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「レナートは今日は上の空でした。
剣の対戦で私が一本取れてしまったのでそのまま保健室に預けてきました」
再び顔が赤くなりそうな事は思い出さないようにして要点だけを淡々と告げる。
「その情報だとこちらと同じか判断が難しいですわね。
エフィムについては何か御存知かしら?」
「エフィムについてならヤナとカリナが詳しいと思います。
ジアーナとも仲良くしていたので2人なら何か知ってるかもしれません」
ゲームではヤナとカリナは光の中級持ちでヒロインのサポートキャラでもある。
生前に噂で2人をメインにしたスピンオフ作品がでるとか聞いたが、結局どうなったかはわからない。
「もうしばらく様子見でどう?」
「私も様子見に賛成します。今後もフロルの事も気にかけておきますね」
「そうね。アディちゃんはレナートの他にもその2人から話聞いてもらえるかしら?」
「わかりました。1ついいですか?
ヴァジム先輩とキリル先輩の契約精霊達はこの事をどうおもっているのでしょう?」
「それが全く分からないんだよ。
ハリーにオラージュから様子を聞いてもらおうとしたんだけど連絡取れないんだ。
ハリーもこんなことは初めてだって不思議がってるよ」
ハリーとオラージュは風の高位精霊だ。
風の精霊は風を使って言葉を交わすことが出来るので、風の精霊持ちは連絡役として活躍する。
「私の方は何とも言えませんわ」
風以外の精霊は連絡手段を持たないから他の人の精霊の様子を知ることはできない。
「それにしても新学期になって急にって言うのが気になるよね。
去年まで聖女候補に興なんてキリルは持ってないように見えたんだけどな」
「その点は同意致しますわ。
魔法にしても該当するのは現状では存在致しませんもの。
あるとすれば・・・」
マイヤ先輩の言葉に一瞬全員が顔を見合わせる。
「でも、その可能性はかなり低いのではないでしょうか?」
「そうだよね。様子見の他にもちょっと調べてみるよ」
「そうですわね。しばらくは定期的に情報交換という事で如何かしら?」
マイヤ先輩の言葉に全員が頷き今日は解散となった。
先程皆が思った魔法は禁呪の魔法。
大昔に使われたという人の心を壊す類の魔法だ。
今はないとある国で魔獣に対抗するために編み出した最悪の魔法。
人を魅了で虜にして傀儡化にするか狂戦士化にさせて死ぬまで戦わせた非道な魔法。
この3つの他にも公にはされていない魔法を使い、国民の大半を狂戦士にしてしまった非道な王は自分の息子に殺され、他の国の国王たちの前で禁呪が書かれた本を全て破棄したと伝えられている。
ゲームでも禁呪時代の話は出てきていたが、詳しい内容は攻略本にも書かれてはいなかった。
だから記憶持ちだからと言って禁呪の事を詳しく知っている人はいないはずだ。
そう思いながらも私の心に何かがひっかかった。