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クイーンと謁見

 

 クイーンを警護する5王子のリーダー ( 多分 ) の白王子はとにかく謎が多い。というか、俺が何気に通っていたここ竜神高校も謎が多いと思う。


 そもそも竜神高校には校則の範囲を超えた独自のルールがあって、その中心に位置するクイーンの存在が何故許されるのか不可解なんだ。

 まあ、外の世界も能力者だらけで、中々高校一つを取り締まる事が出来ないのかも知れないな?


 新咲が言っていたクイーンになれば、なにしても許される学園内のみ通じる特権。本当になにしても良いのなら、殺人を犯し犯行を知られても学園内だったら許されるのか?


 それが本当なのかクイーンになって試してみれば分かるんだけど、人を殺すなんて真っ平ゴメンだ。

 ま、なにしても良いってのは分かりやすく表現しただけで、俺は現実には学園のルールを変える権限があると見ている。


 その点はじっくりとここにいる白王子に聞いてやる。コイツは俺の大事なファーストキスを奪ったのだから ……。


「お前いつからこの学園にいる?」

「さあ? いつだったっけかなぁ? でもさ、そんな事どうでも良くない?」

「誤魔化すなっどうでも良い訳ないだろっ? 親父は竜神高校の卒業生で当時お前を見たと言っていたぞ!」


「ワオ!」


 誤魔化すなっ、白王子は大袈裟に両腕を上げておどけて見せた。


「その話をもっと詳しく教えてくれませんかマイハニー?」


 チッ一々くどい言い回しで誤魔化す感じだな? なあ白王子。ますますあやしいぞ!


「親父は確かに白王子と会ったことがあると言っていた。しかし、白王子は美しい女性だったと語っていた」

「………… 」

「こらっ何故黙る? ますます怪しいなっ!」

「ホワイ? マイハニーの親父様が当時見た白王子が女の子なら別人だね」


 白王子はそう言って胸をはだけせて鍛え上げた大胸筋を見せたけど、見せろとは言ってない。確かに正真正銘の男の身体だった。


「ぐっ、確かにそうだけど ……この世界は特殊能力者で溢れている。女体化した俺もだが、アンタもそうなんじゃないのか?」

「違いま――す」

「嘘言うなっ本当の事言え白王子っ!?」

「ワタシ、シニホンゴワカリマセ――ン?」

「チッ、都合の悪い時だけ知らないフリするなっ!」

「………… ワガママな子猫ちゃんだ。仕方ない合わせてやるよ我らのご主人様に」

「ちょっき、きゃっ! ちょっとやめろっ白王子っ!?」


 俺は白王子にお姫様抱っこされて、どこかに連れて行かれた。森林を抜けると3階建ての洋館が見えた。結構大きくて、旧校舎くらいの大きさだ。

 手入れされた中庭も立派でまるで西洋諸国に行った気分だ。


「なあ、そろそろ降ろしてくれないか?」

「オーケーハニーん――んっ」

「コラッキスしようとすんなっ!」


 俺は白王子の顔を押しのけ立ち上がった。

 しばらく歩いてから洋館のエントランスに入ると、数人のメイド達が出迎えた。


「クイーンはいるかい?」


 白王子はメイドに訪ねた。


「はいっクイーン様は応接間にお待ちしておりますが、」


 メイド達の中央に立つ20代後半くらいの 髪を上に束ねて黒ぶち眼鏡をかけたメイドさんが、鋭い目で俺を睨んだ。

 確かに格式高い屋敷に俺みたいな小娘はいちゃいけないんだ。


「あっこの子は客人だよメイド長」

「さようですか ……ですが、くれぐれも、クイーン様の前で粗相がないように、」


 メイド長は眼鏡を上下に動かしながら白王子に言いつつ、ジロリと俺をまだ睨んでいる。

 あちゃ――怖い女性は関わりたくないなぁ。


 俺が通されたのは二階にある客間だ。一階ではなく、二階なのはセキュリティーを込めての事らしい。

 一階はメイドに扮した警備員と昨日会った寡黙な黒王子が警備していた。


 その厳重な警備の規模から見てクイーンは学園内には止まらず、政府関係並みの影響力がある存在だと思った。

 今から俺はそんな彼女と謁見(えっけん)出来る訳だが。


 コンコン


 白王子は応接間の重厚なドアを叩いた。


「クイーン様、白王子です。例の少女を連れて参りました」


 んっ例の? て、ことは、最初から俺をクイーンに会わせるのは計画の内だったんだ?


