキス白王子に奪われてっケホケホッ……」

「あっ凛花ちゃん無理して喋らなくていいよ」


 凛花ちゃんは話の途中で咳き込んでしゃがんだので俺は、抱えていたサボテンを床に置いて彼女の背中をさすった。


 本来は喋ることが出来ない凛花ちゃんは能力の力で喋ることが出来る。ただし1分が限界でしばらく休憩しないといけない。

 だから凛花ちゃんは咳き込んでしまって俺は心配したんだ。


「けほっあ、ありがとう光ちゃん」

「大丈夫凛花ちゃん?」

「うんっ」

「そっか、凛花ちゃんコレ以上言わなくても気持ち分かったからさぁ部屋に戻ろう」


 凛花ちゃんは静かに立ち上がった。


「光ちゃんゴメンね急にキスしちゃって」

「うんうんっ構わないよ。じゃあ帰ろう」


 俺は部室の戸を開いた。しかし忘れ物を思い出して一旦戻ってサボテンを拾い上げ抱えた。

 ズッシリ重い赤ちゃんのような大きなサボテン。両手が塞がっているから俺は凛花ちゃんの動きに注意しながら部室の戸の鍵をかけた。


 部屋に戻るとサボテンを光が差し込む窓際に置いてからベッドの脇に座った。凛花ちゃんもなんだか嬉しそうに俺の隣に座った。

 さっきまでの妖しい雰囲気が嘘のようだ。


「ふあ〜疲れたね凛花ちゃん?」


 俺は思わずため息してから凛花ちゃんに話しかけた。すると凛花ちゃんは笑顔で顔を向けた。

 ああ、良かった。とりあえずご機嫌っぽい。

 でも、漫画だと笑顔で怒るヒロインってパターンあるからなぁ注意が必要だね。


「光ちゃんこれからなにしましょう?」

「そうだね……えっとなにしようか?」


 お互いなにも考えていないのが笑っちゃうんだなコレが、まるで初デートで会話のネタが尽きてしまうカップルだ。

 話のネタがない時はどうしようか?


「光ちゃんお掃除しましょうか?」

「あっははっそれは勘弁してよぉ凛花ちゃん」

「ふふっ冗談ですよ光ちゃん」

「あれっ凛花ちゃんも冗談言うんだっ痛っ!」


 ちょっとイジッたら太ももツネられた。

 もー凛花ちゃんあおり耐性ないんだからぁ……。


「本当になんか面白い話ない凛花ちゃん?」

「ん、怖い話とか?」

「…………」


 凛花ちゃん今冬だよ?

 真冬に北海道民が暖房ポカポカの部屋でアイスクリーム食べる感覚で怪談話するのはやめてね。


「そうそう昨夜凛花ちゃんさぁ怖い話好きだよね?」

「ううん、違うよ」


 はっきり否定するねぇ凛花ちゃん。だけど貴女昨夜寝ている途中たしか深夜の2時だったかな?俺に隠れてスマホで怪談動画鑑賞してたでしょう。

 やめてよねー幽霊寄って来たら大変だよ。


 ちょっとカマかけてみるか。


「そうかぁ怖い話興味ないかぁ〜」


 俺はわざとらしく言ってからベッドに寝転んだ。後は凛花ちゃんが食いつくのを待つだけですよ。


「ちょっと詳しく」


 凛花ちゃんもベッドに入って来て食いついた。


「そうかぁいや、俺もちょっとは不思議体験してるんだよ」

「聞きたい」


 凛花ちゃんは真剣な顔で返事して首を縦に振った。


「それなら怖い話してやるけど凛花ちゃん、俺と一緒に寝る時は大人しくしてなきゃ駄目だよ!」

「えー?」


 えーじゃないですよ凛花ちゃん。


「コレから怖い話聞きたかったら、エッチなことは駄目だよ凛花ちゃん?」

「……でも」

「でもじゃない凛花ちゃん」

「分かったよ光ちゃん。エッチなことしないから安心して」

「そっか、ありがとう凛花ちゃん」


 俺は怖い話をエサに凛花ちゃんのしつけに成功した。


ちょっと書く期間が開くと書きづらくなることが分かった。コレはもう手が空いたら書く習慣をつけた方がいいと思った。


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