第4話 彗星の学び
彗星は、週に時空系一般を5時間、テレポート訓練を5時間、感知系一般を5時間、危機察知訓練を3時間の初等クラスの授業を受講していた。
そして、エネルギー放出系の基礎講座を2時間幼少クラスで受講している。
この講義だけだと毎日半日だけの受講で、半日が空くことになる。このことをツェリン先生に相談すると、
「空いた時間は自由に使っていいのよ。暇そうな先生を見つけて補修を受けてもいいし、友達を見つけて互いに教えあってもいいわ。この学園は自主性の有無が成長と進級に大きく関係するのよ」という返事が返ってきた。
「暇そうな先生を見つけるのは大変そうだし、友達を見つけるのが早道かな。でも、どうやってみつけようかな?それより先に自分の課題を整理してみようかな。そうだ。8か月しか留学期間がないんだから計画が先だ」
彗星はいろいろと考え込む質である。優柔不断ではないけれど、いざというとき以外は、決断に時間が必要だった。
彗星は初等クラスの授業を終えて、校庭の中のこじんまりとした公園のベンチでぼんやりとあれやこれやと思いを巡らしていた。すると、
「お兄ちゃん」と話しかけてくる10歳か11歳くらいの2人の子供がいた。この2人には見覚えがあった。初日のディスカッションで一緒だった子たちである。
一人はRUPの超能力族の子で一人はTHMの超能力族の子だった。そして2人ともテレポーターらしい。
「今日の時空系一般の授業でわからなかったことがあるの。教えてくれる?」
(いやいや、こっちが教えて欲しいくらいだよ)そう思った彗星であったが、
「僕もよくわからなかったから一緒に考えてみようか」
順や水姫もそうであるが、彗星は何故か、幼い子になつかれることが多いようである。
そのため、彗星の周りには幼い子たちが集まるようになった。
彗星も授業が終わると率先して公園に向かうようになり、授業の復習をするようになっていた。
大半は講義の復習であったが、たまにテレポート競争をするときもあった。テレポート能力は跳躍距離と跳躍地点認識が重要であるが、彗星の実技能力は幼い子らとどっこいどっこいであった。それでも幼い子らは彗星を軽蔑することはなかった。これは彗星の生まれつきの質のせいなのかもしれない。
幼少クラスの子らも集まってくるようになった。エネルギー放出系の基礎講座で知り合った子たちである。基礎講座とはいうものの実際は、講義の時間はほとんどなくてエネルギー放出のこつをつかむトレーニングがほとんどである。しかし、トレーニングにはマニュアルはなかった。先生のアドバイスを受けたり他の生徒のまねをしたり、イメージトレーニングをしたりと結局は天性の資質がものをいうようであった。早いものは1回の基礎講座を受けただけで初等クラスに進級するものもいる。
彗星は、2回の講座に参加したが、ようやくこつが掴めたような掴めなかったような状態である。
「彗星君。今の感じよ」と先生に言われることがあるが、
「どんな感じ?」といったところである。
しかし、先生が言うには、
「彗星君のエネルギー放出はシールドのようね。でも、焦らなくていいのよ。人によって成長のペースは違うからね」
(慰めてくれているのだろうか?それとも僕にとってこの能力はおまけみたいなものだから重要ではないのだろうか?)などと考えてしまう彗星であった。
ところが、幼少クラスの子らと公園に一緒にいるとき、一人の子を目掛けて1羽の鳥が急降下してきた。とっさではあったが、彗星は「危ない!」と思うと同時にその子の周りにシールドを張っていた。
鳥は消滅したが、何故鳥があの子を襲おうとしたのかわからない。しかも鳥の正体もわからない。このことは先生に報告することにした。
しかし、「どうやってシールドを張ったんだろう」と考え込む彗星もいた。




