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凛花の寒い部屋

 

 凛花ちゃんのお家は、孤児施設が運営する平家の一軒家。彼女は補助金のおかげで、この施設で暮らせている。敷地内には同じ外観の平家が建ち並んでいた。

 彼女は自立したら、出て行かないといけない規則らしい。それだけ厳しい世界で生きてきていると知って、親の元でぬくぬく育ってきた俺は恵まれていたんだなぁと思った。


「で、どうする? ウチの部下に警護させても良いけど?」

「えっ親父が守ってくれないの?」

「む〜〜う 」


 おりょっ? 珍しく俺が頼ったら、お父ちゃん困った表情になりましたね〜?


「もうっパパに頼るなっ!」


 お子ちゃま親父は両腕を振り上げプンプンした。(むすこ)に頼らて恥ずかしいんだねぇ?ああ、そうか、迫るのは好きだけど、その逆は苦手なのですね? あー可愛い。もっとからかっかちゃお。


「あーそうだね、パパは弱いから役に立たないね?」

「お前だってか弱いだろっ!?」

 

 親父はムキになって反論した。あー可愛い。でも、ふざけるのはこのくらいにして警護は彼らに頼むことにして近寄る。

 

「なあ、今夜王子様に守ってほしいと思う」


 俺は3王子に言った。


「当然だろう、レディを守るのは男子の務めさ! それはそうと、電話番号教えて?」

「任せてよっ光輝ちゃん!でもさ、今夜甘えてもいい?」

「まあ、我々に頼るのは賢明な判断だ ……」


 それぞれ3王子の反応だったけど個性があるから、誰が言ったか言わなくても分かるんだよな。

 うーん 王子様は紳士だから大丈夫だとは思うんだけど、一人暮らしの女の子の家に入れていいものか?


「俺らは外で見張ってるよ」

 

 赤王子が申し出た。いや、流石にそれは悪いよ、もう冬で夜は激さむいよ。どうしたものか?

 ちょっと考え込んでいると凛花ちゃんが、チョイチョイと指でくびれを突く。


「ヒャンッ! やめてくすぐったい凛花ちゃん!」

「部屋空いてるからそこなら泊まって良いよ」

「本当にいいの?」


 凛花ちゃんはウンとコクリとうなずいた。

 それなら良いんだけど、俺を介して意志を伝える癖葉直した方が良くない?

 頼りにされるのはありがたいんだけどさ、


「では、僕はちょっと買い出しに行くよ」


 副部長が気をつかったのか、今からコンビニに行って弁当を買いに行くと言った。

 えっ気をつかうって、俺と凛花ちゃん女の子同士だよ?


 こみいった話もしたいけど、なにもないと思うよ。


 結局副部長一人で買い出しに行って、残りの2王子は使われてない部屋で待機した。

 以外だ。特に赤王子は積極的にコミニケーションをはかってくるのかと思ったけど、隣の部屋で大人しく待機するんだって。


「良いのか俺達と交流しなくて?」


 一応気になったから赤王子に聞いてみた。


「あ、まあ、別に今夜はいいかな? まだチャンスがあるし」

「はあ?」

「そうそう。君が新しいクイーンになったら、思いっきり甘えるから大丈夫だよ」


 黄王子がニコニコ白い歯を見せながら言った。はっ? 甘える? 現クイーンってそんな事してんの?


「だよなぁ君が次期クイーンになれば、わざわざ告白する必要もないしな」


 はっ? どう言う意味だ赤王子?


