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3王子の能力

 

 副部長は青王子だった。へなへなしていた副部長()とは全くの別人に見える。

 頼りない態度は演技だったのか? それにしても俺が女体化する前からそんな感じだっから、演技とも言いきれない。

 

 それともアレか?


 俺が美少女になって、凛花ちゃんが入部して来て急に部が華やかになったからカッコつけたくなったのか?

 厨二では良くある症状なんだけと、女の前でカッコつけたがる病気。あるある、絶対それだ!


 とにかく副部長が青王子なら安心した。


「王子ぃ? てめえは竜神高の王子か?」


 んっ? リーダー格が気になる事を言った。竜神高のって他の高校にも、クイーンや王子様がいるってこと?

 うーん この地区なら玄武高校と鳳凰高校いや、白虎高校かな? ちょっときになるけど、今はそれどころじゃないな!


「そうですね。では、こちらも質問します。貴方は誰の指示を受けましたか?」

「はっ、誰の指示でもねぇよ ……」


 リーダー格の男は青王子を計画しつつ、チャックを閉めた。


「それにしては用意周到で動くのが早い」


 青王子は冷静に分析する。


「知らねえって言ってんだろっ!? とにかく俺はなぁ王子様だとかクセェ色男が大嫌いなんだ!」


 ブ男のひがみだな ……。


大杉(おおすぎ)っピータっ青王子を殺せ(ヤレ)っ!」

「分かりやしたっ松個の兄貴っ!」


 残りの手下が二人が青王子の前に立ち塞がる。あれだけの力を見たら戦意を消失するものだけど?


「そうか、腕一本じゃタダでは済まんぞ?」


 ヒュンヒュン!


 青王子の手のひらから、ウオーターカッターが高速回転する。


「………… 」


 青い顔で大杉とピータは顔を見合わせる。そして一目散に逃げ出した。

 やっぱり口だけか。


「ちょっとアンタ達っ逃げんじゃないよっ!!」


 何故かオネエ口調で松個が手下を呼び止めるが、制止を振り切り出口を目指す。すると出口に二人の人影が現れた。


「逃すかよっ強姦魔!」


 ボッ!


 男の手の平から炎が生まれた。


 男は180センチくらいの長身で、金色長髪の赤いスーツを着たイケメンで知った顔だ。

 そう彼は俺が良く知る赤王子だ。

 ちょっとチャラいイメージだったけど、今の彼は怒りに満ち溢れていて、頼もしいけど今の彼はちょっと怖い。


「どっ退けっ!」


 褐色ヒゲの外国人のピータがもう一人の背の低い方に手を払って言った。


「あっ! 背が低くて弱そうだから僕に言ったんだ?」


 背が低くて童顔の彼は黄色いスーツを着ていた。あっ彼は黄王子だっ言われなくてもわかるね ……はは。


「そうさ、死にたくなかったらそこを退けなさ――い」


 ピータは懐からナイフを取り出した。


「危ないよ刃物なんか出しちゃお兄さん」

「なによっ早くお退きっえ!?」


 ピータはオネエ口調で言った瞬間手にしたナイフが宙に浮いて、ストンと落ちて右足に刺さった。


「ワ――――オ!?」


 奇声をあげたピータは右足を押さえケンケンした。すると、ピータの体が宙に浮いて天井まで急上昇した。


「なっなによっ? はっ離しなさいよっ!?」

「うんっ離すね!」


 ズガンッバキィッ!!


「ギャッ!!」


 黄王子はニカッと笑うと宙に浮いたピータを天井に激突させ、朽ちた壁を突き破って遠くまで吹っ飛ばした。


「へへっ飛んで行ったけどしーらないっ!」

「やるねぇ黄王子」


 赤王子が黄王子の頭をポンポンと軽く叩いて褒めた。


「なっ!? チビっ今、ピータになにをしたっ?」

「えっサイコキネシスだよ?」

「はあ〜? SF映画じゃないんだぞっふざけんなっ!」

「ふざけてんのはてめぇだろうが? よって集って女の子イジメやがって、テメェらは男じゃねえ!」


 赤王子は本気で怒っていた。チャラい赤王子に敬遠してたけど、間違いだと気付いた。

 彼は弱い者に優しい熱血漢なんだと見直したよ。


「とにかくどきなさいよっ!」

「ヤダね、喰らえ悪党っ燃えろ俺の魂っバーニングハート!!」


 ボッ!


「ぎゃっ!? アチチッ!!」


 大杉の体に紅蓮の炎が包んだ。慌てふためて駆けずり回る大杉の体が宙に浮いた。


「黄王子っ消化してやれ」

「オッケー♡」


 大杉の宙に浮いた身体は天井にまで届く。


「ちょっと!! ヒッ!?」


 大杉の体は天井の穴を抜けてどこかに飛んで行った。しばらくして、ドボンと川に落ちる音が聞こえた。

 良かったね大火傷しなくて、その後は知らないけど ……。


「楽勝だな。後は、青王子っ一匹残ってっから頼んだぞ!」


 炎の能力者だった赤王子が言った。


「分かりました。では黄王子さん、済まないが、川から水を運んでくれませんか?」


 青王子は眼鏡の中心に指を当てながら、松個に指差して言った。


「オッケーいっぱいだね?」


 しばらくして天井の穴から大量の川の水が通って、松個の上に落ちた。


 バシャ――――ッ!!


