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最近レナートの様子がおかしい。
剣の授業でもボーッとしてて今日は私が1本とってしまった。
本人よりも私が驚いた。
「先生。レナートを保健室につれていきます」
対戦が終わると同時に教官に告げると教官も許可をくれたので、未だに上の空のレナートを引っ張って訓練場を後にした。
誰がどう見てもおかしい。
「レナート、今日の訓練はもう休んだ方がいい」
「いや、問題ない」
「そんなわけあるか!!」
訓練に戻ろうとするレナートを無理やり保健室に連行する。
「今日何度途中で集中力が切れたと思っている!!
体調の管理もできてないやつは騎士になる資格がないと以前私に言ったのは誰だ?
今はその言葉をそっくりお前に返してやる。
今日の試合は無効だ。よくなったらまた再戦だ。
全くレナートらしくもないぞ」
私の言葉にレナートは黙ったまま何も言わない。
おかしい。何時もなら反論してくるのに、具合がそれほど悪いのかと足を止める。
「大丈夫か?」
はじめてみるぼんやり顔のレナートに驚いて問うがレナートはだんまりを続ける。
熱でもあるのかとおでこに手をあてる。
ぼーっとしてたレナートの視線が徐々に私に向け、自分のおでこに私の手があるのに気づくと慌てだした。
「なっ、ななな、何を!?」
「何をではない!!熱はないようだがぼーっとしてレナートらしくもない。
何か悩みでもあるのか?」
おでこから手を外して問う私にレナートは驚いた顔をする。
「いや、大丈夫だ。
今日は頭がすっきりしなかっただけだ、問題ない」
そう言って懲りずに訓練所の方に戻ろうとするレナートを私は再び捕まえて保健室に連れて行く。
「今日は休め。また訓練中にぼーっとされても迷惑だ。
さっきも言ったが今日の試合は無効だ。あんな勝ち方しても嬉しくない!!」
そう告げて保険医にレナートを預け、部屋を出ようとするとレナートに腕を掴まれた。
「その、今日はごめん。ありがとう」
私はその言葉に固まる。
今迄にレナートからこんな言葉を言われたことがないからだ。
謝罪も礼もなく、偉そうな態度をとるのが何時ものレナートだ。
「明日は雪が降るかもしれないな」
「なっ!!」
思わず呟いてしまった私の言葉にレナートは不機嫌な顔になる。
「貴重な経験をした。どういたしまして。
体調戻ったら、次こそ勝ってやるから覚悟しろ」
「返り討ちにしてやる」
私の言葉にやっと普段通りの受け答えになったレナートを見て私は保健室を出た。
レナートからの思わぬ言葉が嬉しくてその後の訓練でもにやけてしまう顔を隠すのが大変だった。