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魔女警察とババア

作者: ちみそい

「ババァ!その彫り物はなんだ!」


「これはお土産ものじゃ…ヒヒ…魔女警察は怖いのぉ…」


「ちょっとその彫り物預かるぞ」


「ん?見てもええが今繊細な工程でな、ワシの手元から見てくれんか」


「なんだこれは…ぐちゃぐちゃにデタラメな彫り物じゃないか」


「ヒヒ…言ったじゃろう…酔狂な者が偶に買ってくれるのよ。魔法陣など彫りゃせんわ」


「…ふん、今度から気を付けろよ。」


「ヒヒヒ、魔女警察さんや」


「あ?なんだ?」


「これは確かにタダの彫り物じゃ。しかしお前さんがこうしてワシを追い詰めた時、道ゆく人はワシが魔女にみえるのじゃろうな」


「…」


「お前さん、お前さんの見方だけで物を決めつけてないか?そしてお前さんらが決めつけを引っ込めることができなかったせいで、"魔女になってしまった"人間がいるんじゃないか?」


「ちっ…」


「そもそも魔女が何をしたと言うんじゃ。せっかく国を守った英雄たちがなぜ捕らわれなければならん」


「それは個人があんな強力な力を―――」


「誰が振るったか?ただ私利を満たすために暴力を振るった魔女が、お前さんらが捕まえた魔女の中におったのか?」


「それでも沢山の人を―――」


「ヒヒヒ、車だって人混みでアクセルを踏み込めば数十人は殺せるぞ。じゃあなんで車を牢屋に入れん」


「…」


「それはな、魔女がお前さんらと違うからじゃ。違うから分からない。分からないから怖い。違うか?」


「ババア…てめえ捕まりたいのか?」


「ヒヒヒ…多少勉強して試験に通ったごときでピストルを腰に提げてるお前さんらのほうがワシは怖いがな…」


「………もういい!ババアお前が魔女じゃないのは分かった!わかったから!もう俺は行くぞ!」


「ヒェヒェヒェ…」


~~~


「先輩、お疲れ様です」


「おう、お疲れ」


「どうでした?何か怪しい人でもいましたか?」


「いや、変なババアがいただけ」


「えっ、捕まえなかったんですか?」


「別に怪しくは無かったからな」


「そこで点取りに行けないから先輩出世しないんじゃないですか?」


「…っせーな。お前はどうなんだよ」


「さあ?というか、僕がどうこうじゃなくて、出世組はみんなそうでしょう?魔女をでっち上げて、功績を讃えられて、地位を与えられた。違いますか?」


「………」


「まっ、そのババアも先輩がクソマジメに報告書に書いた以上、監視がつくし、少しでも不審ととれる行動をとったらすぐお縄ですよ」


「…」


「先輩は、どっちの味方をしたいんすか?」


「…わかんねえよ。わかりたくもねえ。やりたいことがあって、やるべきことがあってここに入ったはずなんだがな…」


「あはは、先輩のそういう所、嫌いじゃないすけどね」


「うっせえ。飯食いに行くぞ」


「あいー」


~~


「おい!テメエ何してやがった!」


「は、はい。後輩とメシに…」


「テメエが報告書に書いてたババア、街頭カメラの履歴を探ってたらこれだ!」


「こ、この買い物履歴は…」


「どう考えたって黒だろうが!魔法の素材ばかりだぞ!何をしてたんだ!所持物の取り調べはしたのか!」


「は、はい!ですが、長い時を経て魔法陣を刻印した物など――――」


「本当に無かったのか!?魔法の媒体となる呪物は肌身離さず身につけている物だぞ!」


「そんなのあのデタラメな彫り物しか―――――――」


『お前さん、お前さんの見方だけで物を決めつけてないか?』


「―――――ッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!」


「この素材からして大規模魔法を発動するのは分かってる!隊を組んで捜索しなければ―――」


「行ってきますッ!!!!!」


「あっ、おい待て!」


~~


「ヒヒ、よう判ったの。監視カメラは避けて移動したんじゃが」


「ゼェ…ハァ…お前と会ったあの公園から走り回って聞き込んだよ。まさか、ビルの屋上に居るとは思わなかったけどな…」


「ヒェヒェヒェ!ちっとはお前さんも柔らかい頭を身につけられたかえ?ヒントをもらってようやく、これが呪物だと分かったようじゃのう…これをグルっと回すと、ほれ。この角度だけ、この視点だけ。彫った跡が上下左右に繋がり、綺麗な魔法陣を描いとるじゃろう!」


「それを離せ!離さなければ撃つぞ!」


