今夜から少女と一緒に寝る訳だが
露天風呂は温泉なのかちょっと独特な匂いがする。
従業員のお風呂に温泉ってなんだか贅沢な気がする。この学園ってそんなに儲かってるのかなぁ、うーん税金なら使い放題かも知れないけど確か私立だよな?
「凄い早く入ろ光ちゃん」
凛花ちゃんはそんなことはどうでもよくて、早く俺と一緒にお風呂に入りたいらしい。
それはともかく、光ちゃんって呼ばれるとなんだかこそばゆい。
チャプッ
そっと片足を湯船に入れる。うわっちょっと熱い。
「凛花ちゃん熱いから気おつけてね」
「うんっ」
「おっ!」
凛花ちゃんは俺の二の腕を掴んで湯船に入った。
「…………」
その行為男なら勘違いするだろ?
俺女の子だからオオカミに変貌しないけど。
チャプッ
「ふいい〜〜やっぱり温泉サイコ――!」
ゆっくり入ったら気持ちよくて足を伸ばした。
「うんっ」
「良かった温泉気に入ってくれて」
俺の温泉じゃないけどね。
「ところで光ちゃんはさっき慌てていたけどなんで?」
「…………」
見知らぬ美女と会ったとは口が裂けても言えない。だって凛花ちゃんは友達なのに嫉妬するから……。
そこんとこどうなの?俺のことどう思ってるのかな?
「んっなんのこと?」
「むっ…………」
「痛いっいった!ちょっと凛花ちゃん太ももつねっちゃダメでしょう?」
「知らないっ!」
凛花ちゃんは首をプイッとアッチに向いてすねた様子。可愛いなぁ俺を萌えさせただけでそれ以上は追求しなかった。
ふうっ本当にいい湯だ。
「…………」
「…………」
特に会話もなく時間が過ぎていった。
ああっ俺が会話振らないといけないのになんて言っていいのか分からない。俺美少女になったけど、中身は口下手な陰キャラだからなぁ……。
やべっのぼせてきた。
残念ながら大した会話もなく入浴終了です。
「そろそろ上がろか?」
「うん」
風呂から上がると脱衣所で俺は背中を向けて、凛花ちゃんが服を着るまで待った。
「もういいよ」
俺は振り返ると凛花ちゃんは着替え終えていた。
「光ちゃんも着替えたら?」
「うんっ分かった…………」
「どうしたの?」
「あ、いや、その」
着替えられないから背中を向けてくれ!
大浴場を後にする前に瓶牛乳の自動販売機に寄った。ここはなんでもタダらしい。
「タダって凄いですね?」
「でしょ?なに飲む?」
「うーん………………………………」
おっ悩む悩む、だけどタダだからなんでもいいじゃん凛花ちゃん?
「じゃあ、牛乳でいい」
「おっ凛花ちゃん牛乳飲めるんだ?えらいですね」
俺は飲めるけど、結構牛乳飲めない若い子いるからなぁなんだか言ってることジジ臭いな?
さて、俺も付き合って凛花ちゃんと同じ牛乳を選んだ。
お金はいらないのでボタンを押すだけで牛乳が出てきた。
瓶牛乳の醍醐味は二つあると思う。
一つ目は紙製のフタを剥がす瞬間の感覚。コレのワクワクがたまらない。
二つ目が左手を腰にそえて一気に飲み干す。まあ、この動作は言われなくても自然とやってしまう。
なんでかな?コレって風呂上りの瓶牛乳のあるあるだよね?
「んくっんくっ……美味しい」
凛花ちゃんの場合は両手で持って一生懸命に牛乳を飲み干した。くう〜飲む仕草も可愛いねぇ狙ってないのがまた。
「んじゃ俺も、ゴクゴク……」
俺はちょっと意識して左手を腰にそえて瓶牛乳を飲んだ。それを凛花ちゃんは真剣な眼差しで見守っていた。
んっなんで?
「光ちゃんの男らしい飲み方カッコいい」
んっそうか?ちょっと照れるね。
空になった瓶を返却入れに置いて大浴場を後にした。
部屋に戻ると、ダンボールが積まれ雑然としていて一気に現実に戻された。
参ったなぁ片付けがまだだった。
「あはは、もう今日は無理だね?」
「うん、そ、だね」
俺達は顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。
「さて、髪を乾かしてから寝る?」
「うん」
「じゃっちょっと部屋を温めよう」
ピッ
俺はエアコンのスイッチを入れた。普段使われていない部屋だけど、日頃の手入れは行き届いているみたいで正常に作動した。
「あはは、コレでベッドの上で身を寄せあって寝る必要がないね凛花ちゃん」
「むうっ…………」
「はえっ!り、凛花ちゃん聞いてる?」
「私は笑えない」
痛っ!?
