ももたろうの出発
なんかもう好き勝手書いてる感じです。
面白いと思っていただけたら幸いです。
とある山奥の小さな村に、ももたろうという元気な少年がいました。少年は毎日のように森に出掛けては狐や兎と遊んだり、熊や鷲と特訓したりをしていました。
ある日、いつものように泥だらけになって家に帰ると、お父さんとお母さんが浮かない顔で話し合いをしていました。
「どうかしたの?」
聞いてみると、お父さんは答えます。
「このところ、町で鬼が悪さをしていて困ってるんだ」
二ヶ月ほど前からまだ子どもの鬼が出没し、町の人に乱暴しては逃げていくというのです。
「倒せば良いんじゃない?」
ももたろうの一言に、お父さんとお母さんは溜め息をつきました。ももたろうは毎日のように熊や鷲と特訓をしているのですから。
話を聞いたももたろうはならばならばと立ち上がり、
「僕が倒してくる!」
お父さんもお母さんも何も言いませんでした。
翌朝、鬼退治に出掛けようとするももたろうに、お母さんはきびだんごをたくさん持たせてくれました。
「鬼退治が終わったらまっすぐ帰ってくるようにね」
「はーい」
きびだんごを持ったももたろうは意気揚々と出掛けていきました。
鬼ヶ島へ行く途中、仲間のサルがやって来ました。
「どこ行くの?」
「鬼退治」
「ああ、最近町で騒いでるやつらだろ?」
「そうそいつら」
持っていたきびだんごをふたりで食べつつももたろうの歩く方向へサルも歩いていきます。必要はないと分かりつつ、一応ももたろうは尋ねました。
「鬼退治、行く?」
「行く行く」
サルは鬼退治のはなしを聞きつけて来たんだろうなとももたろうは思いました。
しばらく行くと、キジがぼ~っとこちらを見ています。
目が合いましたがぼ~っとこちらを見ているだけで何をするでもないようです。
根負けしたももたろうは言いました。
「きびだんご、食べる?」
キジは少しだけ表情を弛め、首を大きく縦に動かして返事をしました。
「鬼退治行くか?」
サルが聞きます。
「行く」
キジが答えます。
一行は並んで鬼ヶ島へと向かいました。
しばらく行くと、イヌが走ってきました。
「ひょっとして鬼を懲らしめに行くんですか?」
「そうだけど、どうかしたの?」
表情は無いものの、尻尾をぶんぶん振っているイヌにももたろうが尋ねます。
「あの鬼たち、許せませんよね!ボクもお供します!」
元気に言うイヌは尻尾をいっそう強く振り、目線をきびだんごに向けたまま言いました。
「食べる?」
ももたろうはとりあえず、きびだんごを差し出しました。
鬼ヶ島の近くに到着したももたろう一行は、とりあえず、キジに偵察に行かせました。
「何か金棒振ってる」
戻ってきたキジはそう報告しました。
鬼ヶ島の上を飛んだキジが言うには、大きな鬼が小さな鬼に金棒の振り方を教えていたとのことでした。側には大小の建物があり、見えたのは三人の小鬼と大きな鬼のみということです。
「僕が大鬼」
「俺が大鬼」
「俺は小鬼でも」
「みんな退治しましょう!」
4人は意を決して乗り込みました。
「勝負だ!」
順番をじゃんけんで決めた一行は誰が当たるか運任せで鬼たちに勝負を挑みました。
ひとりめ、ももたろう側はサルが出ました。
「俺が!」
手を挙げたのはやんちゃそうな小鬼でした。サルは小さく舌打ちしました。小さくしましたが、やんちゃな小鬼には聞こえていたようです。
「へんっ! 手加減してやらないからね!」
大きな態度でサルをバカにします。
「始め!」
大鬼の号令でやんちゃな小鬼とサルの対戦が始まりましたが、あっという間に終わりました。サルが一方的に攻め、やんちゃな小鬼をこてんぱんにやっつけてしまったのです。
「へんっ!本気で来い」
サルはふんぞり返って言いました。
「いじめかっこわるい」
友人であるももたろうも、サルにそれしか言えませんでした。
もちろんサルは気にしません。
ふたり目は、おとなしそうな小鬼が出てきました。ももたろう側はキジです。相変わらずぼ~っとしているキジは、心なしか眉尻が下がったように見えました。
「よ、よろしくお願いします」
おとなしそうな小鬼は礼儀正しく構えます。キジもそれに対してちゃんと構えました。
「始め!」
おとなしそうな小鬼はしっかり攻めました。でもキジは何となく攻め返します。
しばらく攻防が続きましたが、しびれを切らしたサルがキジの後頭部に石を投げつけ終わらせました。
勝負は一対一。
3人目は、何やらやたらと警戒心の強そうな小鬼でした。ももたろう側はイヌです。
「お腹すきました!きびだんごを下さい!」
イヌは待ちくたびれてお腹をすかせていました。
「無い」
しかしきびだんごはすでに食べ終わっていました。
「帰ります!」
背中を向けたイヌにサルが石を投げつけます。
「えー・・・っと」
倒れたイヌに何とも言えない気持ちになりながら、ももたろうは大鬼に向かいました。
「町で暴れる鬼を退治に来た!お前が親玉ならこのももたろうが退治してくれる!勝負しろ!」
「・・・お断りします」
「何で!?」
勢いこんだももたろうに大鬼は丁寧に断りをいれました。
「で、暴れる鬼って何のはなしですか?」
大鬼に尋ねられ、ももたろうは納得いかないながらも説明しました。
ももたろうの説明を聞き終えた大鬼は開口一番に謝ってきて、ももたろうたちを驚かせました。
そもそもこの鬼ヶ島は強くなりたい鬼たちの修練場で、特に悪さをたくらんでいるわけではないという。
「ボクによくご飯をくれていた木こりのおじさんはこんな顔をした鬼に一対一で負けました」
ほっぺたの辺りを引っ張りますが、顔がどう変わっているのか判りません。
はなしを戻すと、小鬼たちはいずれも一対一で戦いを挑み、結果、小鬼が勝つことで人が怪我をしたということでした。
「うーん」
困ったようなかおをしながら大鬼は、少し離れた場所に見える建物に入っていきました。
しばらく出てきませんでしたが、鬼たちからがっつり系の食べ物や飲み物が振る舞われ、ももたろうたちはおおいに楽しみました。
かなり待ったあと、大鬼は5人ほどの小鬼を連れて戻ってきました。
頭に大きなたんこぶを作り、歯を食い縛りながら俯く姿の鬼たちを見て、何があったのか全員が納得しました。
大鬼は上役と話し合い、しっかり反省させてきっちり謝罪に行くことを決めたらしく、ももたろうたちにもそう伝えてきました。
「良かったら君らもここで修行していきません?」
ももたろう、サル、キジ、イヌ。全員が即答し、当日から修行に励むこととなった。