 まるでクイーンはってのは …………。


「俺達は命がけでクイーンを守っている。その報酬として給料と甘える権利がある訳よ」

「甘える、け、権利ぃ?」

「そう言う訳だから光輝ちゃんは、俺の好みだから絶対にクイーンになってよね♡」

「ちょっと待て聞いてない赤王子っ!?」


 なんだか俺が次期クイーンになる話になってるけど、どんな理由があろうが、俺はクイーンなんてごめんだよ。

 だって女の子になったばかりで慣れるのにも大変なんだよ、クイーンなんて俺は丁重に断った。


 現在の時刻は午前0時、事情聴取やら治療やらと時間がかかって遅くなったんだ。しかし、幸いにして明日は土曜日で学校は休みだった。


 だから夜遅くてもいいんだ。


 今夜は眠くなるまで凛花ちゃんとお話しするんだ。


 ガチャッガチャガチャッ


「入って」


 凛花ちゃんは鍵を開けてドアを開けた。

 俺は遠慮気味に中をのぞくと、ぬいぐるみがいっぱい飾ってある女の子らしい部屋だった。


 その他は必要最低限の物しかない簡素な部屋に見えた。ただやっぱり気になったのは、ぬいぐるみの多さだ。

 ざっと見て10体ほどの、クマやらペンギンやらの大中小のぬいぐるみが俺を見ていた。


  …………やっぱり今まで寂しかったんだね。


「寒っ」


 結構部屋の中も寒くて身を震わせていると、凛花ちゃんは暖房がなくてごめんなさいと謝った。

 いや、そんな意味で言ったんじゃないんですけどね。でもまあ、良く寒い部屋で勉強出来るなぁと関心した。


 やっぱり苦労してるんだね。


「凛花ちゃんが可哀想だぜ。施設の運営だからって暖房器具くらい設置しろって!」


 赤王子がキョロキョロ部屋を見回しながら文句を言った。


「そうそう、なんなら僕がクーラー買ってもらえるように、クイーン様に頼んであげるよ?」


 黄王子の提案に凛花ちゃんは、入居者が勝手に部屋の仕様変更しちゃいけないと言って断った。

 決まりとは言えちょっと冷たいんだね。


「大丈夫。布団にくるまって …………いれば寒くないから」

「んっ大丈夫凛花ちゃん?」

「…………」


 凛花ちゃんは相変わらずたどたどしく喋るので、気になっていたので聞いたら黙ってしまったぁぁぁゴメン!


「ゴメンなさい。訳は後で話すから」


 凛花ちゃんはペコリと頭を下げてから、チラリと王子たちを見た。そうか、男子には聞かれたくない内容なのね?

 まあ、俺もついこないだまで男子だったけど、良いのか?



 それからしばらくして、コンビニに寄っていた副部長がビニール袋を二つ持って帰ってきた。

 中身は弁当とホットのお茶とスイーツだ。副部長の事だから冷たいお茶かと思ったけど、熱々で安心したよ。


「お腹すいたでしょう?」

「まあな、コレって副部長のおごり?」


 俺が聞くと副部長は右手を横に振った。


「光輝君のお父さんからのおごりです」

「親父からかよっ!?」

「へーあのちびっ子親父さんからの」


 赤王子もちょっと驚いている様子。まあ、無理もない。あんな小さい少女からおごってもらえるなんてあり得ないからね。


 床の上で弁当を置いて皆で会話しながら食べた。味気ないコンビニ弁当も、皆で食べると忘れられない食事となった。


「ご馳走さま。悪いけど僕は帰るね」


 副部長こと青王子は立ち上がって言った。

 他の王子は知らないけど、青王子は実家に住んでるそうだ。白王子と黒王子が学園の敷地にある洋館に、クイーン様の警護をかねて住んでいるらしい。

 白王子はハッキリ言っちゃうとあまり強くないらしい。だけど、黒王子一人で警備は十分らしい。

 そりゃそうだ。時を止めて攻撃なんて最強すぎるし、他にも時間を使った攻撃方があるみたい。まあ、切り札は仲間にも内緒にしてるそうだ。


「副部長っいや、青王子様っ今日は助けてくれてありがとうございました」


 俺がお礼を言うと青王子は照れながら手でさえぎった。


「いやいや、たまたま一緒に巻き込まれただけで、身に付いた火の粉を払ったに過ぎないよ。それより二人にお礼言って」


 青王子様はどこまで謙虚(けんきょ)なんだ。額に汗かいて申し訳なさそうに言った。


「あっゴメンなさい。赤王子様に黄王子様っ!」

「あっ良いの良いの気にすんな!」

「そうそう。君は来年僕の主人になるんだからもっと、おおらかにしてよ」

「うん 分かった。ありがとう二人共」


 何故か今頃になって目に涙がこぼれた。安心したのかな? 赤王子が気づいて指で涙を拭ってくれた。

 それを見ていた黄王子が口を開けて、やられたって表情を浮かべていた。


「じゃあ、彼女達を頼んだよ」

「任せろ」

「バイバ――イ」


 青王子は二人の王子に託して帰って行った。


「さて、俺らは隣の部屋に引っ込みますわ」

「だねっ!」


 二人の王子はあっさり引き下がった。思春期真っ只中の健全な男子が女の子と一晩共にするのになにもしないなんて、本当に王子様の鏡だと思ったよ。

 

 隣の部屋に王子様がいるとはいえ、凛花ちゃんと二人きりになってちょっと緊張しています。

  凛花ちゃんが無口なせいか、沈黙がしばらく続いた。


「あのね、聞いてもらえるかな?」

「んっ?」


 沈黙を破ったのは意外にも凛花ちゃんだった。


「私の特殊能力について …………」

「えっ …………?」


 凛花ちゃんが能力者?


 この世界の人類は必ずしも能力を使える訳ではない。今日遭遇した強姦魔達も普通の人間だった。そう、能力の種は必ず与えられているけど、発芽するのは人類の半分にも満たない。


 大抵は凡人のまま一生を終える。


 つまり、能力者は選ばれし者とでも言える。


 能力にはヤバイ能力とそうでない能力に別れて、俺の能力は後者だ。しかし、ヤバイ能力とは犯罪に使えて、一瞬で殺傷する能力。例に言うと黒王子の能力だ。


 いずれかの三択しかない訳で、大人しい凛花ちゃんが能力持ちと知って、ヤバイ能力だったらどうしよう? と、俺の心臓の動きが激しくなって困惑した。





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