幕間 僕の代わりに引き抜かれた盾役
私の名前は橘凛香。
土の神様と契約を交わした女子高生です。
攻撃能力もありますが、基本的には防御主体の神様なので、盾役を求めているチームを探していました。
そしたら、名が通っているチームから声を掛けていただいたので――
今日がデビューの日。
チームのお役にたてるように頑張ります。
と思ったのですが――
湖畔に月が映し出されている、人里離れた地域。
ここまでがこのチームのぎりぎり担当地域みたいです。
自分より一回りも大きいウルフの怪異と正面からの対峙。
両手にサーベル剣を持ち、斬るのに飢えているような呻き声を常に発している。
踏み込みが鋭く、それをプラスした振り下ろし主体の戦闘スタイルみたいですね。
初撃は砂を硬化した盾で受けきる。
勉強机くらいの大きさに固めてみました。
少し砂が舞ってしまったが、このくらいは許容範囲。
止められた反動で体勢も崩すことが出来ました。
いい仕事をしたと思います。グッジョブ、自分。
……
…………
………………
「あれ?」
攻撃タイミングが遅い。
まだですか?
チラリと振り返ると、おっかなびっくり身構えて、いまだ力溜めしているメンバーさんたちがいました。
「あのぅ、攻撃チャンスでしたよ。むしろ大チャンス」
このスキを逃すとは、ほんとに名のあるチーム?
「大チャンスなもんか! 体勢を崩すだけじゃなく、怪異の目を釘付けにしろ」
「はあっ!」
耳を疑う言葉が返ってきます。
目を釘付けにしてたじゃないですか。瞬間的にだけど……
この怪異、たしか調伏ランクCだったはずですね。
なら、初撃を止めただけで盾役の仕事は完了していると言ってもいいのですが、なんと言ったのでしょう。
第2撃のモーションに入られる。
仕方ないなあ。大サービス……
頭上でサーベルを完璧に受け止め、足元を砂で足止めして動きまで止めてあげた。
これ以上ないお膳立てですよ。さあどうぞ。
……
…………
………………
「あのっ、まだですか? 何をそんなに時間かけてるんですか?」
「怪異の目を釘付けにしろと言っただろ。それか完全に動きをとめろ!」
「止めてるじゃないですか! 動けませんよ」
「両手が動くだろ!」
「何言ってるんですか、さっきから! 盾役の役割は初撃を受け止めること。強攻撃を弱体化すること。基本的にその2つです。そもそもこの怪異はランクCです。名を上げているチームなら、この程度盾役の出番も回ってこないのが普通じゃないんですか?」
「神降ろし出来ない追放したやつはそこまでやっていたし、当たり前に出来ていた」
爆弾発言が飛び出しました!
私はさぞかし目を大きく見開いていることでしょう。
そんな馬鹿なことがありますか……
それがもし本当なら最上位チームの主戦力級の力を秘めていることになる。
しかも神降ろしなしで……
「盾役に求めすぎですよ、それ! 戦闘の9割を任せていたってことじゃないですか!」
「奴は底辺だ。誰にでも出来ることだろ」
「失礼を承知で……狂っています。考えも行動も他人任せすぎなところも全部。リーダーだけじゃなく、このチームの人全員」
3撃目を同じように止め、手足も拘束した。
ようやく、というか渋々リーダーとそれなりの攻撃力を有しているメンバーが攻撃し、怪異は消滅、輝石を残す。
「よくやった……」
「馬鹿ですか、アホですか、それともギャグですか!」
「リーダーの俺にその口の利き方は許さんぞ」
ほんとに馬鹿ですね、この人……
前の盾役の人、仕事しすぎ! あり得ないんですけど。
「最近まで盾役をしていた人の名は?」
「牧颯太です」
メンバーの人が答えてくれる。
「牧颯太君……あっ、私、このチーム抜けますね」
小さく手を上げ、当たり前のことを当たり前に申し出る。
「役に立てないと思ったのか。まだ最初だ。徐々になれるだろ。それに及第点の盾役だった」
及第点。お馬鹿なことを。
数少ない盾役フレンドが聴いたら腹を抱えて笑い出してしまうだろうな。
「いえ、ここまで低レベルのチームを見たのは初めてなので……仮配属されたチームのどこよりもこのチームが底辺です。間違いなく」
「なにぃ!」
理解してないのかな。連携もダメ、一人一人の役割分担もなされていない。
確かこのチーム、盾役の子ともう1人抜けたっていうエリートの子がいたな。
その2人でチームを押し上げて行ったんだな。
「余計なお世話ですけど、解体するか、役割分担を決めて弱点強化して行かないと、弱体化は止められませんよ。それじゃあ失礼します」
ぺこりと頭を下げ、呼び止められる前に駆けだした。
このチームでは役に立たなくてはじゃなくて、役に立てを強要させられてしまう。
これは逃げじゃない。
もっと必要としてくれるチームを選ばないと。




