第10話 僕は幼馴染の力を信じている
笹木美優。
僕より3日誕生日が速く、自分のことお姉ちゃんと言えという幼馴染。
僕の両親のこと、調伏師を目指した理由、成績――
初恋の相手以外のすべてを知っていると言っても過言ではない。
同性、異性からも基本的に好かれ、本人は否定するけど才色兼備な女の子だ。
僕と一緒に登校すれば、
「笹木、可愛いよな」
「神様って不公平だよね」
「颯太いいなぁ。笹木さんといつも一緒で」
常に彼女の周りは賑わい、美優の立ち振る舞いに一喜一憂する。
クラスでも人気者で、頼られ慕われる存在。
けど、傍目からはそう見えても女の子だ。
僕と回数にこそ差はあるかもしれないけど、悩んだり、もがき苦しんだりするんだなと思う。
美優は僕にとって特別な存在だ。
★☆☆☆★
家からほど近い24時間営業のファミレス。午後10時を回っていてもお客さんはちらほらと見受けられた。
いつ掃除をしているのかわからないが、清潔感があり、小さいころから両親に連れられ僕がよく利用しているお店。
ほたるはにおいに敏感なのか鼻をクンクンしたが、全席禁煙のため嫌な顔をすることはなかった。
必ず僕はパンケーキを注文する。季節によってトッピングがいちごになったり、マンゴーになったりする。
「お待たせしました」
僕とほたるの前にその品が置かれる。
目を輝かせ、左耳はピンと立つ。僕の方をチラ見して、ナイフとフォークを握りしめた神様は幸せそうだ。
それとは対照的な美優。
「こんな遅くに食べたら太っちゃうんだから」
彼女の前には湯気を上げるカフェラテがまだ量を減らすことなく待機していた。
思いつめたような顔で視線の先に居る日和さんの様子を伺っている。
「やっぱり御堂進は君たちの前に現れたね」
「気を失っていた調伏師の人の容体は?」
「命に別状はない。洗脳されている可能性があるから、隔離して検査しているけどね。対峙してみた感想は?」
「えっと、強かったです。瞳の色も変わってたし、ほたるの言うように悪に染まっていたというか、一撃一撃に躊躇することがない分、その……」
上手い言葉が出てこない。
「怪異と対峙する心構えでは無理かもしれない?」
「そんな感じです」
美優が沈黙しているので、僕が答える。
「こちらの対応ミスで申し訳なく思ってるけど、狙いが君たちなら、3人には悪に染まらずに御堂と同程度の力を有してもらう必要がある」
「あれはまだ力を持て余していた印象なの。場数を踏めばエリート調伏師でもまるで対応できなくなる」
「あら、奮起させようとしてるの? 随分と2人は仲良くなったみたいじゃない?」
ほたるの言葉を聞いて、日和さんはからかう様な視線を神様に向けた。
「……あなたもアホなの?」
その言葉に日和さんは口元を緩める。
例の怪異が次に出現するのは数日後になるという情報を教えてもらい、あとは僕の日頃の生活についての心配事、仕事の愚痴を聞かされた。
ほたるがウトウトし始めたのでお店を出る。
すれ違う人もおらず静かな住宅街の道をゆっくりと進む。
「なかなか思い通りにはいかないでしょ?」
前を歩く美優を見て、日和さんが小声で話しかけてくる。
ほたるは僕の背中で気持ちよさそうに寝息を立て始めていた。
一定の安心感は与えられているようでそのことには心底ほっとする。
「なにが?」
「またまたとぼけちゃって。力を使い果たしたのは意味があるくせに」
美優も日和さんもなぜか僕を落ちこぼれだと思っていない。
だから、こういうとき妙に勘がいいんだ。
「……少し背中を押したくらいじゃストッパーは外せなかった。ごめんなさい」
「逃がしたことを気に病むことはないよ。君たちは子供。頼るべきところは大人に頼っていいし任せていい。颯太君がやったその一押しは後で力になると思うから」
「ならいいんですけど……日和さんの思惑通りにも行ってないと思うけど」
「喧嘩するほど仲がいいって言うでしょ。遅かれ早かれ殻は破ってもらわないとね。もし出来ないなら、見込み違いってことだけど」
「おにぃちゃん……」
か細い声のほたるの寝言が聴こえてきた。