「おお怖い怖い。わかったよ。ワシも死にたくない、渡してやろう。ほれ投げるぞ」


「!?…っと。………なんで渡すんだ―――」


「グフフ。こっちが本物じゃ」


「なっ!?!?!?」


「単純じゃのう!頭が硬い硬い!ダミーを用意してないと思ってか!ほれ始まるぞ!」


「っ!!!…………………あれ?」


ヒュルルルルルルルルル…………

ドンッ!!!!!!!


「…これは…」


「綺麗じゃろう?魔法で編んだ花火じゃ。」


ドンッ!!!!!!!

ドンッ!!!!!!!

ドンッ!!!!!!!


「こんな複雑なことだってできるぞ。魔法ならではじゃのう!花火師は失業かの!?ヒヒヒヒ!!!」


ヒュルルルルルルルルルルルルルル~~~~~~…

ドカンッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「ヒヒ、でかかろう」


「…なんでリスクを追ってまでこんな事をした」


「言ったじゃろう。『見方』じゃよ。見方によって何者もその特性を変える。便利な車が殺人兵器になるように、ワシは、魔女という存在の、新しい見方を提案したにすぎんよ」


「…っ」


「ヒヒヒヒ、お前さんはスジがありそうじゃ。ワシに弟子入りでもするか?」


「…誰がするか。確かに魔女が悪い奴じゃない…かもしれない。でも魔女のせいで安心して眠れない人だって居る。その人達が安心して眠れるように、俺たちがいるんだ」


「ヒヒヒヒヒ、まあその答えでええじゃろ。盲信しすぎても何があるかわからんしの」


「…ババア、早くこの場を離れるべきだ。もうじき―――――」


「というか今じゃろな。もう精鋭の機動隊がきおったわい」


「!?」


「「動くな!!!!」」


「おまけにヘリもフル動員ときた。どうやらお前さんにも発信器がついとったようじゃのう!」


「んなっ…」


「まあ、こうなった以上ワシはどうやっても魔女だし死刑じゃの。花火だって催しにされるに違いないわい。まるで平成狸合戦ぽんぽこじゃ」


「そんな…」


「構えろ!」「おい!そこの!早くどけ!」


「ぐっ…ババア!」


「撃てーーーーーーーーーーッ!!!!!!」


「ババアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」


~~


「………ゲホッ、ゲホッ……ババア………そんな…」


「………あれは…?まさか…………!」


「対象…生きてます!軽傷すら無し!先程の体制から微動だにしません!」


「何ィ!?何者だアイツは!!!化物かぁ!?!?!?」


「ヒーーーーーーーーーーッヒッヒッヒッヒ!ワシは死なんよ!なんせ爆風吹き荒れる最前線でも死なんかったからのう!!!!!!」


「っ!?!?!?!?!?ババア!テメエはもしかして!」


「ヒッヒッヒッヒッヒ!!!!そうじゃ!!行方不明だったエルダーウィッチ最後の一人!いかなる暴力もその意味を成さない!!!あらゆる危険から人類を守り通した伝説の魔女、カオスレイダーワンとはワシのことじゃあ!!!!!!!!!!!ヒーーーーーーーーーーーッヒッヒッヒッヒッヒッヒ!!!!!」


「まぁ今の政府に石像はぶっ壊されたがの!!」


「反撃に気をつけろ…うおっ!?煙幕!?」


「反撃などするものかバカめが!争いは同じレベルでしか発生せんのじゃ!ワシとお前さんらにどれほどの差があると思うてか!ワシとやり合うなら、80年前、侵略に来たボケナス宇宙人共をもってこいや!あばよ!」


「煙が…晴れ…」


「対象、消失…レーダーにも反応は有りません……」


~~


「ババア…一体何処に……むっ?電話か?」


『あっ先輩!大変すよ!どこいるんすか!』


「ババアを最初にみた公園だが…どうした?」


『そっちが魔女の大捕物に躍起になってる間、手薄になった魔女留置所が襲撃をうけたんす!』


「なっ」


『僕は逃げましたけど。ケガしたくないし。それよりもヤバいっすよ』


「それよりもって…魔女が逃げたしたんじゃないのか!?それより大変なことってあるか!?」


『ありますよ。先輩に関わることですもん』


「は?」


『置き手紙があったんすよ。先輩に名指しで宛名が書いてました。「ワシは善い魔女じゃないがな」だそうです。上層部はカンカンで、アイツも魔女っつって先輩を捕まえようと今騒ぎまくってますよ』


「はぁ????」


『逃げたほうが良いっすよ。僕も電話するのがいっぱいいっぱい…あっ、やべ、もう切ります』


「おいチョット待て!お、い……切れた………」


「あのババアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」


「なんじゃ^^」


「どわあああああ!?!?!?ババアなんでここに!?」


「ヒヒ、お陰様で同胞は救い出せたからの、置き手紙だけなのもなんじゃし直接お前さんにお礼を言ってやろうとの」


「お礼だと?」


「お前さんが今日ワシを発見して、あのとき捕らえなかったけど報告だけしてくれたおかげで、タイミングよく同胞を全員救い出せたわい。できて4~5割だとおもっとったからの」


「ふ…ふ…ふ…………ふざけるなーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!」


「ヒーーーーーーーッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ!!!!!若人をからかうほど面白いもんはないのう!!!!で、お前さんどうするんじゃ」


「どうするって…」


「お前さんももはや魔女警察に追われる身。奴らはお前さんが魔女の味方だろうと見て疑わんだろう。というか今回の不始末全部お前さんにおっ被せる。そうじゃろ」


「グギギギギ」


「……さて、さっきの話はまだ有効じゃぞ」


「さっきの話?……あ」


「ヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!どうじゃ!?ワシに弟子入りせんか!?どう考えたって魔女警察なんぞゴミ組織に埋まっとる理由はないじゃろ!というかそれしかないじゃろ」


「お前、俺には妻も子もいるんだぞ!そんな道理が通るわけ」


「あるんじゃなこれが。だってワシらがもうお前さんの奥さんも子供も保護しとるもん」


「は?」


「お前さん自分が居た癖に、魔女警察に対する見通しが甘いのう。ワシの仲間があと10分遅ければ、お前さんの家族が、お前さんへの脅し材料になっとったぞ」


「!!!!!」


「さあ…どうする?今のお前さんの見方では、何をするのが正しいのか。何をすべきか。どう判断する?」


「クソが…テメエが置き手紙を置いておいてなぁ…」


「ん~?何のことだか分からんのう!」


「…チッ、分かった。入るよ!入ってやるよ!あーそうだ俺は魔女の手下だよ!クソッタレェェェエエ!!!」


「ヒッヒッヒ!!良い。そうと決まれば早い、ホレ」


「うおっ!いきなり何すんだよ」


「取ってやったんじゃ、発信機。早くせんとここに山程魔女マッポが駆けつけてくるぞお!ホレ掴まれ!」


「掴まれったってなんでババアの手を…どわあ!?浮いてる!?」


「ヒヒヒヒヒヒヒ!!!!飛ばすぞぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!」


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」


~~

~~

~~


「それで、先輩のほうはどうっすか?」


「あはは、まだ頭固いんっすねえ。素質は十分にあるのに…」


「まっ、僕としてもこの人選は間違ってなかったと思うすよ。この調子で、なんとか他にも協力者が作れないか探ってみます」


「じゃ、そっちも元気で。言わなくても元気か。あはは」


「またね、ばあちゃん」


~~


「ヒッヒッヒッヒッヒ!!!!そうじゃ!!行方不明だったエルダーウィッチ最後の一人!いかなる暴力もその意味を成さない!!!あらゆる危険から人類を守り通した伝説の魔女、カオスレイダーワンとはワシのことじゃあ!!!!!!!!!!!ヒーーーーーーーーーーーッヒッヒッヒッヒッヒッヒ!!!!!そしてェ、こっちが!」


「くっ…マジで言うのかババア………そうだ!伝説の魔女の弟子にして新世代の魔術師!魔女の処刑人にして救世主!!!全ての不遇を救い上げる者、レリーフコスモスとは俺のことだ!!!!!!!」


「イーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ!!!!!!!!ギャハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」


「ダセえ名乗り口上言わせときながら爆笑するなババアーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」

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