「構いませんお入り下さい」


 応接間から気高い、だけど、少女のよう透き通った若い声が聞こえてきた。クイーンは年に一回生徒の中から選ばれるのは、本当みたいだ。


「失礼します」


 ガチャリ


 白王子が一言言って頭を下げると、メイド長が扉を開けてくれた。立派な長テーブルと椅子とシャンデリアと絵画が、俺の目に飛び込んできた。

 クイーンは応接間の左奥の中央に座っていた。その左には黄色のスーツを着た背の低い少年が笑顔で警護していて、反対側にはちょっとチャラい赤王子がいた。

 

 黄色い少年は多分黄王子(きおうじ)だと思う。アレ? 青王子はどこにいる? ちょっと興味あったから姿を見せなくて残念。青王子で5王子コンプリートだったのに ……まっいっか。

 .

「連れて来ましたクイーン様」


 白王子は胸に手を当て敬礼してからクイーンの前で、ひざまずいた。えっえ? 俺はもひざまずかないといけないのかな?

 どうして良いのかキョロキョロ周りを見渡すと、メイド長が眼鏡のつるを持って俺を睨んだ。


 怖っ! そんなに睨まんでも良いでしょっ分かったよ、ひざまずきますよっ!


 あっちょっとパンツが見えちゃう!


「面をあげ」

「ハハッ!」


 白王子は返事してスッと立ち上がった。俺も慌てて立ち上がって床についたひざを手で払ったら、メイド長が睨んだ。

 えっ? いつも綺麗に掃除してるし、汚い庶民の建物と一緒にするなと言いたいみたいだね ……失礼でした。

 

 ゴメンなさい。


「最近少女の体に変化した貴女が、光輝ですか?」

「はっはい。そうです!」

「ふふっとてもお綺麗よ」


 クイーンは俺に向かって微笑んだ。


 その仕草は落ち着いた大人そのもの。だけどその容姿は俺と一つ年上くらいの少女だった。


 ただ、そこはクイーンだから普通の見かけではなかった。先ず目に入ったのは水色のロングヘア。地球上には水色の髪の毛の人種はいないから、染めているのかな? にしても、違和感なく自然な感じだ。


 顔もお人形さんみたいに小さく整っていてかなりの美少女だ。とにかく見た目は完璧だ。あと、元、今もかな? 学生だからウチの制服を着ていた。まあ、同じではないんだけどね、彼女は金の刺しゅうをほどこした立派な制服だ。


「お座りなさい」

「あっはっはいっ! えっと ……」


 ガタッ!


 俺がどこに座ろうか迷っているとメイド長が、クイーン様が座る反対側の中央の椅子を引いたので俺は遠慮気味に座った。


「さて、貴女を招き入れたのは他でもないわたくしの切なる頼みでございます」

「は、はあ …………?」


 ガチャッ


 戸惑う俺のテーブルにメイドが紅茶を置いていった。でも今は緊張して、紅茶どころではないよ。


「三年生のわたくしは来年卒業でクイーンを引退いたします」

「は、はい ……」


 で、ですよねぇ。


「来年の4月に時期クイーンを決めるコンテストが行われます」

「はいっ知ってます」

「今ここに参加者の名簿がありますが、参加者に問題があります」


 そう言ってクイーンは頭を抱えた。


「参加者に問題?」

「はっきり申しますと、今現在参加者全員を調査したところ、クイーンの器ではないと判明しました。それに厄介な事は、参加者の一人新咲 麗奈(しんさきれな)は学園内で人気が高く時期クイーンと噂される人物です。しかし!」


 クイーン様は最後に苦虫を潰した表情で、強い口調で言った。


「ご存知の通り新咲 麗奈は私利私欲のために手段を選ばない悪女。家柄の事はあまり悪く言いたくはないのですが、麗奈さんの父親はある不動産業の社長で、のし上がるために随分と悪い手段を使ってきたみたいですね」

「新咲は親父の影響を悪く受けてると?」

「そうです。彼女はクイーンになって学園を支配するつもりです。すでにその準備に1月に行われる生徒会選挙に立候補しております。恐らく当選しますでしょう」


 竜神高校の生徒会選挙は一年生でも立候補出来る実力勝負の世界だ。

 あの新咲が生徒会長になったら学園の規則がめちゃくちゃにされる。更にその後にクイーンにまでなったら大変だ。


「今現在新咲(かのじょ)を止められる参加者はいません。ですが、希望は見つかりました」


 クイーンは静かに俺を見すえる。


 ちょっと待て! まさか?


「新咲 麗奈に対抗出来るのは、光輝様(あなた)しかおりません」


 ちょっと待っていきなり漫画の主人公みたいに言われても困るよ。俺は正直困惑した。


第1章の方向性が見えて来ました。ただ、主人公がクイーンを目指して終わりではないのでご安心下さい。

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