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⑤ I Want To Talk About You


 田中に学食でタマキとのことを冷やかされて、ボクはこのままではよくないと思い始めていた。

 ボクはタマキを嫌っているわけではない。

 好きか嫌いかと訊かれたら、当然好きな方に決まっている。

 しかし、これまでの一週間程度の時間のうちに、どれだけタマキがそばにいたことか。

 同じ時間を過ごしてしまったことか。

 言い換えるとすれば、なつかれているのかもしれない。

 ボクの過去にはなかった状況だ。

 悪い気はしないけれど、このままではタマキにとってよくないことだと思う。

 周りのヤツらに勘違いされてしまうことだってありそうだ。

 そうなると結果的にはタマキにとってただの迷惑になるだろう。

 自分としてもそれは避けておきたい。

 過剰なのだとボクは感じていた。

 タマキとの距離は近すぎる。

 一緒の時間が長すぎる。

 まるで家族のような、兄妹きょうだいのような、従妹いとこのような……。

 そう考えてみて、ボクは気がついた。

 ボクには弟がいる。

 妹はいない。

 今ボクが感じているものは、ひょっとすると妹に対するような感覚なのかもしれない。


      *


 履修科目をひととおりチェックし終えたボクは、徐々に出席を減らす計画を実行に移すことにした。

 田中は心配してくれているようだから申し訳ないけれど。

 前期は半分の出席をキープできればいい。

 昨年度のように。

 出席を重視する科目はいくつもある。

 主に学科の必修科目だ。

 でも過半数の出席ができれば、単位はどうにか取れる。

 既に調べてあるように。

 予定以上にボクが病気やケガで長期の欠席をしなければ大丈夫だ。

 それに、ボクが休むことでタマキと距離がおける。

 そのためにもこの上なく最適な作戦のように思えた。

 タマキがボクの最寄り駅を知っていても、ボクの暮らしている部屋が何処いずこにあるのかまでは知らないはず。

 もし知っていたら恐怖だけど。

 もちろん、完封できるとは思っていない。

 ボクは透明人間ではないし。

 とはいえ、ボクはゼミを除いたどの科目でも教室の最前列の右隅にいることにしているから、敢えてその席を外しておけば見つかることが減るのではないか。

 最前列の右隅以外にも速やかに外に出られる場所はあるし、少し我慢して大勢おおぜいの中に紛れるのも有効だろう。

 偉大な先人による「案ずるより産むが易し」という言葉もあるのだ。


    *      *      *


 私と一緒に「西洋音楽史」を受講されているはずなのに、土井先輩はいらっしゃいませんでした。

 講堂の最前列、右隅の席は空いたまま。

 誰もいません。

 先生は「出席は重視しない」とおっしゃってくださいましたが……。


      *


 2回目の講義となる今日はバッハが採り上げられました。

 初めに聴いたのはパイプ・オルガンの曲で「トッカータとフーガ、ニ短調」でした。

 とても有名な曲です。

 冒頭のトッカータのメロディーを聴けば、きっとどなたも一度は耳にされたことがあると思うでしょう。

 短調の曲なので明るいイメージはもともとありませんが、私にはずいぶん悲しく聞こえていました。

 土井先輩と話をすると楽しく感じるのは何故だろう。

 私がこれまでに会ったことがないタイプの人なのは間違いない。

 もしかしたら過去の私に……でも、よく分からない。

 なんの先入観もなく自然な態度で私と接してくれた。

「男かと思った」なんて妙なことを言われてしまった。

 でも悪気は感じなかった。

 他の先輩方からうかがったような、暗い、不真面目、つきあいにくい、だから関わりたくない……そんな人だとは信じられない。

 私にとって土井先輩はユニークで面白い人。

 そして、家族以外で私を「タマキ」と呼んでくださった初めての人。


      *


