第7話 魔王の眷属
翌朝、シラタリはシゲルヤから調査の結果を聞いた。
「グレー判定者の身元の詳細がわかりました」
「で?」
「一人は、シャーミの姉セゲラタ、リーヤル支族長の3女にあたりますね。もとはといえば、シャーミの前の補佐役候補はこの子だったんですね。一人はセゲラタの侍女、一人はボディガードですね。3人ともに高等クラスに在籍しています」
「嫉妬というところかしら?」
「ですね」
「思いのほか底は浅いかもね?」
「だといいのですが」
シラタリは3人と面談を行い、シゲルヤにその報告をした。
「思ったより底が深かったわ」
「どういうことですか?」
「魔法陣で魔を呼び出したようなのよ」
「高等クラスで学ぶ初級魔法陣ですね」
レベルの高い魔導の者は通常、印を結ぶことにより魔を召喚する。魔法陣はその結ぶ印の代替えとなる。そのため、レベルの低い魔導の者が学びの過程で訓練として魔法陣を用いることが多いこtになる。印を結ぶことと魔法陣を比べると同レベルの魔導の者においては、魔法陣の方が付与効果が高いのでレベルの低い魔導の者が魔法陣を使用するときは、先生が同伴する規則となっていた。何故なら、召喚した魔をレベルの低い魔導の者が使役できないことがあるからである。使役できないとは、主従関係の契約を結べないということである。
「召喚した魔の行方がわからないそうよ」
「ありゃー」
「しかも、召喚した魔のレベルも種別もわからないときてるの」
「初級魔法陣ですから、そんなにレベルは高いとは思われませんが...」
「だといいんだけど...」
「召喚ですから、一応契約はしたんですよね」
「 シャーミを少し怖い目に合わせてってたのんだみたいなの」
「代償は?」
「セゲラタの髪の毛を13本らしいわ」
「あちゃー、その魔は契約の更新をするつもりはなく、この世界に居座るつもりですね。ところで、髪の毛は渡したんですか?」
「まだみたいよ。セゲラタは髪の毛を渡した段階で主従契約が結ばれると思っていたわ」
「完全に召喚した魔に騙されいますね」
「今夜、代償をもらいにくるっていってたらしいけど、その魔を捕まえるいい作戦はないかしら?」
「魔導の先生クラスがセゲラタに付きっ切りだと魔は現れないでしょうしね。思いつく作戦はあるんですけど...」
「なあに?」
「危険かもしれないしなー」
「とりあえず教えてくれる?」
作戦は、こうである。セゲラタの部屋に水姫と彗星と順を配置する。水姫は魔道の気をまだほとんど発していないから召喚した魔も油断しているはずである。彗星と順はもとより魔導の者ではない。召喚した魔が現れたら水姫とセゲラタで僅かな時間稼ぎをする。彗星と順は待機している魔導の先生たちをテレポートで連れてくる。それで御用となる。
「う~ん。そう都合よくいけばしめたものね。念のため魔に逃げられないように学園に結界を張っておくわ」
彗星らに僅かな事情と作戦を説明したその日の夜、セゲラタの部屋に4人が待ち構えているところに召喚した魔がやってきた。予想通りその魔はなんの警戒もしていなかった。セゲラタが「これが約束の髪の毛よ、でも...」と言って渡し渋っている。そして、彗星と順が跳ぼうとした瞬間であった。
「カーちゃん、ウタリ、”威圧”」
すると、カーちゃん、ウタリは巨大化し凄まじいまでの気を放っていた。セゲラタは失神し、彗星と順は金縛り状態となった。召喚した魔も怯えて震えるだけだった。水姫は、印を結び調伏にかかった。ところが、召喚した魔は青白い闇を発散し抵抗するのであった。
「魔王の眷属として人に従うわけにはいかぬ」
しかし、召喚した魔はカーちゃん、ウタリの”威圧”と水姫の印と最近会得した”魅眼”によってじょじょに弱っていった。”魅眼”は自分の意志をより強く相手に伝えることができる。
やがて、水姫は召喚した魔の頭頂に手を差し延べて「あなたはわたしの僕、名はシモンよ」と調伏したのであった。




