大浴場での出会い
普通なら好きな娘の裸を見てみたいと思うんだけど、凛花ちゃんは俺と一緒にお風呂に行くのをためらった。
そこが純情で可愛いよね? んっタダの一人ごとですよ。
「じゃあさ、先に行くからね」
「うん」
返事してから寂しいのか、凛花ちゃんはうさぎのぬいぐるみを抱きしめた。
「 …………」
可愛い。なにげない少女の仕草は男の心を持った俺には到底不可能にみえた。うーん、自然に出来たら男辞めてんな?
洗面器を抱えて外に出ると12月下旬だけあって寒いのなんの、だけど序の口これからもっと寒くなると風呂が洋館にないのは不便だな。
まあ、星を見ながら移動するのも楽しみの一つなんだけどね。
「あっ次期クイーンじゃん!」
んっ前方から向かって来る黄王子に話しかけられた。次期クイーンって呼ぶのは構わないけど、まだ確定してないから様は付けないのが、なんかモヤッとするな。
「これからお風呂かい?」
赤王子が聞いた。二人共スーツ姿だけど、右手には洗面道具一式が入ったカゴを持っていた。
へーどう考えてもプライベートの時間っぽいけど、身なりはキッチリしないといけない規則っぽい。
「はい。お二人はお風呂を済ませたのですか?」
「うん、そうだよ。光輝ちゃんはこれからお風呂だよね?」
下心は感じられない明るい声で黄王子は聞き返したのでうなずくと、残念そうに舌打ちした。あっそんな嫌な感じじゃないよ。ソフト舌打ちだ。
「黄王子女湯に入るつもりだったのか?」
赤王子があきれた様子で言った。
「えっここの大浴場って男女に分かれているのですか?」
冷静に考えたら混浴の方が圧倒的に少ないのに、慣れない王子様相手にトチ狂った質問をしてしまった。
「そうだよ。女風呂もあるから安心して入っていいよ!」
「そうですか、あれ? 黒王子様と白王子様の姿は見えないけど一緒に入らないんですか?」
ふと二人を見ていたら疑問に思ったので聞いてみた。自宅から通いの青王子様はともかく、他の二人が一緒じゃないのが気になってさ。
「黒王子はクイーン様の警護で付きっきりお風呂に入る時はクイーン様と一緒」
「クイーン様と一緒?」
「いやいや流石に混浴はないでしょう。してたら俺が代わりたいし、入るのは別々で黒王子の代わりに警護メイド二人が共に入る決まりだ」
はは、ですよねぇ俺がもしクイーンになったとして、警護と称して王子達と混浴するのはゴメンだよ。
「で、ウザい白王子が一緒じゃないのはなんで?」
「ははっやっぱりウザいかぁ? アイツなズケズケと他人の懐に入っていく性格だけど、なんでかプライベートでは付き合いが悪くてな」
赤王子様は腕を組んで考える仕草で言った。あのですね、赤王子も会った当初は十分ウザかったですよ。
「そうそう。白王子の奴僕達がお風呂に誘っても、いっつも断って時間をずらして一人で入ってんだよ。おかしいでしょ?」
「あはは、そうですか ……」
黄王子様が言ったけど全然おかしくない。凛花ちゃんもそうだったけど、思春期になると他人に裸を見られるのは恥ずかしいものさ。
でも、親父みたいに女体化初日からお風呂に乱入して来るのは考え物だ。
「そうですかぁ出来れば白王子様とは一緒になりたくないですね」
「ははっ言われてんなー白王子。まあ、アイツはナチュラルにセクハラしてきそうだからな」
「本当ですよ赤王子さん。では、俺は風呂に行ってきます」
「おおっ気おつけてな光輝ちゃん」
赤王子は気さくに手を振って言った。
「白王子に注意ねっバイバ――イ!」
黄王子は右手を大きく横に振ってさよならした。
俺は二人と別れてから大浴場に向かった。