 土井先輩と言葉を交わせる日は毎日ではなかったにしても、これほど時間が空いてしまうことはありませんでした。

 もしこのまま、言葉を交わすことがまったくなくなってしまうことになったら……。

 さびしさは否定できません。

 それとも。

 私は避けられているのかもしれない。

 何か取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない。

 先日、土井先輩と一緒に各駅停車に乗ったとき、私は別れ際に失態をしました。

 冗談だと思っているのは私だけで、先輩は本気だったとしたら。

 それで私への態度を変えてしまわれたとしたら。

 そう思ってしまうと、私はひどく悲しくなってしまいました。


      *


 その後、遠くから土井先輩をお見かけしたことが一度だけありました。

 ご挨拶するためにあれだけ一生懸命捜した土井先輩なのです。

 見間違えることはありません。

 でも先輩はすぐにいなくなってしまわれ、声をかけることはできませんでした。

 私にはそのときの先輩がなんだか元気をなくされているように見えました。

 体調を崩してしまわれたのかもしれません。

 あるいは、他の先輩方が言われていたような暗い部分が私に見えたということなのでしょうか……。

 ひとりでくよくよしていてもどうにもなりません。

 私は田中先輩と広瀬先輩にうかがってみようと思いました。

 私が土井先輩を捜していると知った多くの先輩方が、おふたりは土井先輩と仲がいいはずだから訊いてみるといい、そうおっしゃっていたからです。


      *


 運がいいことに、私はあまり苦労をすることなくおふたりを見つけることができました。

 田中先輩と広瀬先輩は、一緒に1号館の学食にいらっしゃいました。

 うしろの方の、ふたりがけのテーブル……そこは先日、土井先輩と私が座っていた席でした。

 私は既にお昼を食べ終えていたのですが、学食の自動販売機で飲み物を買おうと思っていたところでした。

 おふたりを見つけた私は、飲み物のことは忘れてしまいました。

 私はおふたりの席まで急ぎ、挨拶を終えると、すかさず切り出しました。


「田中先輩、広瀬先輩。このあと、少しお時間をとっていただけますか?」

「お! このあいだ挨拶してくれたマジメな新入り。えーっと……」

「大川さんだよ、田中」


 広瀬先輩は私の代わりにおっしゃってくださいました。


「そうそう、大川だ。スマン大川、まだ覚えられなくて」

「そんな、気にしないでください、田中先輩」

「大川さんはちゃんと田中を覚えてくれているのに、ひどい先輩だ」

「反論なしでオレの負けを認める。この前土井と話したときにはスラッと言えたんだが」

「あの、その土井先輩のことなのですが」


 よいタイミングかもしれないと思い、私は言ってみました。


「土井のことなら、オレたちより大川の方が詳しいかもしれんぞ」

「え?」


 田中先輩の言葉に、私は何故かどきっとしていました。


「なんでだい、田中」

「土井は大川とランチしてもらえる仲なんだ」

「そうなると、ぼくたちと差があるって言いたいの、田中は」

「広瀬はそう思わんか?」


田中先輩は広瀬先輩に疑問を感じられたようです。


「なら、確かめてみればいいと思うけど。大川さん」

「あ、はい。なんですか、広瀬先輩」


 広瀬先輩からひと息に名指しされて、私は焦ってしまいました。


「今度一緒にお昼食べようよ」

「はい、もちろんいいですけど、私と一緒でかまわないんですか?」

「田中、これで特に土井がどうこうというわけではないと分かった気がするんだけど」

「……もしかして、オレの負け?」

「あ、広瀬先輩がよろしければ、田中先輩もご一緒していただけませんか?」

「田中、大川さんは礼儀正しいだけでなく、こんなに気を遣ってくれる人なんだよ。田中がヘンに勘ぐっているだけだって、自分でもそう思うんじゃない?」

「負けた。そのとおりだな」

「田中先輩?」


 田中先輩がしょんぼりされてしまわれたので、私はつい声をかけてしまいました。