凛花ちゃんは俺のわき腹をつねってむつけちゃった。ふふっ不満があるならどんどん言ってよね。
最近感情豊かになって本当嬉しいよ。
ふうっ俺は幸せだ。
こんなに幸せなのに、これ以上なにを求める?
現クイーン様が俺に言った学園を救うクイーン候補?
いまいち危機感を感じられない。
だってさ、あの性悪女の新咲が次期クイーンになって学園を支配したとしても、別に死ぬ訳はない。
まあ、俺は奴の嫉妬で殺されそうになったけど、いまいちクイーンになる気はおきない。
よほどの事態に落ちいらないと俺の重い腰は動かない。
そうこう考えている内に髪が乾いたのでやることは一つ。
「凛花ちゃんもう寝る?」
早いもので時計の針は0時を回っていた。
「うんっ」
「じゃ着替えよ」
俺は衣類が入ったダンボールの中を物色した。
「んっ開けた記憶がないのに開いている?」
俺は凛花ちゃんの顔を見たら、プイッと顔を横に向いて目を合わせなかった。
「こらっなんで目をそらす?」
しょうがないなぁ俺はダンボールにしまっていたパジャマを探した。あれっパジャマがないぞ?
「ちょっと凛花ちゃん?」
再度凛花ちゃんの顔を見たら視線を合わせない。無表情な凛花ちゃんの閉じた口がモゾモゾとしていたのでこれは、笑いをこらえているなと思った。
やったな凛花ちゃん。
「凛花ちゃん俺のパジャマは?」
俺が手を伸ばすと凛花ちゃんは警戒するように身を引いた。
ちょっと警戒すんのは俺の方だよ!全く凛花ちゃんはとんでもないイタズラっ娘だ。
「……仕方ないなぁ今夜は下着で寝るか……」
「やった!」
凛花ちゃんは思わずピョンとジャンプして喜んだ。やっぱり確信犯ですよ凛花ちゃん。
「凛花ちゃんのパジャマは?」
「ない……貧乏で買えないの……」
「…………」
凛花ちゃんは捨て猫みたいな目で俺を見つめた。もう、同情を誘うその手は食うか!
「買い出しの時パジャマ買ってあげたでしょ?」
「…………光ちゃんどうしてそう言うこと言うの?」
「むうっ…………」
それはコッチのセリフだっ!
俺は凛花ちゃんが隠したパジャマを見つけ出し、嫌だと言われても着させた。( 普通逆だ)
「ベッドは一つかぁ……仕方ない、凛花ちゃんは窓側がいいよね?」
「ううん……」
んっ凛花ちゃんは首を横に振った。
あら、俺が景色も見える窓際でいいの?凛花ちゃんがそう言うのなら仕方ない。俺は窓際に寝転んだ。
俺のパジャマも見つかったからそりゃ凛花ちゃんのために着たよ。ブーブー言われたけど教育上良くないからね。
しかし、一緒に寝た途端に凛花ちゃんが抱きついてきたから聞いてみた。
「なんで抱きつくの?」
「んっこの方が落ちつく……」
俺は抱き枕かぬいぐるみと一緒か?
まあ、ツッコミたくなったけど俺は眠いので寝てしまい。爽やかな12月の朝をむかえた。
まだ凛花ちゃん俺の横で寝ていた。まるで朝チュンだ。
ちょっと待て、昨晩はなにもなかったからなベッドの上ではな。
ああ、しかし色々あったクリスマスだったなぁ。
俺は出ようとしたが凛花ちゃんが横にいて出られなかった。
「ちょっとゴメン凛花ちゃん?」
「…………」
「出たいからさぁちょっと凛花ちゃん起きてる?」
「…………クス」
ちょっと今笑わなかったか?全く狸寝入りとはやるな凛花ちゃん。そんなに俺に寄り添っていたい?
俺はふと、窓を見た。
「そう言うことか……」
凛花ちゃんが俺を窓ぎわに寝せたのはそう言うことかと納得した。




