開花しなかった特殊能力
――この世界は異なる地球のお話――
俺中島光輝はごく普通の高校一年生。今日は授業中終始胸がドキドキしていた。
何故かって? それは新咲麗奈さんを放課後誰もいない教室に呼び出して告白するんだ。
だけど成功率は限りなく低い。
だって麗奈さんはクラス一いや、全学年一の美少女だからだ。
そんな彼女に平凡な俺が告白するなんて無謀にもほどがある。
それでも俺は1パーセントの可能性にかけたいから、彼女と放課後に会う約束を取り付けることに成功した。
◇ ◇ ◇
空が赤く染まった教室で一人待っていると、麗奈さんが来てくれた。
「ごめんね待たせたかしら?」
「いっいえ、そんな事ないですよ」
俺は1時間も待ったけど苦にもならなかったから嘘をついた。
それにしても黒髪ロングの麗奈さんは綺麗だ。麗奈さんは容姿端麗性格はいいし、成績スポーツ万能と非の打ち所がない完璧少女だ。
そんな彼女と俺は対等なはずがない。
「ふふっゴメンね。ギャラリーを集めるのに時間がかかったから……」
くすくすと笑みをこぼしながら麗奈さんが言った。
「どう言うこと?」
「まだ分からないの? 本当頭もよろしくないのね?」
雲行きが一瞬で怪しくなった。僕はここに居てはいけない。本能がそう告げた。
「麗奈様に告白する馬鹿はコイツか?」
静寂を破ったのは粗暴な男の声。ぞろぞろと現れたのは六人のヤンキー達だ。
一瞬なんのことか戸惑ったけど、笑みを絶やさない彼女を見て理解した。
フラれてごめんねなさいならまだ良い方で、僕はさらし者にされたんだ。
クラッ
めまいがする朝から続いていた胸の高まりは一層強く感じた。
「ふふっ始めから貴方が私に告白することなんて分かっていたことですわ」
「分かっていた?」
「まだ分からないの? 本当おバカさん。私の能力は人の心の声を聞ける能力」
「 !? 」
この世界全人類一人一人に一つだけ特殊能力が与えられている。様々な超常的な能力があって、麗奈さんは心を読む能力らしい。
ただ、未だに僕の能力は開花していない。
「へっへっ馬鹿だなぁお前みたいな平凡な男を麗奈様が受け入れると思ったか?」
粗暴なギャラリー達の笑い声は俺の耳には入っていなかった。
まだ返事は聞いてないけど結果は分かっているし、どうにもさっきから心臓の動きが激しくなり体が熱い。
「全くだ。未だに能力も開花してない劣等生が、んっどうしたっマジでヤバくないか?」
顔を真っ赤にした僕が急にうずくまったから、心配したヤンキー達は慌てた様子。ふっ悪ぶっていても以外といい奴らなのかも知れないな。
しばらくうずくまっていたら、パトカーのサイレンが聞こえた。そうか、誰かが俺のために呼んだんだな。
んっだったらこの場合は救急車だろ?
廊下が騒がしい。ズカズカと刑事達が教室に入って来た。ますますおかしい? 警官ではなく茶色のコートを羽織った刑事?
「中島光輝だな?」
刑事が手帳を見せてから聞いた。
俺は見上げ手帳を見るとこう書かれていた。
――特殊能力対策課――
単なる刑事じゃない。どういうこと?
「はい……」
体調の悪化のせいか、やけに声が甲高く聞こえた。
それになんだか下がスースーする。違和感を覚えた俺は下を見ると何故かスカートをはいて白い太ももが剥き出しになっていた。
このスカートはこの高校の制服だ。よく見るとブレザーが女子用に変わっていた?
そうか俺が気を失っている間にヤンキー達のいたずらで、女装させられたんだ。まったく手の込んだイタズラだ。
それにしても太ももがやけに色白で丸みを帯びて艶めかしい。スネ毛が一本もない。えっ待てよまさか、わざわざカミソリで剃ったのか?
「まっまさか親父と同じ能力?」
俺は親父の特殊能力を思い出してから、慌てて胸をまさぐった。
むにゅるっ
「ふあっ…………」
思わず声が出てしまった。俺の胸は特大肉まんみたいに肥大し柔らかかった。
俺に乳房がある、コレは夢か? しかし、感触がリアルだ。
「鏡を見ろ」
刑事さんに教室にある鏡の前に連れて行かれ自分の姿を見た。
ごくっ…………
俺は思わず息を呑んだ。
鏡に映った姿は、金髪に先端がツンとして真っ直ぐ伸びたツインテールの超絶美麗な少し気の強そうな少女が映っていた。
コレは夢か現実か? 確認のために頬に触れる。質感があり、鏡に映った少女は同じ動作をする。
これは俺自身だ。
間違いない俺は今理解した。
麗奈さんにハメられたのがキッカケとなって、俺の特殊能力が開花したんだ。
嬉しい誤算? いや、そんな訳ないだろ? コレは大問題だろ?
一瞬で性転換してしまったんだ。
そう。俺の能力とは美少女に性転換する能力。おまけに制服まで性転換する始末だ。
一体全体どうなってんだ?
◇ ◇ ◇
俺は調べを受けるために特殊能力対策課本部まで連行された。別に悪いことしてないのに学園内はそのことで大騒ぎだ。
終わった。
俺の学園生活。
「中に入れ」
まるで罪人を扱うように刑事は俺を部屋に招き入れた。
警察署の一室に通されると知った顔があった。
パイプ椅子に座る10歳くらいの金髪ロングヘアの美少女。その彼女が俺の顔を見てニカッと笑った。
「ようっエライことになったな光輝」
その少女はやけに馴れ馴れしく名前で呼んだ。それもそのはず彼女は肉親だ。
だけど決して妹ではない。ちなみに俺は一人っ子だ。
「そろそろだと思っていたが」
「…………俺の能力について知っていたのか親父?」
そう目の前にいる金髪の美少女は、10年前に能力によって性転換した正真正銘俺の親父だ。
当初幼かった俺は親父がほぼ同年代の女の子になったから、面食らい現実を受け入れるのに時間がかかった記憶がある。
ハゲ親父の息子が禿げるみたいに、遺伝は受け継がれる。能力も同じこと。
つまり俺はそう言う血筋らしい