 私に応えてくださったのは広瀬先輩でした。


「大川さん、田中に気を遣ってくれてありがとう。今日はもうほとんど時間がないから、明日あらためてということでいい?」

「あ、はい。広瀬先輩、ありがとうございます」


 私は広瀬先輩に頭を下げました。

 すると、先ほどとは打って変わったご様子で田中先輩がおっしゃいました。


「じゃあ、ここと隣のそこを予約して、明日はくっつけるとするか」

「田中にしては、いい考えだね」


 なんのことだか分かりませんでしたので、私は訊いてみました。


「どうかされるんですか?」

「実はな、土井から教えてもらったんだよ。席を予約する方法を」

「予約ができるんですか?」


 私は驚いてしまいました。


「まあ落ち着け、大川。ここはひとまずオレに任せて、あとはまた明日だ」

「分かりました。よろしくお願いします、田中先輩」


 私は田中先輩にも頭を下げました。


「おお、安心しとけ」

「いつも偉そうだねえ、田中は」


 田中先輩は広瀬先輩の言葉が聞こえていらっしゃらないかのようにあらぬ方向へ顔を向けられると、やや間を置かれてからひとことおっしゃいました。


「なんか言ったか、広瀬?」


    *      *      *


 翌日のお昼休みになりました。

 田中先輩がおっしゃっていたように、私が着いたときにはふたりがけのテーブルがくっつけてありました。


「大川、来たか。そっちの席に座ってくれ」


 私は田中先輩に従いました。

 おふたりとは向かい合って座ることになるようです。


「あの、広瀬先輩は……」

「おお、広瀬にはA定食を持ってきてくれと頼んだ。で、オレはここで予約席のセッティングをしつつ、大川を待っていた」


 もなく広瀬先輩がふたつの定食を片手にひとつずつ、器用にお持ちになって戻ってこられました。


「大川さんは何か買ってこなくていいの?」


 広瀬先輩にそう訊かれた私は答えました。


「あ、今日は私、朝がけにパンと牛乳を買っておいたので」


 私が自分のバッグからコンビニエンス・ストアの袋を出そうとしたとき、先輩方それぞれの足元の床にバッグが置かれていることに気がつきました。


「田中先輩、広瀬先輩」

「なんだ、どうかしたか大川?」

「田中の顔をあまり見たくないんでしょ」

「広瀬、うるさい」

「すみません。その……バッグをこちらに渡してくださいませんか?」


 私は自分の隣にある椅子の上に置くことを提案しました。


「大川さん、そんなに気を遣ってくれなくても大丈夫だよ」


 広瀬先輩はそうおっしゃっいましたが、私は譲りませんでした。


「大川のバッグを置けばいいんだぞ」


 田中先輩の言葉も却下させていただきました。


「私はいつも膝の上に載せていますので、大丈夫ですから」


 私の口調は思いのほか強くなってしまったようです。

 そのせいではないと思いますが、おふたりは無言で私にバッグを渡してくださいました。


      *


 食後のお茶をいれてきて先輩方に勧めた私がひと息つくのを見計らってくださったのか、おふたりは話題を土井先輩のことへ移していかれました。

 田中先輩が口火を切ってくださいました。


「あの野郎、今年もだんだん来なくなるとはな。去年の今頃もそうだったよな?」

「そんな感じだったね」

「去年もそうだったんですか……」


 田中先輩と広瀬先輩の言葉を聞いたあと、私はがっかりしてしまいました。

 私は気遣っていただけたらしく、田中先輩がどこか焦ったように言葉をかけてくださいました。


「心配いらんと、オレは思うぞ。単なるサボりだ。土井は自分でも言ってたからな。今年度は真面目に出るのかってオレが訊いたとき、土井は『まさか』なんて言ったんだぞ」


 田中先輩のお話では、土井先輩は昨年度の講義を半分近く欠席されていたそうです。

 でも、その理由については分からないとのことでした。


「大川さんは、土井のこと気になってるの?」


 広瀬先輩の言葉に、私はドキッとしてしまいました。