大浴場は洋館から歩いて5分の場所にあって従業員用とは聞いてたけど、コレが中々商業施設並みの立派な大浴場だった。
入り口にはロビーがあって受付のメイドが対応してくれた。アレこのメイドさんの仕事ってそれだけ? ちょっと楽そうでいいなぁと思った。
メイドさんに女湯を案内された。脱衣所に入ると懐かしの瓶牛乳の自販機が設置されていた。
あーっフルーツ牛乳とか飲んでみたい。自販機あると知ってたら小銭を持っていくべきだったな。
「ここの自販機はタダですのでいくらでもご自由に」
「えっタダなのっ!?」
思わず声を出してしまった。あーヤダヤダ貧乏くさい。
しかし凄いや学園の経費でまかなわれているとは言え、自販機がタダなんて太っ腹。そうだ、帰りに凛花ちゃんの分も持ち帰ろう。
フルーツ牛乳が好みかな? それともコーヒー牛乳いや、最初は牛乳でしょう。うーん悩むな、そうだ! どっちも持ち帰ればいいんだ。
どうせタダだからね。
「では、ごゆっくり ……」
メイドさんはお辞儀すると静かに去って行った。
さて、誰もいないし脱ぐか、
「アレッ?」
よく見ると脱衣所の棚に服が几帳面に畳まれて置かれていた。ちょっと気になったので確認するとその服に見覚えがあった。
白いスーツだ。
間違えない白王子のスーツが置かれていた。
「なんで白王子が女湯にまさかっ!?」
元々女ったらしなイメージの白王子だったんだけど、性犯罪は犯さない王子様と信じた俺が馬鹿だった。
正義感に燃えた俺は白王子の衣服を入念にチェックした。するとスーツの下に見てはいけない物を発見した!
それは純白の女性用の下着。ブラジャーはレース柄の大人の雰囲気でカップサイズはそれなりにあった。
が、問題はそこじゃない。あの男は澄ました顔でブラジャーを身につけていたのか?
「見損なったぜ白王子、とんだ変態野郎だ!」
俺の中の正義感が湧き上がった。
あの男は今女湯に浸かっているんだ。見つけ出してとっちめてやる! 俺は急いで脱いでタオルを身体に巻いて、そっと引き戸を開けて入った。
大浴場とあってプール並みに広いお風呂だった。しかも、屋外に露天風呂もあったから驚きだ。
浴槽を見渡したけど白王子の姿は確認出来なかったから、俺は息を呑んで露天風呂に向かった。
露天風呂は湯気に包まれ確認出来ない。仕方なく俺は浴槽に入った。
「うわっアッチィこれってまさか温泉?」
ライオンの口からドボドボ熱いお湯が掛け流しだ。それにしても豪華すぎるぞ、 どうなってるんだこの大浴場は?
相変わらず湯気で奥まで確認出来なかった。仕方ないから俺は肩まで浸かった。
「くう――っ熱いけど慣れてくると気持ちい――い♡」
俺は白王子なんてどうでもよくなった。
チャプッ
んっ水音、誰かいる?
ザブッザブッザブ ……
確実に俺に向かって誰かが向かって来る。白王子か!? 俺は胸を腕で隠し身構えた。
「あら貴女タオルを巻いてお風呂に入っちゃダメよ」
えっ白王子ではない、知らない若い女性の声だった。湯気が消えてシルエットが明らかになった。
出るとこは出て引っ込むところは引っ込んだスタイル抜群のボディに、腰まで伸びたウエーブがかった金髪の端正な顔立ちの美女が俺を見下ろしていた。
「…………お前は誰だ?」
その美貌に見惚れていて思考が停止していたけど、正気に戻った俺は名を訪ねた。
「あっ!? ソ、ソーリー ……」
謎の美女は俺の顔を見た途端手を振って出て行った。
アイツ逃げた!
「んっまてよ …………あの美女今なんて言った?」
謎の美女が残した重要なキーワードに気付いた俺は困惑した。




