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凛花の秘密

百合回。

 

 凛花は能力者だと自ら語った。

 まだ凛花と会話したのは大して日数が過ぎてはいないけど、自分のことを語るの初めてだよね? 凛花 ……。


「そっか、うーん とりあえずベッドに入ってからお話しましょう」

「はい」


 女の子同士とは言え、一つのベッドを二人で共有して寝るのは嫌じゃないんだね。凛花ちゃんはこくりとうなずいた。

 自分で言ってはみたもののやっぱり胸がドキドキする。ええいっ乗りかかった舟だ、ベッドに入っちゃえ!


 俺はベッドに片足を入れると、凛花ちゃんがシャツのすそを引っ張る。


「んっ駄目なの?」


 やっぱり元男だから一緒に寝るのはやだよねぇ?

 すると凛花ちゃんは目をギュッとつむって激しく首を横に振った。


「服着たまま入っちゃ駄目 ……」

「えっ、うーん、困ったなぁパジャマある?」

「ない」

「えっじゃあどうするの!?」

「脱いで」


 そりゃあ脱ぐけどえっどこまで?


「えっマジで言ってるの凛花ちゃん?」


 ちょっと凛花ちゃん大胆な提案に俺が戸惑っていると、凛花ちゃんは突然制服を脱ぎ始めた。

 ちょっと待って急に心の準備が、


「早く脱いで」


 急かすかな凛花ちゃん。


 凛花ちゃんは淡々と制服を脱いで白い下着姿になった。あんまり凝視出来ないけど、色白で小ぶりな胸の抱きしめたら壊れそうな繊細な細身の体だった。

 俺が躊躇(ちゅうちょ)していると、凛花ちゃんの手がほつれたシャツに伸びる。


 ちょっとそれはマズイって!


「待った待った! 分かりましたっ! 今脱ぎますから!」


 立ち上がってスカートを下ろしワイシャツを脱いだ。白い下着姿になった俺はお相子だ。


「なんか恥ずかしいね?」


 俺は照れながら上目遣いで言って胸を腕で隠した。


「見せて!」

「ちょっきゃっ!?」


 凛花ちゃんは大胆にも隠した腕を退けようと手を伸ばした。くうっ凛花ちゃんは堂々と胸張っているのに、俺だけ隠したらフェアじゃないよね?


「わ、分かったけど、あんまりジロジロ見ないでね」


 観念した俺は腕を下ろす。


「大きいね」

「そ、そんなことないよ!」

「う、うん私より大きいし綺麗 ……」


 凛花ちゃんの人差し指の先が胸に触れる。女の子同士のよくあるスキンシップだと分かるけどさぁ、慣れない俺はびっくりした。


 ビクン!


「ひゃんっ!」


 冷んやりした刺激が胸を起点に全身を駆け巡った。マジヤバイ! これ以上されたらおかしくなっちゃう。


「はぁはぁ ……凛花ちゃんさぁ、え、えっえ、えーと、寒いからベッド入ろうよ」

「 ………… それはどう言う意味ですか?」


 俺の煮え切らない態度に憤慨(ふんがい)したのか ( 意外! ) 、凛花ちゃんは口を尖らせ睨んでから聞いた?


「あ――もうっただ寝るだけだよ凛花ちゃん!」

「意気地なし」

 

 んっなんでそうなる?


「えっ一体なにを期待してたのっ!?」


 俺はベッドに入って窓ぎわに寝転んだ。凛花ちゃんはその隣に寝転んで体を密着してきた!

 ち、ちめたい ……凛花ちゃんのすべすべの肌が密着して冷たいんだ。


「抱きしめて」

「ええっ!? 俺達女の子同士だよっ!?」

「なに言ってるの光輝君。抱き合わないとあったかくならないよ?」

「はは、そうなの?」


 うーん、このシチュエーションはエッチなラブコメ漫画でよくある雪山でヒロインと遭難して、裸になって暖め合う展開と一緒だ。

 いや、うーん 確かに寒いしお互い下着姿だから、離れて寝るよりは抱き合った方が良いけどねぇ。


 心臓がドキドキしちゃうな♡


「光輝君の心臓の動き激しい?」


 胸が密着しているから、お互いの心臓の動きが手に取るように分かるんだ。


 君のせいだよ …………。


「ほら、暖かくなってきたよ光輝君」

「んっだね!」

「それじゃあ私の能力を明かす前に、一つ秘密を言うね」

「え …………?」


 まだ凛花ちゃんは秘密を隠し持っていたんだ。ちょっとショックだけど、人には言えない秘密なんだね?


「分かった。誰にも言わないから俺に言って」

「ありがとう光輝君。じゃあ言うね、私は …………」

「んっ?」

「…………………………」

「どうしたの?」


 急に押し黙ったから心配になって凛花ちゃんの顔を見たら、彼女は目をつむって涙を流していた。


「 ………… 凛花ちゃん」

「はぁふう …………本当は喋れないの ………」

「えっだって今、喋っているでしょ?」


 しかし、凛花ちゃんは否定するかのように首を横に振った。


「それは能力のおかげ」

「えっじゃあ、凛花ちゃんの能力って?」


 凛花ちゃんは一息ついてから語り始めた。


「障害を克服する能力。ただし、1分以上は喋れない。再開するには …………………………………………………………3分くらい時間を置かないと喋れない」

「………… 」


 そうだったのか、だから口数が少なかったんだ。ああ、凛花ちゃんはこんなに苦しんでいたのに俺は以前、無愛想な女だと軽蔑していたんだ。


 ああっ馬鹿だ俺はなんて馬鹿なんだ!


「ごめん凛花ちゃん」

「なんで謝るの?」


 凛花ちゃんは不思議そうに首をかしげた。


「施設の先生に竜神高校に障害者は入学するのは無理だと言われた」

「酷いっそんな事ないよっ!」


 俺は反論したけど凛花ちゃんは、気持ちは嬉しいけど現実は厳しいと言った。

 分かってるさ、この世は綺麗事だけじゃない。差別することで安心する人種も存在する。結構口に出さなくてもいるんじゃないの?

 ただ、自分で言うのもなんだけど、俺は違うけどね。


「憧れの竜神高校に入れないと知って自殺を考えた時に能力に目覚めたの …………」


  …………そこまで追い詰められてたのか。


「この能力のおかげで少しは喋れるようになって、竜神高校に入れたの」


 凛花ちゃんはそう言って笑顔で俺を見つめた。赤く紅葉した頬には沢山の涙が流れていた。

 こんな大事な秘密を告白してくれたのは、俺を信頼しての事だと思う。


「誰にも言わないよ凛花ちゃん」


 俺は凛花ちゃんの体をギュッと抱きしめた。すると彼女もギュッと抱きしめ返してくれた。


「…………ス……………キ………… 」


「えっ凛花ちゃん今なんて?」


 まさかスキヤキ? んな訳ないか寝よ。


「もう寝よう」


 凛花ちゃんが言った。


「う、うん …………だね!」


 結局凛花ちゃんの真意を聞かず俺は、電気スタンドの灯りを消した。また、肌が触れて暖かい。

 そして、ただ単に抱き合いながら眠り、なにも進展もなしに朝をむかえた。


 当たり前だ! 一体なにを期待していたか俺っ? でもこの夜は忘れない思い出の一部となったのは言うまでもなかった。


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