「それは……土井先輩にジャズのCDを貸していただくことになっていて」


 私は嘘をついてしまいました。

 実はまだ土井先輩にこのお願いはできていません。

 単に私の希望にすぎないことを、既に決まっているかのように言ってしまったのです。


「土井って音楽きなのか? しかもジャズだって?」


 田中先輩が驚いた様子でおっしゃいました。


「はい。そううかがいましたけど、ご存知なかったですか?」


 私の脳裏には土井先輩との会話の場面が浮かんでいました。


    *      *      *


 土井先輩と私はB定食を食べていました。

 B定食は土井先輩のお薦めだったのです。

 食べ終えてお茶をいれてきた私は、先輩にひとつ渡してから元のイスに戻りました。

 ひとくち飲んでみると、サーバー・マシンにしてはおいしいお茶だと感じました。

 いつも先輩方がお茶を飲まれている理由が分かった気がしました。

 落ち着いてきた私は、湯飲みを手にされている土井先輩に訊いてみました。


「あの、土井先輩」

「なんだい、後輩」

「先日、各駅停車でうかがったときにはごまかされてしまいましたので」

「ごまかしたなんて、ひどい言われような気がするのですが」

「私の質問が悪かったのかもしれませんので、あらためておうかがいしますけど」

「なんでしょう」

「趣味はなんですか?」

「趣味って……お見合いみたいだな」

「またごまかそうとして」

「そんなことないよ」

「答えて、くださらないですか……」


 私はしょんぼりしてしまいました。

 私と話をするのがいやなのかもしれない。

 そんなことは思いたくないのに、


「分かった。答えるから、そんな表情はやめてくれ」


 私はくすっと笑ってしまいました。

 右手を軽く握って、口元に当てながら。

 ついさっきまではしょんぼりしていたのに、先輩のひとことでころっと変わってしまう。

 自分でも不思議なことでした。


「でしたら、答えをお願いします、先輩」


 私は土井先輩をまっすぐに見つめてみました。

 自分の表情はにこにこしたものになっている。

 意識してのことではありませんが、すぐに分かりました。


「ボクの場合、何はさておき音楽だな」

「音楽、ですか」

「そう、音楽。と言っても、聴くの専門だけどね」

「私も音楽鑑賞が趣味なんです」


 私は嬉しくて、こう言ってしまいました。


「気が合いますね、先輩」


 先輩は苦笑いをされていました。


「それで、どんな音楽を聴いていらっしゃるのですか?」


 ここは大事なところです。

 私は息を呑みつつ、先輩の答えを待ちました。


「まあ、けっこうなんでも聴くんだけど、そうだなあ、ジャズとクラシックが多いな」

「ジャズと、クラシック……」


 さすが土井先輩、と思う反面、私がいまだに聴いたことがないジャズ、「西洋音楽史」で入門したばかりのクラシック。

 これでは先輩ときちんとお話することは無理です。

 私がこれまでに聴いてきたのは主に日本のポップス……松任谷由実、オフコース、山下達郎、ピチカート・ファイヴ、など……海外のものだとビートルズ程度のものでした。


「なんかタマキがおとなしくなっちゃった。ボクは失言したかな」

「いいえ、そんなことはありません。ただ」

「ただ?」


 私は素直に言うことにしました。


「私、ジャズに興味はあるんですが、まだ一度もちゃんと聴いたことがなくて」

「おや、それは残念」

「はい。残念、です」

「聴かないと、人生における損失になるぞ」

「そうですよね……」


 私はうつむいてしまいました。


「そんなに深刻になることないだろ」

「でも……」


 私は黙り込んでしまいました。

 先輩と音楽について話ができるいい機会なのに、何も話すことがないのです。


「これから聴けばいいだけだよ」

「え?」


 先輩は私に言ってくださいました。

 ごく普通の言葉かもしれませんが、私にとっては救いになるひとことに感じられました。


「じゃあさ、クラシックはどう?」