「ぐわぁっちょっとアンタッ!なにしやがるっ冷てえっ!?」

「もう一度聞く。指示したのは誰ですか?」

「はっ知らないわよっ! どわっ!?」


 降り注いだ川の水が松個の全身を包んだ。


「ぐぷぷぷ …………苦しいっぶあっ!」


 水が元に戻る。苦しげに床に手をつく松個に青王子が近づき見下ろした。


「言え。誰の指示だ?」

「しっ知らねぇよっがぼがぼ、 ぶくっ ……」


 再び松個の体を水が包み込む。松個は首筋を搔きむしりもがき苦しんでいる。

 本当、青王子はやることが徹底している。


 バシャッ!!


「オボあっ! ゴボウッ!」


 大量に飲んだ水を吐き出し松個は気を失ってしまった。


「やれやれ、主犯格の名を聞き出そうとしたのですが ……」

「青王子っ他の方法はなかったのか?」


 赤王子が凛花ちゃんの手当てをしながら言った。


「炎で尋問するよりは人道的だと思いますが?」


 そう言って青王子は眼鏡に手を当てて、俺の側にしゃがんでスーツを脱いで俺にかけてくれた。


 …………流石王子様は紳士だ。ありがとうね。


 俺は助けてくれた王子達に感謝しつつ、改めて己は無力だと実感した。でも、か弱い乙女になっても、自分は他の方法でこの女体化(能力)を役立てないかと模索(もさく)した。


 ◇ ◇ ◇


 しばらくしてからパトカー5台が到着して親父が顔を出した。


「よっ光輝、今日は散々だったな?」


 スーツの上に薄茶色のトレンチコートを羽織った親父が右手を上げて声をかけた。

 部下の屈強な体の刑事達が強姦魔を拘束した。


「光輝ちゃん、あの可愛い親父()知り合い?」


 赤王子が馴れ馴れしく言ってきたけど許すよ。助けてくれたし、良い人だと分かったからね。

 

「アレは俺の親父だ ……」


 俺は下を向いて指差して言った。あー恥ずかしい。


「マジでっ!?」

「僕よりちっせえ!」


 流石の赤王子と黄王子が驚きの声を上げた。そりゃ驚きますよ。可憐な幼女が俺の父親なんてさ。

 アレでも中身はおっさんなんだよ。嫌になっちゃうよ。


「大丈夫?」


 親父は凛花にかけ寄り聞いた。


「………… はい ………… 大丈夫です」

「でも、一応病院に行く?」


 しかし、凛花は首を横に振った。


「そっか、なら、光輝っ凛花ちゃんを自宅まで連れて行きなさい」

「えっ俺が?」

「男だろっ? あっゴメン違うかっ?」

「………… 」


 むうっそう言う冗談ここで使うな!


「分かったよ。じゃっ帰ろうか凛花ちゃん」

「あ、 ……うん」


 凛花ちゃんは嫌がるかと思ったけど、涙を拭いてニッコリ笑って返事した。

 本当、凛花ちゃんは無愛想じゃなく口下手で優しい子なんだと俺は実感した。


「僕達も今日はついて行って良いかい?」


 青王子いや、副部長が聞いた。もちろん俺は狙われているから了承したよ。

 凛花ちゃんのお家は、あ――ここどこだ? そうだ。強姦魔に連れ去られたんだっけなぁ。

 じゃあ、歩くのは無理か ……。


 結局パトカーに乗せられ凛花ちゃんのお家まで送ってもらった。感謝します。


 凛花ちゃんを降ろすと俺は車内で手を振るも、彼女は未練がましく立ち止まって俺を見つめていた。

 すると察した親父がヒジでわき腹を突いた。


「ちょっと親父っ!?」

「今日は凛花ちゃんのお家でお泊りしてやれよ光輝」

「マジかっ親父っでもっ凛花ちゃんから了承を得ないと?」


 クイクイ……


 凛花ちゃんは俺のブレザーのすそを引っ張る。


「えっ凛花ちゃん良いの泊って?」

「 …………うん。私一人暮しだから …………」


 そう言って凛花ちゃんはコクコクとうなずく。


「失礼だけど、パパとママは?」

「 ………… 幼い頃、捨てられた …………」

「…………そっか凛花ちゃん …………」


 重い。余りにも重い凛花ちゃんの家庭の事情の片鱗を知って、俺は思わず彼女を抱きしめた。

 無口な凛花ちゃんの原因がなんとなく分かった気がする。


「お泊まりして光輝ちゃん …………」

「うんうんっ分かった。お泊まりするよ凛花ちゃん」


 涙ぐんだ俺は凛花ちゃんをギュッと強くだきした。


 今日の夜は楽しく過ごそう。

 

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