もう嫌だ! こんな仕事は 辞めてやる!
処女作です。
深夜2時草木も眠る丑三つ時、住宅街の一角を男が一人歩いていた。
その歩きはおぼつかない様子で、目はうつろ口は半開きで髪は鳥の巣のように荒れ放題になっており、見るからに「僕、疲れてます」という雰囲気を全身から発していた。
確かに男は疲れていた。飲食業界に入社して約十年、休みらしい休みを取った記憶はほとんどなく、その休みでさえも家から一歩も出ることもなく、一日の大半を寝て過ごすようなそんな生活リズムであった。
当然出会いもなく、友達もいない。金は持っていたが、使う機会が無いという結果論だけで知らずに貯まっていただけであった。
男は孤独であった。このまま一人で生き、一人で死んでゆくそんな漠然とした予感が男の中にはあった。
しかし、男には現状を変える気は無かった。
いや、その気力が無いといったほうが正確であろう。1日14時間の勤務、通勤時間を含めると1日18時間を仕事として費やしている男にとって、パートナーを見つけることはできるはずも無い難題でしかない。かといって近場の女性で妥協ができるほど男は人間が出来ているわけではなかった。
すべてにおいて妥協のできない性格
男にとってその性格は最大の長所であり、短所であった。
男の名は佐藤悟。年齢は32歳。独身。この物語はここから始まる。
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「ただいま~おかえりなさ~いっと。あ~しんど」
俺は家につくといつものように一人で帰宅の挨拶をした。
誰かが家にいてくれれば独りで挨拶をしなくてもいいんだが、生憎と俺には返してくれるパートナーがいない。・・・別にさびしくなんて無いんだからね!
・・・自分で言っててなんだが、キモッ
自らのあまりのキモさに全身に鳥肌が走るのを感じながら俺は荷物を置き、部屋着に着替える。あ~落ち着く。
「さ~てと、明日の準備でもしますかね」
俺には12年前に死んだ母がいる。ちょうど大学3年のときに母親が死んだ。過労だった。
その後、妹の大学入学でひと悶着あったんだが、今となってはいい思い出になっている。
明後日はその母親の13回忌があり、それに出席するために俺は休日と有給休暇あわせて5日間の休みをとっている。
そのために、ここ1ヶ月はほぼ休みを取っていなかったのだが、まぁそれもここでチャラにさせてもらうんだがな。
「しかし、長年一人でいると独り言が多くなっていかんな。早く何とかしないと」
そんなことをいいながら、俺はこみ上げる笑いを抑えきれなくなった。
出来るものならとっくにそうしている。出来ていないから今一人ぼっちなのだ。正確に言えば早く何とかしておけばよかっただ。
「ヘッ・・・とりあえず用意するのは、下着、着替え、あと喪服もいるな。あとは・・・」
そんなことをしていると、急にスマホが鳴り出す。たぶん妹からだろう。
非通知になっているから絶対にそうだ。あいつはいつも非通知でかけてくるからな。
曰く「兄さんを驚かせようと思って」らしいがこう毎回やられると驚かなくなる。あいつは勉強は出来るが、そういうところは馬鹿だ。
「はいはい、もしも~し」
「あ、悟君?俺だけど」
意地の悪さがにじみ出ている声が電話から流れてきた。
忘れてた、こいつも非通知でかけてくるんだった。声の主は俺のいる店のほか15店舗を統括しているエリアマネージャーだった。
「すいませんマネージャー、妹も非通知でかけてくるんでてっきりそっちかと思って」
「いーよいーよ。そんなことより明日さぁ別のエリアの店で欠員出ちゃってさぁ明日そっちに行ってもらいたいんだよね。店のほうはいいから」
「すいません、明日は実家に帰らなくてはならなくて、有給申請しているはずですけど・・・」
そう、このマネージャーは休日だろうと平気で出勤をさせる。
しかも、その分の代休はなく、さらにそこには本来いない人物として処理されてしまう。
一時期は3週間休みなしという酷い仕打ちもされたことがあった。しかし、半年前から有給申請を出していたのでいくらなんでもこれは覆せないだろう。
「あ、その有給申請通ってないよ」
?イマコノオトコナンテイッタ?オレノユウキュウシンセイガトオッテイナイ?
「いやーこんなこともあろうかとその申請、俺のところで止めておいたんだよね。先見の明があるのかな俺って」
「ちょちょちょちょっと待ってください。その申請は母親の13回忌法要があるから半年前から申請していたものですけど」
「そんなこといまさら言われてもどうしようも無いよね?今から申請してももうどうしようもないし。何で先にその事言わなかったの。言われていれば申請通したのに」
「言いましたよ!有給申請出した後、店舗の様子を見に来たときに何度も!先週だってあんたからその話を振ってきたんじゃないですか?忘れたんですか!」
「あーあの話、明日のことだったんだ。ゴメンゴメン。でもさっきも言ったけど、いまさらどうしようも無いことだから、あきらめてこれからメールする店舗にヘルプで行ってちょうだいね。この埋め合わせはちゃんとするからさ。じゃよろしく~」
「ま・・・」
ツーツーツー
俺は言われたことが信じられなかった。
すでに飛行機の予約は済んでいるし、出席の返事もしている。1ヶ月ほぼ休みなしで働いていたのも、すべてはこのためだった。
眩暈がする。部屋の中がゆがんで見える。眩暈だけではなく、俺は泣いているようだった。
泣いているんだが、無性に笑いがこみ上げてきた。俺は笑い声を抑えきれずついには大爆笑まで行ってしまった。
スマホが鳴り、メールが届いたようだったが見る気にはなれなかった。
今まで一所懸命に働いてきた結果がこれか。俺は何をやっていたんだ。
ひときしり笑った後、俺はスマホを手に取った。妹にあることを伝えるためだ。電話のアイコンとタップしようとした時に、あるアイコンが目につく。見たことが無いアイコンだった。
「こんなアプリ入れたっけ?」
そこに書かれていたのは“異世界転移アプリ”と書かれていた。思い出そうとしても思い出すことが出来ない。本当に俺が入れたアプリか?これは。
削除をしようと思ったが、不思議とそのアイコンから目が離せなくなり、知らないうちに俺はそのアイコンをタップしていた。
後書き・・・何を書けばいいのやら・・・
考えてみれば長文なんてレポートや論文しか書いていないのに何で書こうと思ったんだろう。
とりあえず誤字脱字だけはしないように書いています。
お目汚しにしかならないと思いますができれば読んでやってください。