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気分的には数時間流れた気分だが、実際には数分しか経っていないだろう。
それなのに私はあちこちに傷を負い、ボロボロなのに対して相手は全くの無傷だ。
しかもガブリイルは立ったままでリアンしか動いてないのにかかわらず、当たらない。
こちらはティムにもスノウにも散々手伝ってもらっているのにだ。
本当に嫌になる。
「いい勝負ができるかと思ったのにあたりもしないねぇ」
剣も全て躱され魔法はあたることもできず、本当に人間の皮をかぶった魔獣じゃないのかと言いたい。
それでも彼等に負けたくはないから、態勢を整えて再度攻撃態勢に入った時、ふとリアンが視線を遠くに向ける。
「妨害用に出した魔獣がやられたようだ」
「魔獣を出した・・?」
リアンの言葉に私は驚きを隠せない。
<精霊って魔獣を呼び出せるものなの?>
精霊が魔獣を自由に呼び出せるのなら何故精霊達は魔獣を倒すのに協力的なのかという事になる。
<否。普通の精霊には不可能だ。
だが、彼奴なら不可能ではない。彼奴は精霊の中でも異端の存在だった>
その辺の情報を詳しく聞きたいが、今はゆっくり聞いている暇はない。
どう切り抜けるか考えないとと思った時、不意にポニーテルにしている髪の毛を思いっきり引っ張られた。
「なっ」
「俺が視線動かしたからって精霊とお話とは随分余裕だねぇ。
妨害を倒したと言ってもここまで来れる奴はいないんだ。
無駄なあがきはやめておとなしく観念しなよ」
さっきまで視線を遠くに向けてたのに何時の間に背後に来たのか全く気付かなかった。
「放せ!!」
「嫌だね。アデリーナは日本人形風な髪型が似合ってたのに何で結わくの?」
「ここは現実よ?あんな髪型で戦闘したら邪魔で仕方ないわ」
そう言いながら掴まれた髪をリアンの手から強引に抜く。
かなり痛かったが、掴まれてるままよりましだ。
ゲーム内のアデリーナの髪型は日本人形みたく腰までの黒髪ストレートの前髪ぱっつんだった。
そしてさすがゲームと言うべきかそんな髪型なのに戦闘中でも全く乱れない。
だが、ここは死後の世界と言えど現実だ。
戦えば髪の毛は当然乱れるし、視界も邪魔だからポニーテールにしている。
生前の私はストレートの髪の毛に憧れていたのだ。
生前は天パで伸ばしてもくるくるしてしまうからアデリーナで憧れのストレートだった時には嬉しかった事の1つだ。
ただ、腰まで伸ばすのは手入れも大変だし重いので今は胸のあたりまでしか伸ばしていない。
女子力低いけどこれくらいはと髪の毛の手入れは毎日欠かさずにしている。
「リアン、妨害が突破されたのならそろそろ決着つける。
いつまでも遊んではいる訳にはいかない」
ガヴリイルの言葉に”はいはい”と返事をしながら一瞬で側に戻っていく。
せめて一撃でも当てるまで、私は退く訳にいかないと改めて魔力を高める。