 元気が戻りつつあった私に、二の矢が飛んできた気がしました。


「クラシックは聴いてます、と言うより、聴き始めたばかりで……古い方から聴き進めていくつもりなのですが」


 私の声は少しずつ小さくなってしまいました。

 ただ「西洋音楽史」の方針を口にしただけでしたから。

 土井先輩は私に気がついていらっしゃらないようですが、私には先輩が講堂の最前列の向かって右隅の席にいらっしゃるのがよく見えていました。

 先輩も「西洋音楽史」の方針について聞かれていたのですから、おそらく私の言葉がその引用だと分かっていらしたのではないかと思います。


「古い方って、どの辺から?」

「ヴィヴァルディからです」


 講義はまだ一度しかありませんでした。

 最初に採り上げられたのがヴィヴァルディだった。

 それだけのことです。


「レコード持ってるの?」

「レコード……アナログ盤はありません。みんなCDです。今はまだポップスばかりですけど、これからクラシックも増えていく予定です。それに、ジャズも……」


 私の声はまた次第に小さくなってしまいました。

 恥ずかしいやら、情けないやらで。


「タマキは幸せなヤツだよ」


 土井先輩から思いがけない言葉が返ってきました。


「どうしてですか? いつもの冗談ですよね」

「いや、そんなことないよ」

「だったら、どうして……」

「タマキはこれからたくさん、いい音楽にどんどん出会っていけるんだぞ。これが幸せではないなんて、言わせないからな」

「先輩……」


 すごく素敵な、とても嬉しい言葉を先輩はくださいました。

 私はハンカチを出さなくてはなりませんでした。


「あの、タマキさん?」

「なんですか、先輩」


 私の声はぐすぐすした鼻声になっていました。


「ボクはなんかやらかしたのだろうか」

「違います。逆です。私、とても嬉しいんです」

「そうは見えないぞ」

「だって……」

「らしくないな、タマキ」

「え」

「タマキにはにこにこしててほしいし、くすっとしてほしいんだけど」

「そんなこと言われたら、もっと泣いちゃいます」

「こんなとこで泣かれても困るな」

「そうですよね……分かりました」


 私は頑張って目を押さえました。

 嬉しくて涙が出るなんて、今まで一度もなかったかもしれません。


    *      *      *


「土井が音楽好きだなんて初めて聞いたぞ。な、広瀬」


 田中先輩の言葉で、私は我に返りました。


「そうだね、ぼくも聞いたことはなかったな」

「どうしてなんでしょうか?」

「訊かれても、オレには分からん。土井にとってオレは、そこまでの関係なんだろうさ」


 田中先輩の言葉で、広瀬先輩は笑い出してしまわれました。


「田中、面白いよ、その反応」

「どこがだよ? そう思わんか、広瀬だって」

「すねてんの?」

「広瀬」

「なんだい、田中」

「はっきり言っておく」


 田中先輩は強い口調でおっしゃいました。


「それはない!」


 広瀬先輩は笑っていらっしゃりながらも、田中先輩にお応えになられました。


「確かに趣味の話はしたことないよ。だけどそれは、お互いさまだよね」

「ん? そうだったか?」

「ぼくは田中の趣味、知らないよ。田中だってぼくの趣味なんか知らないよね」

「……そうなんのか。そのとおり、だな」

「ということで、土井ばっかり悪者にするのはかわいそう、という話でした」

「そうまとめんのか、広瀬。やけに土井を援護するじゃねえか」

「いないヤツを悪く言いたくないし、土井が悪いってことでもないよ。田中はそう思わないの?」

「うわ、またオレの負けか」


 田中先輩と広瀬先輩の会話は、おふたりの人柄が表れているのだと私は感じていました。

 これまで知らなかったのです。

 おふたりがこれほど楽しい人たちだとは。

 同席させていただいて、私は土井先輩とあわせて3人の先輩方が仲よくされていることの理由が分かる気がしました。


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