さみしいと 思っていたころが 懐かしい
前回のあらすじ
異世界生活アプリの疑似人格設定をしたら・・・頭痛がひどくて涙が出そうになった
いや、確かに一人っきりで寂しいとは思ったさ、それは認める。だけどもさぁ!こんなん誰が望んだよ!頭痛くなってきた。血圧上がったかな?
「あ~れ~?なんか暗いですねぇ。もっとハッピーに行きましょうよ。こんなにかわいい私が出てきたんですから。うれしいでしょう?ハッピーでしょう?もっと盛り上がっていきましょうよ~」
「・・・イラッ」
「ん?なんか聞こえましたけど~?イラッて声がしましたけど~?何でイライラしてるんですか~?泣いちゃいますよ私。泣いてもいいんですか?子供のように泣きわめいてやりますよ?いいんですか~?」
「やっべ、こいつ超ぶっ壊してやりたい」
「壊してもいいんですよ~?けど壊したらマスターはどうやってこのルナティックな感じの世界を生き抜いていくつもりですか?簡潔に30文字以内で述べてみてはいかがですか~?」
「ギ、ギギギギィィィィィィ」
もうヤダこいつ、なんか泣きたくなってきた。何が悲しくて自分のスマホにクソミソにバカにされなきゃならんのだ。
「なっさけ無いですねぇ。もっとこう、男らしいこと言えないんですか?このヘタレ野郎!」
「ヘタレって・・・ちなみに、男らしいことを言ったらどうする気だ?例えば『お前なんかに頼んねぇよ』とか」
「コンマ1秒で見捨てて別のご主人様を探しに行きます」
「ヘタレでいいや。絶対に言わねぇ」
そんなこと言われて言うやつの気が知れない。っていうか見捨てられたら1時間以内に死ぬ自信がある。言ってたまるかコンチクショウ。
「だ~か~ら~ヘタレだって言ってるんですよ。言ってみればいいじゃないですか、言えば何かが私の中で変わって見捨てないかもしれませんよ?」
「・・・嘘だろ?」
「嘘ですよ!当り前じゃないですか。何が悲しくてこんな人生90パーセント諦めてる人をマスター呼ばわりしなければならないんですか」
「あのさぁそこまで言う?」
「言いますよ!だって自分あの時自殺するつもりだったんでしょう?」
「・・・何で知ってる?」
こいつ・・・触ってほしくないところにずけずけと入り込んできやがる。
そうだ、俺はあのとき妹に13回忌に行けなくなったことと、別れを告げるために電話を取ったのだ。
死ぬ方法なんていくらでもある。それに、前も言ったが俺がいなくなっても会社や社会にとっては何の影響もないのだ。
妹が悲しむだけ。
しかし妹は俺と違い色々なことにドライなところがあり、俺を失ったとしてもなんだかんだでうまくやっていくだろう。ちゃんと仕事もしているし。
つまり、死んでもいい人間だったのだ俺は。
言ってて悲しいが事実だ。
それに、以前からその用意はしていたのだった。
昔、学んだことでカフェインの抽出方法がある。
あまり知られていないことだが純粋なカフェインは劇物だ。数グラムから十数グラムで人間一人を殺すことができる。
俺は自宅に致死量の5倍ほどのカフェインを所有していた。自分で使うためにだ。
まぁ、それを使うことなくこの世界に来たわけだからその努力も無駄になったわけなんだが。泣きたい。
「何でって、私はそういうアプリだからですよ」
「?どういうことだ、簡潔に説明プリーズ」
「そもそも、私が現れる条件があってそれは自分の人生や周りの環境などに深く絶望、もっと言うと死を選ぼうと本気で考えている人間にしか現れないんです」
「いや、その説明では納得いかない。俺が自殺の準備が完了したのは、4年ぐらい前の話だ。その条件で行くのであれば4年前に異世界転移アプリを発見していなければ説明がつかない」
「自殺の準備が完了しているのと、実行に移そうとしている。似ているようで実は全く異なります。アウトローな感じのゲームをやっていても、実行に移そうとするのはそんなに居ないでしょう?それと同じです」
確かにそうだな。準備をしていてもその準備が無駄になったほうがいい準備もあるもんな。
「ってことは、踏みとどまる一線を越えた人間にしかお前さんは現れないってことか?」
「うん、やっぱり頭がいいですね。正解です」
「?やっぱり?何でやっぱりなんだよ?出会ってからまだ1時間も経っていないのに何でそんなことわかるんだよ」
「アプリを起動した時に記憶を参照する機能が付いているんですよ。今までの人生どのような道筋で歩んできたかを確認し、こういうときに役立てるために」
「なにそれ怖い」
「まぁ異世界にスマホを持ち込むことができるのは極々一部だけですから、あまり有効な能力ではないんですけどね」
なんて言ったらいいんだろう。返答に困ることを言わんで欲しい。・・・ん?
「今ごく一部しか異世界にスマホを持ち込めないっつってたけど、どういうことだ?」
「転移先をランダム設定にした場合しか異世界転移時にスマホを持ち込めないんですよ。まぁ、所謂救済措置ってやつですかね」
「ほ~。んじゃほかの項目をランダム設定にした場合はどういう効果があるんだ?」
「まず、ステータスをランダム設定にした場合は『元の世界のステータスの引継ぎ』となります。これは特に意味があるものではないですね」
「絶対違うだろう。その場合このLUC:10000000000000000000はおかしい。こんなに高かったら元の世界で俺はもっと幸せだったはずだ」
そう、これだけ高ければ毎年4回買っている宝くじに高額当選していたりしていたはずだし、孤独感にさいなまれていたりはしないだろう。
「高すぎなんですよ。過ぎたるはなお及ばざるがごとしで、高すぎるために何でもかんでも引き寄せて結果的に不幸になるパターンですね」
「さっきから思ってたけども、お前は俺に対して何か恨みでもあんのか?」
「いえいえ滅相もないです。人間のクズだとは思ってますけど」
「よし、お前は俺の敵だ」
「まあまあ少し言いすぎました。ゴメンナサイ」
「反省してるんならいいけど」
「・・・チョロ」
「聞こえてんぞ」
「・・・ちっ」
「あ~も~話が前に進まない。とりあえずこの問題は後に回すとして、初期ジョブのランダム設定をした場合はどんな効果があるんだ?」
「それは・・・」
その効果を聞いた瞬間、俺は驚嘆の極みへ達していた
うん、会話文書くのは楽しい。